2006年07月12日

料理人とはお客に夢を与える仕事である

 日本料理の料理人であり、レストランも経営している私の従兄が上海に来ているのですが、もう中華料理はしつこくていい、ということで日本料理屋へ行きました。
 今日の夜、利用させてもらったのは復興中路593号の民防大厦3階にある「春夏秋冬」(電話:021-24028111)。
 ここは、上海の日本料理屋でありがちな食べ放題ではないところが気に入りました。海鮮料理を売りにしているだけに、刺身など生ものは結構おいしかった。料理職人の従兄も上海でこれだけのものを準備できたら上出来と喜んでいました。
 
 日本料理の修行を積んで一人前に鍛え上げられてきた私の従兄の口癖は「料理人とはお客に夢を与える仕事である」という言葉です。料理を作るほうはそれこそ同じような作業を何百回と繰り返すのだけど、食べる我々のほうは、まさにその一品だけ。だから、料理を作るときも一品一品に心を込めなくてはならない。逆に、料理人がどういう心情で料理を作ったか、たった一品の料理でも我々お客にわかってしまうものです。そしてその一品に客の夢や感動を与えるようなものを作らなければならない。それがまた料理をする醍醐味の一つだといいます。

 従兄いわく、寿司職人なろうと思ったら最低3年、日本料理の職人になろうと思ったら最低10年は修行を積まないとダメだといいます。さらに、修行といっても伝統的な世界では先輩が手取り足取り技術を教えてくれるわけでもなく、殴られながら盗み取るしか方法がなかったそうです。現在、そういう教え方をすると、後輩から警察に訴えられるので、「ようやらん」といっていましたが、そういった甘えが最近の本場日本での日本料理のレベル低下を導いているし、教わるほうもすごく損していると嘆いていました。


台風が近いのかな?今日の上海の夕焼けは美しかった


 最近の上海でも、レストランは年々豪華になってきたけど、おいしいと思える中華料理が減ってきた。その一つの原因に、昔の上海にあった街の食堂のような雰囲気で、コックとお客が直接触れ合うチャンスが減ったことが理由の一つにあると思います。
 どこのレストランでもなんか経営と味はまったく別のものになってしまい、雇われコックは言われるままに作るだけ。それが、最近の上海での中華料理のまずさに大きく影響していると思います。

 中国の田舎に行くと、いまだに古いスタイルの食堂が残っています。確かに衛生的に問題があるのですが、でも街の食堂に入ると、客の目の前で材料を選び、料理をし、客が食べているときも、それを店主兼コックがじっと見てくれているようなところがまだ残っています。

 客はまずかったら直接コックに言うだろうし、うまかったらきっとほめることでしょう。今の上海のレストランだったら、「うまい」と料理を運んでくる小姐にいっても、その気持ちは料理を作っている現場には届きにくい。

 日本の寿司屋やラーメン屋、街の小さな食堂なんかは何でもこなさないといけないから大変だけど、日本には今でも沢山あります。
 中国でも、飲食業にそろそろ精神や哲学が入りだしてもいいように思うのですが…。
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類