2005年10月15日

並ぶということ

 上海で生活をしていて、とにかくよく経験するのが「並ぶ」という行為であるように思います。もちろん、並ぶという行為の「流儀」は日中それぞれ違いがありますが、私は総じて上海人は他の中国人と比べて「並ぶ」という行為には慣れているように思います。
 たとえば病院の待合室。以前、当直開けに外来の待合室を歩いていたら、椅子にはもういろいろなものが置かれています。そうです、○○教授の診察を受けるために、朝まだ暗いうちから番号札を取るための行列をつくる「前哨戦」が行われているのです。
 そのため、地方からきた友達は良く私に「上海は、どこにいっても並ばなければならない」と愚痴をこぼしていましたが、上海流「並び方」に慣れなければ、かなりストレスを感じることでしょう。
 人が多いということは、必然的に見えないところでも競争が激しくなるわけで、どうしても相手をけん制しやすくなります。その結果、無駄な争いを避けるために、はじめから前の人とはぎっしりと詰めて並びます。相手にスキを見せてはならないということでしょうか。
 さらに私も行列に並ぶときは、前の人をよく観察します。前の人が「ドンくさい」と、それこそ割り込みや「モタモタ」が頻発して、自分の番にまでなかなかまわってこないからです。もちろん、自分が「モタモタ」しているときは、どことなく周りの人がおせっかいを焼いてくれる。これも上海で並んでいるときの一種の特徴ではないでしょうか。
 上海生活に慣れない日本人なら頭にくるかもしれませんが、私はそれはそれなりに利にかなっているようにも思うようになりました。このように並ぶことは一種の自己防衛的な行為といえるでしょうし、一種の文化だと思っています。そう思えば、べつに腹は立たないようになりました。もちろん、上海でも、秩序ある行列に割り込みをする行為は、軽蔑の対象になります。ご注意を!

 並ぶ、という行為に関して、特に飲食店における行列は面白いと思います。ご存知のように、中国では日本以上に様々な人種の人が生活しています。いろいろな地方からやってきた人もおり、上海は「ごった煮」状態となっています。そんななか、行列を作っている人を観察すれば、この行列に並ぶ価値があるのか、無いかの判断がある程度できます。しかし、この判断基準もいまひとつ意味を成さないときがあります。
 つまり、上海市民の間に「行列マニア」と呼ばれる人が少なくないからです。いわゆる「とにかく並んでみよう」という発想の人たちです。先日もあるお菓子屋さんに行列が出来ていたので、並んでいる人に聞いたら案の定
「とにかく並んでみる、みんなが並んでいるから」
のだそうで、一体どうして並んでいるのか本人も分かっていないケースが少なくないのです。これには笑ってしまいました。主に50代前後のおばさんに多い。でも、はたから見れば明らかに長い行列が出来ているわけで、好奇心が好奇心を生んで、行列がさらに長くなっていきます。とりあえず並んでみて買ってみようという発想でしょう。
 というわけで、上海で店を成功させるには、「行列」が出来なければいけません。「サクラ」を雇ってでもにぎやかな様子を演出できなければ、その店は残念ながら失敗してしまうでしょう。いくら一等地に店を持っていても、いくらその店の中身が良くても、客がいない店には人は入ってきません。上海ではとくに顕著だと思います。とにかく、市民の好奇心を奮い立たせること、そのもっとも基本的な現象が「行列」ということになるのかもしれません。
 さらに付け加えておくと、有名店ほど「秩序ある」行列となっています。なぜなら、常連さんが多いからです。そして、この「秩序ある」行列がその店の品を示しています。
posted by 藤田 康介 at 17:25| Comment(0) | ここは上海なり

並ぶということ

 上海で生活をしていて、とにかくよく経験するのが「並ぶ」という行為であるように思います。もちろん、並ぶという行為の「流儀」は日中それぞれ違いがありますが、私は総じて上海人は他の中国人と比べて「並ぶ」という行為には慣れているように思います。
 たとえば病院の待合室。以前、当直開けに外来の待合室を歩いていたら、椅子にはもういろいろなものが置かれています。そうです、○○教授の診察を受けるために、朝まだ暗いうちから番号札を取るための行列をつくる「前哨戦」が行われているのです。
 そのため、地方からきた友達は良く私に「上海は、どこにいっても並ばなければならない」と愚痴をこぼしていましたが、上海流「並び方」に慣れなければ、かなりストレスを感じることでしょう。
 人が多いということは、必然的に見えないところでも競争が激しくなるわけで、どうしても相手をけん制しやすくなります。その結果、無駄な争いを避けるために、はじめから前の人とはぎっしりと詰めて並びます。相手にスキを見せてはならないということでしょうか。
 さらに私も行列に並ぶときは、前の人をよく観察します。前の人が「ドンくさい」と、それこそ割り込みや「モタモタ」が頻発して、自分の番にまでなかなかまわってこないからです。もちろん、自分が「モタモタ」しているときは、どことなく周りの人がおせっかいを焼いてくれる。これも上海で並んでいるときの一種の特徴ではないでしょうか。
 上海生活に慣れない日本人なら頭にくるかもしれませんが、私はそれはそれなりに利にかなっているようにも思うようになりました。このように並ぶことは一種の自己防衛的な行為といえるでしょうし、一種の文化だと思っています。そう思えば、べつに腹は立たないようになりました。もちろん、上海でも、秩序ある行列に割り込みをする行為は、軽蔑の対象になります。ご注意を!

徐家匯にある行列の出来る「焼鶏」の店


 並ぶ、という行為に関して、特に飲食店における行列は面白いと思います。ご存知のように、中国では日本以上に様々な人種の人が生活しています。いろいろな地方からやってきた人もおり、上海は「ごった煮」状態となっています。そんななか、行列を作っている人を観察すれば、この行列に並ぶ価値があるのか、無いかの判断がある程度できます。しかし、この判断基準もいまひとつ意味を成さないときがあります。
 つまり、上海市民の間に「行列マニア」と呼ばれる人が少なくないからです。いわゆる「とにかく並んでみよう」という発想の人たちです。先日もあるお菓子屋さんに行列が出来ていたので、並んでいる人に聞いたら案の定
とにかく並んでみる、みんなが並んでいるから」
のだそうで、一体どうして並んでいるのか本人も分かっていないケースが少なくないのです。これには笑ってしまいました。主に50代前後のおばさんに多い。でも、はたから見れば明らかに長い行列が出来ているわけで、好奇心が好奇心を生んで、行列がさらに長くなっていきます。とりあえず並んでみて買ってみようという発想でしょう。
 というわけで、上海で店を成功させるには、「行列」が出来なければいけません。「サクラ」を雇ってでもにぎやかな様子を演出できなければ、その店は残念ながら失敗してしまうでしょう。いくら一等地に店を持っていても、いくらその店の中身が良くても、客がいない店には人は入ってきません。上海ではとくに顕著だと思います。とにかく、市民の好奇心を奮い立たせること、そのもっとも基本的な現象が「行列」ということになるのかもしれません。
 さらに付け加えておくと、有名店ほど「秩序ある」行列となっています。なぜなら、常連さんが多いからです。そして、この「秩序ある」行列がその店の品を示しています。
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類