2日目のパネルディスカッションでは、別府温泉、城崎温泉、有馬温泉、そして会議が行われている地元の岩井温泉からも各地の観光協会会長などが出席して、「新時代の観光ビジョンと温泉資源」についての討論が行われました。
私も個人的にいろいろな温泉旅館のオーナーの方のお話を伺いましたが、一部の人気旅館を除いて、どこもいま経営が大変なのが現状です。温泉ブームとは裏腹に、レジャーの多様化が原因とも言われていますが、私が思うに日本の社会的経済格差の問題も大きく影響しているように思います。そりゃ、一泊最低1万5千円はする温泉宿は決して安くない。高い温泉宿なら一泊3万、4万円は当たり前です。
ある旅館の話では、宿泊客の予約キャンセルなどで困っているという話を聞きました。同じ日に複数の旅館を予約して、当日に旅館をみて決めるとかで、キャンセルにあった旅館では晩御飯の準備がまるまる損失につながるなど、利用者サイドのモラルの問題もあるようです。
中国では、どんなホテルでもたいていクレジットカードでデポジットはとられるし、キャンセルしたら当然キャンセル料がとられるところが多い。日本でも利用客のモラルが下がってきているのなら、それぐらいのことはしてもいいような気がします。

ただ、私のように温泉旅館の一利用者としては、やはりもっと利用しやすい営業を行ってほしいと願います。たとえば、インターネットが使えるとか、食事は料金に含まれていないとかそんな小さなことでも融通が利けば、すごくいいのにと思います。たとえば、食事込みでなければ、多くの観光客は温泉街で食事を楽しむわけで、そうすると街の活性化にもつながります。同じような旅館料理を毎日食べるよりも、私が中国での旅行で経験しているように、その地域の特色ある庶民の食文化を楽しみたいというほが本年です。
どうみても、いまの温泉旅館の料理は出しすぎです。若者はともかく、高齢者の人はとても食べきれない。
さらに、日本では高齢化社会を迎え、年金生活者も増え、日本人の娯楽といえる温泉に大きなお金をかけることが難しくなってきています。豪華な料理、豪華な設備よりも、むしろ昔ながらでもシンプルで、心身ともにリフレッシュできるようなそんな空間が私は増えたらいいなと思います。

街の活性化の問題も、まだまだ討論されるべきでしょう。日帰りの温泉客ばかりが増えて、宿泊する人が少なくなっている日本の温泉地の現状は、憂うべきでしょう。日本人の文化としての温泉が、危機的状態にあるといっても過言ではないと思います。
さらに、温泉旅館と地域社会との関係も非常に大切です。ある温泉街では、立派な温泉旅館が数件あるのに、それにともなう地域の潤いが感じられません。一部だけに観光客が集まったりして観光収入があっても、街は元気にならないのです。
地域の産業活性化に関しても、企業誘致などをがんばっている例などが紹介されていましたが、でも実際に企業がその地域に大きな税収もたらすわけでもなく、コスト削減と機械化により地域住民の雇用が改善するわけでもない。逆に、自然環境破壊などマイナスの面が強調される。
日本の中央政府にも、何も東京だけが日本ではないと声を大にしていいたい。大都市は、人材も含めて、地域の資源を食い尽くしている現状やはり再認識する必要があるでしょう。

そして、忘れてはならいのは外国人観光客の問題。今回の会議ではほとんど討論されませんでしたが、これから中国も含めてアジア各国から、物価がお手ごろになった日本にどんどん観光客がやってくることでしょう。そういった観光客と我々日本人がどうやって共存していくかも大きな問題だと思います。
手放しに海外に向けて「YOKOSO! JAPAN」とキャンペーンすればいいだけではなく、もっと現実的でかつ建設的な討論が行われるべきだと思います。
うまくすれば、外国人観光客が今の日本の温泉地の苦境を救ってくれるかもしれません。
