先週の土曜日、うちの家に来ているアイさん(家政婦さん)から相談を受けました。このブログにも登場しましたが、うちのアイさんは安徽省からの出稼ぎに上海にきています。
話を聞いてみたら、アイさんの旦那さんが肺癌であるということがわかり、レントゲン写真を見てもらえないか、ということでした。
もちろん、お安い御用ということで、アイさんは家に帰ってレントゲンをとってきました。胸部レントゲンとCT。見た瞬間に分かりました。それぐらい進行が進んでいた肺癌でした。おそらく、転移も進んでいることでしょう。
彼ら出稼ぎ労働者には、当然上海での公的医療保険はありません。アイさんとだんなさんの2人三脚で成り立っている家計です。全額自己負担となったとき、抗がん治療も、手術もとても負担できるような金額ではありません。
おそらく彼の場合、生薬治療だけになることでしょう。中医学がある中国の強みですが、日本と違って、これしかないというようなケースは本当に多いのです。
今、上海にはすごい数で出稼ぎ労働者が増えています。この増えようは、市中心部にいたらあまり気が付かないと思いますが、郊外にいくととても顕著です。とくに農村エリアでの出稼ぎ労働者が多い。私は、今の上海の農村事情とこの出稼ぎ労働者の問題は非常に密接な関係にあると考えます。
うちのアイさんのように、家を借りて上海で暮らしているのはまだ幸せなほうで、その多くは、いわゆる条件の悪い職場の宿舎で寝泊りしています。
彼の職業を聞いてみたら、PVC製造業ということでした。ここから、ひょっとして彼の肺癌は職業的なものに関係あるのでは、という想像もつきます。PVCとは、われわれのマンションで下水道などに使われているパイプのことです。きっと、劣悪な環境で、有害な気体を吸いながら仕事をしていたのではないでしょか?
彼にはとにかく、元気をつけて、免疫力を高めて、癌に打ち勝つ体を作らなければならないとアドバイスしました。そうやって抗がん剤も手術もしないで、むしろ拒否してがんばっている日本人の患者さんが日本にいるのだよって。
こういった出稼ぎ労働者たち、特に我々が病院でよく見かける患者となった出稼ぎ労働者たちには、田舎に帰ってゆっくりと静養してほしい。
上海の、こんな劣悪な環境で仕事に励むより、農村に帰って農業に勤しむほうがどれだけましか、といってあげたいところだけど、いったん都市生活を味わってしまったら、そう簡単に田舎に帰ることができないということも私も十分に承知しています。
2006年10月23日
がんばれ、アイさんの旦那さん!
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類