ところで、このサトウキビにもいろいろ種類があって、上海近郊、とくに崇明島などで見かけるサトウキビは、甜芦筍(上海語でディリスン)といって、茎が緑でまさに竹のようで、少し細め。一方、上海本土で見かけるサトウキビは、茎が濃い茶色で、中国語でも甘蔗といいます。いわゆる黒砂糖の原料となるのは、甘蔗のほうで、絞った汁は白っぽいのですが、おいておくと茶色く変色してきます。
日本でも地方によってはサトウキビはなにも珍しいものでもなのですが、私のように大阪出身のものにとっては、正直言って上海に来るまでは見たことも食べたことがなかった。中国に初めてきた10数年前、中国人がなにをムシャクシャしているのだろうと、不思議に思ったのをよく覚えています。
食べ方はかなりワイルド。ナタをつかってサトウキビの皮をはがし、節ごとに切って、顎の力で噛み付きます。するとどうでしょう。甘い汁が口の中で染み出してきます。とくに、糖度が清涼飲料水のようにしつこくなく、後口がすごくいい。特に、スポーツなどをしたあと最高です。今では、上海近郊にサイクリングにいったときは、必ずといっても良いほど食べるようにしています。
甜芦筍に初めてであったのは崇明島です。もう何回も島に行っていますが、秋になると甜芦筍ばかり売っている通りができるぐらいです。それほど人気があるのです。崇明島にいった上海人の定番のお土産になっています。
甜芦筍は甘蔗と比べると、皮も厚く、食べるときにはかなり顎の力が必要。こちらは、ナタで皮をはがさないので、歯で皮を剥いていきます。糖度はこの甜芦筍の方が高く、甘さにもコクがあるように思います。茎が細い分だけ噛み付きやすく、かなり味わうことができます。
いずれも食べかすが出るのが欠点で、それが列車などに乗るときに床に散らかっているのです。マナーの悪さには閉口しますが、私はビニール袋をもって食べます。口のなかにジワット広がる汁がたまらない。中医学的にも、喉を潤す作用や、解毒作用、気のめぐりを良くする作用などもあり、健康的な食品の一つといえるでしょう。
街を歩くと、サトウキビジュースを造ってくれる移動屋台を見かけます。1杯1元〜2元程度。サトウキビを大量にすりつぶして、ジュースにするのです。こうやってゴクゴクのむと、また味わい方も格別です。喉が渇いているときは、特においしい。
私も、もしいいサトウキビを使っていて、清潔そうだったらそれこそペットボトルを持っていって、そこに作ってもらいます。グイっといく喉越しが大好きです。昔の人は偉いものです。栄養もあるので、本当によくできていると思います。
サトウキビはまさにこの時期しか市場に出てこない旬のものなのです。
ちなみに、中国の子供は、サトウキビを噛むことによって顎を鍛えることができるようです。私の彼女も子供のころによく食べさせられたといっていました。なるほどねえ。
日本人と中国人をぱっと見て比べたとき、日本人に歯並びがよくない人が多いのは、やっぱり噛むことが少ないことが原因なのでしょうね。