2007年05月17日

西洋医師が中医を好み、中医師が西洋医学を好む矛盾

 日本向けの医療系の雑誌に原稿を書いています。依頼された内容の範囲があまりにも広く、私の臨床経験だけではちょっと書ききれないので、膨大な資料をにらめっこしながらの執筆となりました。

 最終的にはなんとか6000字の要求された分量に収めることができたので、ほっと一息。でも、まだ正直書き足りないのが本音です。

 今回は、中医学における外用薬の使い方について書きました。一般的に、中医学といえば漢方薬とか針灸を想像しますが、外用薬というのも一つの大きなジャンルです。

 中医学の外用薬の市場は、最近急速に拡大しています。

 「え?」と思われるかもしれませんが、実は化粧品の分野で中医学が使われ始めているのです。これがまさに中医学の外用薬の発想です。

 資生堂とか日本の大手メーカーも積極的に生薬を化粧品に導入し始めています。

 この発想は、なにも今に始まったわけではなく、もともと中医学の伝統にあったものです。その結果市場は、いまや全世界で160憶ドルにまで成長しているわけで、医療用の中医学以上の人気になっています。

 そして、それに乗じて人気になってきたのが中医美容という分野なのです。最近では、中医美容学という学問にもなってきたぐらいですが、我々からみてみれば、ごく当たり前の結果といわざるおえません。

 ところで、先日、上海の復旦大学付属児科医院の教授と研究課題についていろいろ意見交換をしていましたが、つくづく思うのは、西洋医学の先生ほど、中医学の真髄に関心を持つ人が多いということです。

 昨今の中国の中医学では、とくに総合病院など大きな病院を中心に、中医学の伝統的要素ががおろそかにされ、中医学が形骸化しつつあります。以前話題になった「中医廃止論」とも関係があると思うのですが、若い中医学の医師ほど西洋医学にはしる傾向にあることは、以前ここでも紹介しました。

 一方で、西洋医師の先生は、常に最新の医療に接しているわけですから、医療レベルが上がれば上がるほど、中医学に関心を持たれる先生が多い。これは、中国でも同じで、児科医院の教授も私に非常に多くの核心をつく質問をされました。

 西洋医学で一通り治療法を試したあと、やはり伝統医学の力を借りてみたくなるという発想は必然でしょう。
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類