2007年08月11日

患者の医療への不信感

 今日は復旦大学付属児科医院の教授外来のお手伝い。午前中だけで、35人の患者を診察されますが、そのうち一部の患者で、中医学治療併用すると治療効果が上がるので、中医薬処方のお手伝いにいっていました。

 西洋医学の病院なので、中医学に関しての取り組みはまだまだですが、特に困るのが薬局の中の生薬の品揃え。いつも使っている生薬がないと、治療効果に影響がでるので、中医病院へ行くように紹介することもあります。

 生薬に関しては、新鮮なのが一番なので、その病院がどこから生薬を仕入れているか、というのは非常に大事なことで、さらにその生薬の回転率についても、おおよそ患者の数をみていれば検討がつきます。当然、生薬が早くはける病院ほど、生薬は新鮮なのです。

 小児科にくる患者さんは、この病院ではなぜか上海人より地方から来る人が圧倒的に多い。特に、浙江省・江蘇省・江西省エリアなど、上海近郊から長距離バスや鉄道ではるばるやってくるのです。
 大都市の大学付属病院のように、いわゆる「三級甲」クラスと呼ばれる研究機能を持った病院には、中国でも有名な医師が多く、海外との交流も盛んで、最新の医療を受けられる可能性も高いです。外国人を受け入れられる医療体制をもっているのも、「三級甲」クラスの病院です。

 そのため、中国の地方など見知らぬところで急病になったら、とにかくまず「三級甲」クラスの病院に行くことが大切です。これさえ分かっていたら、応急処置などでもある程度安心です。幸い、中国の病院では、入り口にその病院のクラスを掲げていますから、一目瞭然です。

 地方からの患者が多い原因に、地方の医療体制への不信感があるのも忘れていけません。
 中国のような発展途上国では、田舎の医療体制はかなり不十分で、上海の田舎ですら、大卒の医師を見つけるのが難しいレベルなのです。短大卒・専門学校卒の医師がいるだけでも、よしとしなければならない病院が地方にはたくさんあります。そういうところでは、設備も不十分で、満足な治療を受けられません。

 だから、都市の病院が混むのです。イメージ的に、日本全国の患者が東京や大阪などの大都市の総合病院に集中するようなものなのです。
 最近、日本でも地方医療の疲弊が問題となっていて、そろそろ地域による医療格差が出始めていますが、中国の場合をもっと深刻です。
 さらに、そういった地方からくる患者は大人・子供関わりなく、上海の健康保険適用外なので、医療費の負担も日本以上です。 たとえば、腎疾患などでも、透析を受けるまでは特定疾患のための公的補助は受けられませんから、経済的負担は非常に大きいのです。

 とにかく中国の場合、地方の医師と上海など都市部の医師とでは、我々の想像以上にレベルにかなりの違いがあります。そういった点を十分に認識しておくことが必要です。
 中国人が地方から上海に大挙してやってくる理由に、そうしたことも関係しています。
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類