かねてから中国の病院で問題になっているのが「医托」と呼ばれる患者を呼び込んでつれてくるという行為です。 上海では今私立の病院や診療所が増えすぎて、ひどい競争をしています。しかも、私立の病院・診療所の多くは、上海市の公的医療保険が使えないため、私立病院の患者は限定されてくるため、獲得に必死となります。
例えば、外来患者が多い大規模公立病院では、有名な専門家に中国人の患者が診てもらおうなら、数ヶ月の予約待ちもざらです。(外国人患者の場合は、別料金になっていて、VIP待遇ですが…)
そういったドサクサにまぎれて、とくに地方から上海にきて、ここの事情が分からない患者に対して、鉄道の駅や総合病院の待合室で「うちの病院へ来ないか」と患者に声をかけて、車で自分たちの診療所に送り込むことを「医托」といいます。すでに職業化している集団があるほどです。
こういったことをする私立病院・診療所の多くは、大した医療技術もなく、検査や薬と称して高額の医療費を請求し、患者からお金を巻き上げるという悪徳商人のようなことをします。実際、中医学の診療所でこの行為が少なくなく、最近閉鎖させられた診療所も多々あります。
患者の間に被害者が出ており、上海市も監督を強めていますが、患者側は自己防衛するしかなく、いたちごっこの気配もあります。でも、そうやって「医托」で儲けている病院があるのも事実なのです。
一方で、病院側も最近、入院患者を中心に困った問題を抱えています。それが「医閙」という行為です。即ち、医療機関の中で、医療サービスを不満を抱えている患者を抱きこみ、医療トラブルだと騒ぎ立て、病院からお金を得ようとする職業集団。中には、病院に対して恐喝まがいの行為も見られるとかで、衛生部も医療機関に注意を呼びかけています。
もともと、患者と医療の関係が複雑な中国では、例えば怒った患者が医師を刺したり、ナースステーションのガラスをぶち割ったりするような事件がよくみられます。患者と医療機関双方が問題を抱えている中国の医療現場、そこで最終的に中国人が頼るのは自分の「人脈関係」なのです。その結果、親戚や友達の医療関係者を通じて、コネなどで治療・入院をすることが多いことも頷けます。ま、日本でも似たようなことがありますが…。
医師の待遇をあげることも大切かもしれませんが、それ以前に患者と医師の「モラル」を高めることが先決なのかもしれません。
2006年07月15日
患者を連れてくる病院
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類