2006年04月12日

中医学はかくあるべきか

今日一日はものすごい天気の移り変わりでした。昼間の大雨のあと夜になると、寒くなるぐらいです。 

 夜、寝ようと思ったら、ローカル病院で中医学の医者をしている彼女から電話。実は、いま彼女は私が貸してあげたある中医学の本を読んでいて、その本の内容についてのお話。こういう話題になると、時間が経つのがめちゃくちゃはやい。

 いま中国では中医学の発展のあり方について、国を挙げての討論がなされます。すなわち、中医学はこのまま西洋医学の発展に飲み込まれていくのか、それとも中医学として独自に発展していくのか、中医学と西洋医学が結合するのか、などなどです。中医学はその効果が世界的に注目されている一方で、実は本家本元では極めてきわどい瀬戸際に立たされています。どうしてそうなったのでしょうか?

 中国の伝統医学である中医学は、中国政府からの厚い保護もあり、今まで継承されてきました。しかし、西洋医学の発展と市場経済の導入にともない、この継承が今危うくなっています。現実問題として、中医学だけでは医師が十分に食べていけないために発生している人材の流失も深刻な問題です。製薬会社に入ってMRになる医師が多いことも、以前ここで紹介しました。そして、患者となる一般中国人の中医学への認識がだんだんと浅くなってきています。これはもっと大きな問題です。いま、多くの中国人で、「中医学=慢性病の治療」程度の認識しか持っていない患者が非常に増えています。経済発展に伴って、伝統に対する考え方が変わっていることを、直感的に感じることができます。




 でも、中国では中国ならではの中医学に対する役割があります。それは、コストが安いということです。単純に計算しても、抗生物質を1回処方するお金で、場合によっては2週間〜3週間の生薬が処方できるのです。ここからも、貧困の農村地帯を抱える中国にとって、中医学はなくてはならないものであることが分かります。しかも、治療方法が正しければ、一定の効果も期待できる。医師は儲からないけど、患者のためには中医学は十分に貢献できるのです。

 中国ではいま全力を挙げてエイズ治療など西洋医学ではお金が非常にかかる分野での中医学の活用を勧めています。肝炎の治療もそうです。マラリアの治療などにも実際に使われています。2003年春のSARSでも、中医学が活躍しました。そういったニュースは、日本ではあまり報道されていないですが、SARSに関しては、私自身も2003年秋に実際に広東省と香港を訪れて、第一線で活躍した医師に会うチャンスがあり、そのとき如何に中医学が活躍したか、いろいろお話を伺うことができました。非常に衝撃的でした。このあたりから、華南を中心に人々の中医学への認識が変わってきたのも確かです。

 中医学と西洋医学が将来結合して、中西医結合となる、という考え方も中国にあります。私は、この考えにはあまり納得できません。中医学と西洋医学はあくまでも別の理論であり、結合することはありえないと私は考えます。むしろ、併用というのがふさわしいでしょう。

 でも、こうやって国をあげて中医学の討論ができるという環境はすばらしい。日本の漢方はいまどうなっているのか?やっと漢方の寄附講座が全国の国公立大学の医学部にでき始めているようですが、早く伝統医学を5年でも6年でもみっりと専門に勉強できるような国公立大学が設立されてもいいのではないでしょうか。でも中国全国にある中医薬大学のようにはなかなかいきません。


 数年前の北京での国際学会である著名なアメリカ人医師に「日本の漢方(Kanpo)は世界でも有名だけど、どういう教育機関があるのか?」と聞かれたときに、「まだ漢方医師の資格すらない。(もちろん、鍼灸師などの資格はありますが、医師ではないです)」と答えるしか仕方がなかった。日本には中国に負けないぐらいのすばらしい伝統医学があるのに…。アメリカ人はどこかそういう伝統に憧れているような印象も受けました。きっとアメリカなど西洋でKanpoがもっと注目されたら変わるんだろうな、と秘かに期待しています。

 皮肉な話ですが、上海でも美容や化粧品などに「中医」ではなく「漢方」の漢字を使うと、何かおしゃれな「舶来」のイメージがあるようですよ。
posted by 藤田 康介 at 17:25| Comment(0) | 中医学・漢方

神舟6号

私は相変わらず夜は11時ごろには就寝して、朝に活動開始。こちらも仕事がたっぷりとたまっていて火の車状態。編集社からも中医関係で翻訳して出版する本の原稿の催促。こちらは共著なので、他の人の翻訳をひとつひとつチェックしなければならず、悪戦苦闘。
 今週末はすべてを休憩して温泉に行きたいので、がんばらないと。今朝は出勤前に原稿を2本書き上げる予定。

 というわけで、今日も4時に起床。まずはメールのレスポンスにはげむ。

 先週末に「神舟6号」の無料展覧会に行ってきましたので、さっそく特集用に記事を書きました。私はこういう本物が見られる展覧会は大好きです。「神舟6号」のときも長い行列を並んで見に行きました。

 上海科技館で今週末までやっていますので、ぜひ一度足を運ばれてみたらと思います。




 世紀公園から春のたより、第2弾。

 公園のリンゴの花が満開でした。きっとリンゴの実がたくさんできるんだ、と公園の管理人に話したら、長江以南ではリンゴの実はつきにくいとか。へー、そんなものなんだ、と感心してしまいました。
posted by 藤田 康介 at 17:25| Comment(0) | 雑草と雑想

編酋長が寝たころに起きだす私

 うちの編酋長のブログをみたら、「昨日もおとといも3時過ぎまで仕事していたなぁ。」と書かれていました。恐ろしく効率的に仕事をする編酋長ですらこの調子なのだから、こなされている仕事の量はきっとすごいのだろう、と想像に難くありません。

 私は相変わらず夜は11時ごろには就寝して、朝に活動開始。こちらも仕事がたっぷりとたまっていて火の車状態。編集社からも中医関係で翻訳して出版する本の原稿の催促。こちらは共著なので、他の人の翻訳をひとつひとつチェックしなければならず、悪戦苦闘。
 今週末はすべてを休憩して温泉に行きたいので、がんばらないと。今朝は出勤前に原稿を2本書き上げる予定。

 というわけで、今日も4時に起床。まずはメールのレスポンスにはげむ。

 先週末に「神舟6号」の無料展覧会に行ってきましたので、さっそく特集用に記事を書きました。私はこういう本物が見られる展覧会は大好きです。「神舟6号」のときも長い行列を並んで見に行きました。

 上海科技館で今週末までやっていますので、ぜひ一度足を運ばれてみたらと思います。




 世紀公園から春のたより、第2弾。

 公園のリンゴの花が満開でした。きっとリンゴの実がたくさんできるんだ、と公園の管理人に話したら、長江以南ではリンゴの実はつきにくいとか。へー、そんなものなんだ、と感心してしまいました。




リンゴの木
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類

中医学はかくあるべきか

 今日一日はものすごい天気の移り変わりでした。昼間の大雨のあと夜になると、寒くなるぐらいです。 

 夜、寝ようと思ったら、ローカル病院で中医学の医者をしている彼女から電話。実は、いま彼女は私が貸してあげたある中医学の本を読んでいて、その本の内容についてのお話。こういう話題になると、時間が経つのがめちゃくちゃはやい。

 いま中国では中医学の発展のあり方について、国を挙げての討論がなされます。すなわち、中医学はこのまま西洋医学の発展に飲み込まれていくのか、それとも中医学として独自に発展していくのか、中医学と西洋医学が結合するのか、などなどです。中医学はその効果が世界的に注目されている一方で、実は本家本元では極めてきわどい瀬戸際に立たされています。どうしてそうなったのでしょうか?

 中国の伝統医学である中医学は、中国政府からの厚い保護もあり、今まで継承されてきました。しかし、西洋医学の発展と市場経済の導入にともない、この継承が今危うくなっています。現実問題として、中医学だけでは医師が十分に食べていけないために発生している人材の流失も深刻な問題です。製薬会社に入ってMRになる医師が多いことも、以前ここで紹介しました。そして、患者となる一般中国人の中医学への認識がだんだんと浅くなってきています。これはもっと大きな問題です。いま、多くの中国人で、「中医学=慢性病の治療」程度の認識しか持っていない患者が非常に増えています。経済発展に伴って、伝統に対する考え方が変わっていることを、直感的に感じることができます。




 でも、中国では中国ならではの中医学に対する役割があります。それは、コストが安いということです。単純に計算しても、抗生物質を1回処方するお金で、場合によっては2週間〜3週間の生薬が処方できるのです。ここからも、貧困の農村地帯を抱える中国にとって、中医学はなくてはならないものであることが分かります。しかも、治療方法が正しければ、一定の効果も期待できる。医師は儲からないけど、患者のためには中医学は十分に貢献できるのです。

 中国ではいま全力を挙げてエイズ治療など西洋医学ではお金が非常にかかる分野での中医学の活用を勧めています。肝炎の治療もそうです。マラリアの治療などにも実際に使われています。2003年春のSARSでも、中医学が活躍しました。そういったニュースは、日本ではあまり報道されていないですが、SARSに関しては、私自身も2003年秋に実際に広東省と香港を訪れて、第一線で活躍した医師に会うチャンスがあり、そのとき如何に中医学が活躍したか、いろいろお話を伺うことができました。非常に衝撃的でした。このあたりから、華南を中心に人々の中医学への認識が変わってきたのも確かです。

 中医学と西洋医学が将来結合して、中西医結合となる、という考え方も中国にあります。私は、この考えにはあまり納得できません。中医学と西洋医学はあくまでも別の理論であり、結合することはありえないと私は考えます。むしろ、併用というのがふさわしいでしょう。

 でも、こうやって国をあげて中医学の討論ができるという環境はすばらしい。日本の漢方はいまどうなっているのか?やっと漢方の寄附講座が全国の国公立大学の医学部にでき始めているようですが、早く伝統医学を5年でも6年でもみっりと専門に勉強できるような国公立大学が設立されてもいいのではないでしょうか。でも中国全国にある中医薬大学のようにはなかなかいきません。


 数年前の北京での国際学会である著名なアメリカ人医師に「日本の漢方(Kanpo)は世界でも有名だけど、どういう教育機関があるのか?」と聞かれたときに、「まだ漢方医師の資格すらない。(もちろん、鍼灸師などの資格はありますが、医師ではないです)」と答えるしか仕方がなかった。日本には中国に負けないぐらいのすばらしい伝統医学があるのに…。アメリカ人はどこかそういう伝統に憧れているような印象も受けました。きっとアメリカなど西洋でKanpoがもっと注目されたら変わるんだろうな、と秘かに期待しています。

 皮肉な話ですが、上海でも美容や化粧品などに「中医」ではなく「漢方」の漢字を使うと、何かおしゃれな「舶来」のイメージがあるようですよ。
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類