私は、小学生時代は三重県名張市で過ごしたのですが、国道165号線沿線に、消防団の火の見やぐらがたくさんあったことを記憶しています。今でも、まだいくつか残っているようですが、都市化にともない、その必要性もだんだんとなくなってきたのでしょう。
実は、高層ビルが林立する上海にも、その昔、火の見やぐらが消防で大切な役割を果たしていました。その100年ぐらい前の遺産が、まだ上海にも残っています。その数わずか11箇所。一部では風化も始まっているようです。
たまたま人民路あたりを歩いていたときに、ビルの谷間にうずもれていた火の見やぐらを見つけました。コンクリート製で、今はもう使われていません。1997年に上海市内ではすべて廃止されました。
上海市の旧南市区エリア。今は、黄浦区と合併しましたが、私が上海に来たころは南市区と呼ばれていました。上海の都市開発の原点がここにあります。
こういった歴史的価値ある建築物を守ろうという動きが、やっと出てきているようで、少しはほっとしました。
話が変わりますが、私は四季の中で一番好きなのが秋です。
それも、ちょっと寒いぐらいの、空気が凛とした感触が、たまらなくいい。
葉っぱの色が変わって、静かに暮れていく秋の光景も印象的。幸い、中国でも田舎にいけばそういう風景にめぐりあえます。いまこの時代だったら、中国の農村を見たほうがもっと感慨にふけることができるかもしれません。生活の香りと人情を感じることができるから。
その中で、かならず目に浮かぶのが柿の木と火の見やぐら。そして、籾殻を焼く独特のこげた香り。火の見やぐらは欠かすことができない脇役です。
秋には静けさがすごくマッチしますよね。