2007年02月09日

インフラは整っても高いコスト、たいへんな東方芸術センター

 北京で発行されている『人民日報』が、かなり辛口の批評をしていました。

 それが、上海にある中国を代表する本格クラシックホール東方芸術センター。浦東の行政エリアにあり、設計したのがあのパリの欠陥空港の設計で物議を醸したフランス人建築家Paul Andreu。ふんだんに使ったガラスと花びら型の建築物は、すぐにそれとわかります。

 近所に住んでいるくせに、まだ中に入ったことはないのですが、内壁にはずらりと装飾のタイルが貼られていて、イボイボが個性的です。

 確か、中国で数少ないパイプオルガンがあるホールであるほか、氷の舞台もあり、アイスバレーなども行えますが、めったに使われません。

 この記事の中で、ホールの運営コストの高さと、一般市民が気軽に見に行けないチケットの高さを批判していました。
 外回りのガラスを掃除するだけで、4万元のコストがかかるほか、電気代などもあわせると1日平均9万元もかかるそうです。パイプオルガンは一定の温度環境でなければならず、空調は回り続けています。

東方芸術中心(センター)


 一昨年、2005年にベルリンフィルが上海にやってきたことは、うちのサイトでも紹介しましたが、このときにかかったコストは1200万元。最高4000元のチケットは、当時の上海でかなり話題になりました。しかし、実際にはチケット収入は700万元しかなく、浦東区政府から300万元の補助があり、広告で200万元埋めたそうです。

 バブルの日本でも、日本各地にさまざまな施設が建設されました。しかし、バブルが崩壊し、その多くは今、自治体の大きなお荷物になりつつあります。上海をはじめ、中国各地でどんどん作られている施設が、これからどうなるかはあくまでも未知数です。

 そういえば、私がインターン実習した上海市内のある病院でも、新しい病棟ができました。壁は真っ白で、カーテンウオールを多様し、外見だけはすばらしいのですが、運用コストは空調だけで1日2万元とか。病院側は電気代節約のために、冬場もなかなか空調を使いませんでした。

 中国は社会主義の国です。日本と違って、格差に対する世論は、もっと厳しいものがあります。お金持ちが多いのに、野菜の値段が恐ろしく安かったり、公共料金が安かったりするのも、そのためなのです。病院の治療費なども、ただであるべきだというのが一般的な考え方です。そんな中で、豪華を追求するようになると、あとが続かなくなってしまいます。
 
 おまけですが、北京の『人民日報』がこの時期にこういった記事を掲載するのも、いま上海への風当たりが強くなっている中国の世相とも少なからず関係あるのかもしれません。
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類