中国衛生部が発表した中国人の死亡原因の中で、悪性腫瘍がトップにきたことは、日本などでもたびたび報道されています。私の周りの中国人でも癌になった人がちらほらみられるようになりました。
たとえば、まだ若いうちのアイさん(家政婦さん)の旦那さんが肺がんの末期で、最近肺の3分の2を切除する大手術を受けました。今のところ、容態は安定していますが、とても仕事ができるような体ではなく、これからは中医学の生薬に頼る治療となります。特に、彼のように田舎出身の人の多くは健康保険がないため、今回の手術と抗がん治療にかかった医療費は完全自費で11万元(160万円ほど)。親戚・友人からお金を借りての治療ですが、これからどうやって返済していこうか、頭の痛い問題です。もちろん、我が家でも一生懸命働いてもらおうと思っていますが、返済には時間がかかることでしょう。
ところで、中国医学科学院の腫瘍研究所の研究員が、いま中国で発生している悪性腫瘍の3大原因について、解説していました。
中国にいる、我々の生活にも密接に関係することなので、すこし紹介しておきます。
まず、経済の発展にともなって、工場がどんどん増え、河川の汚染が深刻化しています。地方ではまだまだ汚染の重大性に気付いておらず、また都市部でもごみ処理が追いつかないため、河に生活ごみを捨てることが日常化しています。工業廃水の増加に伴い、水に含まれる有害物質が増加しています。特に地方都市では要注意です。
さらに、地下水の汚染が進んでいます。まだまだ、上海近郊でも地下水で生活している人を多く見かけます。長江デルタエリアでもまだまだ沢山あります。一応、井戸を掘ることは厳しく制限されていますが、それでも生活の必要上、仕方がないのです。また、農村では化学肥料や農薬の過剰利用が進み、水源の汚染を進めているのです。
2つ目の原因に、空気の汚染が急速に進んでいます。大きめの汚染物質ならある程度肺から排出されますが、小さな粒子は肺に残るため、免疫力が低下したりすると、発がん性物質ががんを引き起こします。さらに、建築ラッシュと内装ブームで、マンションの内装の空気汚染が深刻化し、人々の生活を脅かし始めています。
上海でも、普通に生活していてもどこかで有機溶媒のにおいを嗅いでしまうことは多いかと思います。マンションを選ぶ際は、生活の便利さ以外にも、付近の交通量や排ガスの状態、いつ内装されたか、家具の匂いは大丈夫か、建材は問題ないか、十分に確認する必要があります。
中国では、日本のように既製品の建材が使われることが少なく、さらに基礎知識のない大工さんの現場施工が多いだけに、十分に気をつける必要があります。
そして、3つ目の原因として、食品の汚染がとりあげられていました。これまで、中国人の間では「どういったものを食べたらだめか?」ということが話題になっていましたが、最近では「どういったものを食べることができるのか?」ということが話題になっています。つまり、安全に食べられるものを、消費者がしっかりと吟味して購入しないといけないということです。
肉類にしても、安全な食肉を購入できるルーツを知っておくだけでなく、果物や野菜に関しても、十分に吟味して購入するのは中国ではとくに必要です。特に野菜に関しては、値段が異様に安いのが中国ですが、その背景には殺虫剤や農薬の問題が今だにあるのです。最近も、海南島のバナナが物議をかもしました。
そして、非合法な健康食品、化粧品に関しても要注意です。これらは、毎日使うことが多いため、がん発生の原因ともなっていると指摘されているのです。
中国の場合、物価が安いことには、「安かろう悪かろう」という考え方が広くいきわたっており、市民は自分たちの所得にあった自己防衛方法を考え出しているのです。過剰反応することはないかと思いますが、現実にがん患者が増えている中国の実態は十分に考慮しておく必要はあると思います。
中国人が環境のよい日本に行きたがる理由が、よくわかりますよね。彼らの本音は、海外での移民を望んでいるのが少なくないのです。
われわれが中国で生活するときの本当のリスクは「健康」なのかもしれません。
2007年05月21日
中国のがん患者増加、環境汚染との関係が大きく
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類