深セン戸籍を持っている人といっても、深セン市民1200万人のうち、わずか180万人で、深セン全体からすれば、決して大きな数字ではないですが、この点に関して、香港の行政府内では賛否両論に分かれているようです。
特に、香港で問題となっているのが、香港の治安の悪化と、不法労働者の増加。今でこそ、深セン人の多くが自由に往来できるビザを取得していますが、それでも香港に入る回数は制限されています。
ここにきて、香港が深セン戸籍の人たちに、自由に香港に入れるようにしようと考えているのは、やはり深セン人の豊富な購買力により、香港の経済を活性化させたいというねらいがあるようです。確かに、深セン戸籍の人たちは、香港に勝るとも劣らぬ収入を得ているようですが、彼らに香港で消費してもらおうという訳なのです。
経済的にも、香港と大陸はますますつながりが強くなってきていて、一体化する動きがあるのがよく分かります。
ただ、実際には深セン戸籍をを取得するのは難しく、大卒もしくは200万元以上の投資など様々な条件があり、この地点で、取得数が制限されるということです。
この話を聞いて、思い出したのが映画「ドリアン・ドリアン」(中国語名:榴莲飘飘)です。
中国東北部の牡丹江から、主人公の小燕が、深センにやってきて、さらにそこから香港で出稼ぎに行き、男性相手にする職業で稼ぎまくり、香港社会の辛酸を舐めながら、最後は田舎に戻って、人生を見つめ直すといった感じのストーリーだったと記憶しています。非常によくできた映画だという印象が残っています。
この映画の中でも、大陸から香港に旅行ビザなどで入り、そのままビザが切れても不法残留して働き続ける大陸人の姿が描かれていました。
華やかな、いわばあこがれの香港の世界と裏腹に、現実の厳しさを思い知らされ、それでも金儲けに必死に働く、中国各地からの不法労働者たち。
でも、東北エリアの田舎の人たちにとって、南方の深センや香港というのは想像もつかない。
ただ、「故郷に錦を飾る」的感覚で若者を送り出し、そして彼ら先行者を頼りに、また若者が南に向けて田舎を出発する、そういった現象も描かれていました。
映画で象徴的な役割を果たしているのが、このドリア。
中国という社会の複雑さを、身にしみて感じました。