「腊肉」(ラーロウ)とは、いわば保存食。旧暦の12月、すなわち「腊月」に作るから、腊肉といいます。例えば、この時期に咲いている梅の花も、普通の梅と特別して「腊梅」(ラーメイ)といいます。日本語ではロウバイのことです。「腊」とは、先祖代々をお祭りすることをいい、古代「周」の時代からある習慣といわれています。そこからも中国人が春節を大事にすることが分かりますよね。
地方から来ている人が増えることにより、自分の家で腊肉を作る人が増えました。もともとは、四川省や湖南省、広東省など山の多いエリアで作られるもので、上海ではあまりなじみのないものです。私が上海に来た10年ほど前には、あまり腊肉を作っている家庭は見られませんでした。それだけ、地方出身者が増えたということです。人口1700万人いる上海市の300万〜400万は出稼ぎで生計を立てている外来人口といわれていますから。
しかし、浦東のある市場で見かけたような腊肉の「軍団」は、私も始めての体験です。これだけ並べられると私の印象は
「天井からミイラが並んでいる」
感じです。
そうなんですね。腊肉とはまさに「ミイラ」と同じようなものではないでしょうか?
一般に、新鮮な肉・魚を買ってきて、一般的に料理に使うときにはここで水洗いするのですが、腊肉を作るときは洗いません。水気をしっかりと取って、表面に塩をかけます。そして、容器のなかに詰め込んで塩漬けにします。一般に、「重」しを置いたりして圧力をかけます。漬物の状態ですね。
こうやって、15日間ほど置いておいて、取り出して軒下にぶら下げます。このとき、寒い風に晒しておくことが大切なのです。
中国の田舎にいくと、軒下に肉や魚がぶら下がっていることがありますが、まさにそれなのです。
冷蔵庫もない時代に、中国の昔の人の食べ物を保存するための知恵でしょう。
肉を保存するには、腊肉は格好の食べ物で、例えば切り刻んでスープに入れたり、野菜と一緒に炒めたり、お粥と一緒に食べたりします。
ある程度塩分が効いているので、ご飯が進むというものです。
春節が近づくと、中国のいろいろな伝統的な習慣を目にすることができます。「腊肉」作りもそうなのでしょう。
日本でもそうですが、新年をケジメとして大切にすることは、どこの国でも同じです。