2006年07月19日

根深い傷

 私は、自分の祖国である日本に生まれたことを誇りにもっているし、中国に十数年生活しようと、やっぱり日本は大好きです。

 でも、中国で生活していると、時にはなんとも説明し難い気持ちになることが良くあります。

 これは、先日私の恩師である教授の外来患者診察のお手伝いをしていたときの話。

 私は、中国語もまず問題ないし、見た目も日本人とはまず分からないので、中国人の患者さんと話をしていると、赤裸々な話をよく耳にします。

 今日は、包頭から上海に治療に来ていたかなりご高齢の患者さんです。

 このおばあちゃん、4歳ぐらいのころの記憶が、いまだに悪夢として出てくるといいます。

 その悪夢とは、日本兵(一般に、日本鬼子や小日本と呼称します)が数人、いきなりドカドカとやってきて、4歳の彼女を抱きかかえ、いきなり床へたたきつけられたというものです。幸い命には別状はなかったけど、そのときの恐怖心は、いまだに心の中からよみがえることがあるといいます。
 そしてこういったエピソードを問診している教授に話をします。


 そういえば、私も4歳前後のころ、高熱を出してうなされたことや、交通事故に遭いかけたことなど、時々ふと脳裏によぎることがあります。幼いころ海外で生活していた思い出も時々走馬灯の如く思い出すことがあります。

 しかし、このおばあちゃんのような恐怖心とはぜんぜん性格が違うものです。
 彼女は、それが原因で腎臓の調子が悪いといいます。中医学と西洋医学の腎臓では、意味がまったく違うのですが、中医学では昔からこの恐怖心が腎臓を傷めると考えます。

 中国で生活して、中国人と親しくなればなるほど、私が日本人であることをどのように表現するのがいいのか、悩むことが時々あります。また、そういった話題を故意に振り向けてくる人も少なくありません。そういうときに、日本人としてどう対応できるか。

 私も日ごろから中国の日本へのマスコミの論調を見ながら、考えにふけることがあります。もちろん、この問題で上海人であり、かつ猛烈な読書家である彼女とも討論することもよくあります。

 先日も、ある上海の新聞で、イラクから自衛隊の撤退の話が記事になっていました。そこの見出しに、「自衛隊が日本帰国時に現地からの感謝状を求めた」というような書き方になっています。すごい皮肉的な表現ですね。

 日本のニュースを見ていると、この夏休みに中国へくる日本人観光客は増加するという予想が出ています。多くの中国人は私たちを暖かく歓迎してくれることでしょう。

 しかし、中国での我々の言動は、中国の一般市民から絶えず注意されているということも忘れてはいけません。中国人が日本に自由にこられない昨今、中国にくる我々がまぎれもなく日本の代表と見られているのです。
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類