2006年09月10日

中医学の治療も進歩している

 祖母が癌であることがわかり、手術も終わり回復してきたころに今度は私の母が乳がんであることがわかりました。

 私も触ってみましたが、ちょっと触診した程度なら、良性とも判断されかねない腫瘍で、とりあえずクロと検査が出て、9月20日に手術をすることが決まりました。乳がんに関しては、はっきりって触診ほどあてにならないものはないと思います。

 乳がんはいわば全身の病気で、乳房を手術すればそれで終わりというほど単純なものではないのです。
 乳がんがあるということは、ひょっとしたら体のどこかに癌があるかもしれないし、必ずしも乳がんだけが元凶というわけではないので、全身を見なければなりません。さらに、われわれ男性諸氏にとれば、女性にとっての乳房の重要性はもちろんわかりませんし、女性にとってはメンタル面での問題も大切になってくる。

 中医学では癌のことを「岩」といいます。乳がんの治療は、中医外科の分野では「乳岩」とも言います。中国の中医病院では、中医外科が乳がんの生薬治療や研究を行っています。上海の患者さんを見ているかぎり、西洋医学で手術を行い、術後に中医外科の門をたたく人が少なくありません。

 考えてみれば、中国における癌の中医学治療もいろいろ変化してきました。
 よく言われるのが、80年代までは抗がん作用のある毒性のつよい生薬をどんどん使う「毒でもって、毒を制する」的な考え方が中心でした。ところが、この方法では人間の正気を傷つけ、治療の目的を達成させるのが難しいということがわかってきました。
 そこで、最近では「扶正去邪」といって、体の正気高めて、あわせて邪気を取り払う的な処方が多いです。やはり正気を十分に高めてあげて、そして体が癌に対して対抗できるようなパワーを持たなければなりません。西洋医学でいう免疫力というのもまさにその一つでしょう。こうやって、中医学の考え方も時代の変化とともに進化しているのです。

 西洋医学でも同じですね。抗がん剤などはまさに中医学的にいえば、「毒でもって、毒を制する」的な考え方なのですが、最近ではその抗がん剤の使い方もいろいろバリエーションが増えて、一辺倒的なやり方も減ってきたように思います。

 乳がんの場合、その病因として、中医学ではストレスや情緒を非常に重視します。最近、乳がんの患者が中国でも増えているようですが、もちろん検査技術の発展とともに、女性の社会進出にもなうさまざまなストレス、さらに初潮時期の早まりなども影響しているようです。中国の食生活の変化大きな要因でしょう。また乳房には 腎・胃・肝の経絡が通っているので、これら臓腑と関係があることがわかります。

 私の母親の場合、生薬と西洋医学を併用して治療を行っています。生薬は日本で手に入らないので、中国から取り寄せていますが、乳がんにこれが効く、という発想よりも、乳がんは全身病なので、体全体のバランスを整えるような処方を考えています。

 「免疫力」に関してお勧めの本を一冊。
 新潟大学の安保 徹先生が書いた免疫力再生法。安保先生は中医学の専門家ではありませんが、われわれが使ってる中医学と十分に共通するポイントがたくさん出てきました。中医学ではマクロ的に話をしますが、安保先生はミクロ的に大変わかりやすく免疫力について書かれています。
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類