私の恩師の教授ももう70歳近いけど、学会の理事をするなどますます忙しくなってきています。来週からはカナダの医師の招きでカナダに飛ぶらしく、中医は年をいけばいくほど経験をつむので本領を発揮するのです。
一般に中医大学を卒業後、臨床を5年したらようやく中医学入門で、人に見せられる処方が書けるようになるのは50歳を超えてからといわれます。とても一朝一夕でできるようなものではなく、そのため経済的にも苦しい若年代に、確実な収入が見込める西洋医学に転向してしまったりする医師が少なくないのです。
そんな永田先生と一緒に、今日は円を人民元に換えるために銀行に行きました。久しぶりに窓口で両替にいったら、いつも銀行にいるブラックマーケットのオヤジ集団はめっきりへったものです。
今、そういったブラックマーケットで両替するような人はほとんどおらず、閑古鳥が鳴いています。これも上海の大きな変化でしょう。
いくつかの理由が考えられています。
まず、ブラックマーケットの取締りが厳しくなったこと。これは昨今の金融事情を見ればよくわかります。
それよりも、もっと根本的な理由は、人民元の上昇スピードが90年代と比較すると非常にはやくなり、ブラックマーケットで利益を稼ぐことが難しくなったことが大きいようです。日に日に米ドルの価値が下がるわけだから、商売になりませんよね。私が上海に来たころは、対ドルレートはずっと同じでしたから。
さらに、昔は上海市民が正規で購入できる外貨が限られていて、留学などを考えている市民はどうにかして外貨がほしかった。さらに、21世紀にはいってB株にも市民が投資できるようになると、外貨の調達に人々は走り回り、外国人の友達を作っては外貨に買えたいと電話する熱心なおばちゃんもいました。
でも、今は上海市民でも毎年2万ドルまで外貨を購入することができるようになりました。わざわざ非合法や偽札のリスクを背負ってまで、ブラックマーケットを活用する意味がなくなったのです。
「黄牛」といわれた彼らは、いまはチケットのダフ屋販売などをしながら生計を立てているそうです。なかには、培ってきた経験を買われて、先物市場のコンサルティングなどに転向している人もいるそうで、世の中にはまだまだいろいろな商売があるものです。