2006年07月20日

何も地下鉄運転士を襲わなくても

 上海のマスコミで報道されたニュース。

 17日朝6時ごろ、地下鉄1号線の始発列車は、共富新村を発車した。ところが、この列車は始発当初から先頭車の空調が故障、本来は修理に出さないと行けないところだったが、結局はそのまま運転された。そもそも、上海の地下鉄は列車が不足していて、1編成でも休ませることができないからだ。
 その列車が終点のシン庄までいって、再び共富新村に戻ってきたころは、上海名物の「超」ラッシュ時間帯に入っていた。先頭車の空調は相変わらず壊れたまま。怒った乗客は運転士を襲撃、110番から警察が駆けつける騒ぎになった。この結果、列車は8分の遅れ。上海地下鉄開業以来はじめての運転手が乗客に襲われるという事件になってしまった。19歳のこの運転士は、まだ業務に戻っていないという。


 鉄道マニアの私から言わせてもらうと、上海地下鉄の設備は夏に極めて弱いと思います。ドイツから車両を輸入したためか、とにかくラッシュに対しての対策が甘い。その象徴となるのが車内の空調の問題でしょう。

 1号線、2号線のシーメンス製の車両は、夏は一応空調がついています。冬の暖房ははじめからなぜか全車両設置されていません。しかし、90年代後半に投入された、おそらくモーター音から直流の電機子チョッパ制御かと思われますが、この列車はとくに空調が弱い。

 日本だったら扇風機や送風機を使って空調の効率を上げるのが普通ですが、上海の地下鉄にはそれがありません。だから、ラッシュ時になると特に蒸すのです。

 また、上海の場合、冷気の伝達に頼るのは、地下鉄車両を通り抜ける通り風。地下トンネルを走行中はこの通り風が強く発生するのですが、地上走行中は一切発生しなくなります。だから、冷気が伝わりにくくなり、結果的に熱がこもりやすくなります。特に先頭車は暑い。

 さらに、初期編成は空調のパワーが他の列車より少ないみたいで、これが暑さに拍車をかけています。

 地下鉄では早急に冷房装置の改造を行うようですが、とにかく車両不足で運用のやりくりが大変な上海地下鉄。ドイツからはるばる運ばれてくる列車も、まだまだ時間がかかるようです。

 日本の電車にはラッシュ時のノウハウがたくさん詰め込まれているのに、上海では一編成も走っていません。列車の納入も、ヨーロッパに比べれば距離的にすごく楽なはず。いろいろな事情があるにせよ、日本の電車が上海で走っていないのは、すこし残念です。
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類