今回の広東省巡りの最大の目的は、2007年に世界遺産に選ばれた広東省開平市にある碉楼の取材に行くことです。
「碉楼」という言葉は、日本語にはありませんが、いわばトーチカのことです。開平市周辺には、欧米に出稼ぎにいって帰ってきた華僑たちが、欧米の建物をまねて造った塔のような建物がたくさん残されています。
住人は海外で生活しているため、多くの碉楼は無人のまま残され、田舎の農村エリアあちこちにその姿を見せています。
中には、カナダ村のように、村全体がカナダに移民してしまったところもあり、それでも廃墟として残されています。
なにかアニメ「千と千尋の神隠し」のシーンに出てくるような、中国的でもなく、西洋的でもない、だけどなにかヨーロッパ調の不思議な建築物です。
では、なぜトーチカを作る必要があったのか?
実は、こうした海外帰りの華僑がたくさんいることを知って、土匪と呼ばれる強盗団が村を襲撃することがたびたび発生していました。そのため、家族と財産を守るために、自衛する建物が必要だったのです。それが「碉楼」です。
たまたま、香港から開平の故郷に戻っていた碉楼の持ち主にあう機会があり、トーチカーとしての様々な機能を教えてもらいました。
壁には石を投げる窓があったり、拳銃を撃つ穴があったり、窓は鉄格子で作られ、外には鉄板で厚く固められています。
19世紀後半から20世紀前半にかけて様々な碉楼が建築されました。
村の中にシンボル的な碉楼があることは、「故郷に錦を立てる」的な成功の証でもあったようです。建材にはアメリカから輸入したバスタブや水洗トイレ、セメントも欧米からの輸入で、材料には贅を極めていたようです。
時代の移り変わりとともに、碉楼の役割もトーチカーから、住居へと変わっていきます。
開平エリアにある碉楼でも、地区によって様式やデザインが微妙に異なり、民家マニアにとってはたまりません。
特に、丘の上に立っている楼閣は非常に美しく、なにか神秘的で、ちょっと恐ろしいような妖気を感じます。
詳しいことは特集でご紹介しますが、タクシーを2日貸し切って、自分のペースでいにしえの思いにふけるのもよいかと思います。静かに建つ碉楼が、なにか私たちに話しかけてくれているようです。
ひとつひとつの建物に、表情があるからでしょうか?
開平は、香港や欧米で活躍している華僑たちのふるさとでもあります。そんな彼らの苦労をしのばれます。
ただ、見学の際は、中国の農村全般にいえることですが、野犬が非常に多いので注意が必要です。中国はまだまだ狂犬病が頻発しておりますので。
2007年07月22日
広東省開平、「碉楼」の魅力
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類