昔、地下鉄2号線がなかったとき、延安トンネルを抜ける路線バスの混雑は並ではなく、私など当時の貧乏留学生は、タクシーを使うことは贅沢だったので、フェリーをよく利用したものです。
なにより延安トンネルの密室に比べれば、フェリーのほうがかなり気持ちいいののです。
さらに自転車族にとっては、このフェリーが今でも東西を結ぶ唯一のアクセスなので、重宝しています。運賃は自転車なら片道1.3元で、地下鉄やバスよりも料金が低く設定されていて、貧困層にも配慮されているのです。
いつも思うのですが、自転車用のトンネルがあればいいのですが、そうはいきませんよね。
しかし、最近ではそのフェリーが姿を消しつつあります。2006年10月15日には、万博建設の関係で、周家渡が閉鎖されました。
この周家渡港は浦東側にあって、もともとは個人の港で、清代に建設されたものでした。浦東でとれた野菜を浦西に運ぶルートとして、その当時は大いに栄えました。
しかし、周家渡の住民が万博建設で立ち退きとなり、その役割も薄れ、北側にある南碼頭と統合されました。
私はこの黄浦江を横断するフェリーに乗るたびにその鮮やかな運転技術に魅了されてしまいます。
船はS字を描いて横断していきます。つまり乗った方とは反対側から下船できるようになっているのです。自転車など時には超満員のフェリーの中では方向転換することは難しいですから。
とにかく往来する船が多い黄浦江。船のタイプもさまざまで大型の貨物船やはしけ、タグボートまで見ているだけでも飽きません。
そんななか、まるで上海のガチャガチャした道路を横断するように、ちょっとのスキをついて渡っていきます。そのタイミングが絶妙です。
道路を横断するのならともかく、船はすぐに止まることができませんからね。
いつもヒヤヒヤするよなスリルを味わうことができます。この船を一人前に操縦するには少なくとも10年以上の経験がいるそうです。
日ごろ、この東西を横断するフェリー、日本人にとってはあまりなじみのない乗り物かもしれません。
でも、フェリーの上から上海の両岸を見てみるのもなかなかいいものです。造船の街でもある上海の様子がよく分かります。
いつまでも現役でがんばってもらいたいものです。