一昔前の中国なら、死刑囚などから臓器の提供を受けていたようですが、いまでは法整備が進み、上海に関してはまず行われません。臓器の管理が厳しくなるに従い、いま上海では深刻な臓器不足の状態になっていて、移植待ちの患者が増えています。
上海では毎年4000人が尿毒症になっていますが、その数は増加傾向です。尿毒症症例のうち、移植が必要な重症患者の数は8000人で、腎臓の提供を待っています。しかし、そのうち移植が実際に行われるのは年間500例前後にとどまっています。
中国は人口も多いため、年間1万例の移植手術がおこなわれているという統計もあり、このうち腎移植を受ける人が最も多く、腎移植では最高28年生存できたという成果も出ています。肝移植でも12年、心臓移植でも14年生存したという成果からも、中国の移植技術は一定のレベルに達しているといってよいかと思います。しかし、ドナーがなかなか出てこないという問題を抱えています。
腎移植に関しては生体腎移植があります。親戚や配偶者にドナーになってもらう場合や、血縁関係がなくてもドナーになってもらうというものです。中国の腎移植手術のうち、4%がこうした生体腎移植によって行われています。割合としてはまだまだ少ないのが現実です。
特に、血縁関係があると、移植後の反応が少なく済む場合が多いので、今後中国では生体腎移植を主流にしたいと検討しているようです。
上海の場合、生体腎移植が行われる病院は中山病院や瑞金病院、華山病院、長海病院など3級甲クラスの病院が指定されています。
これら病院では、手術が行われる10日前に『親体器官移植信息表』と『供受者関係証明』を記入し、2日以内に審査される仕組みになっています。生体間移植のドナーとなれるのは18歳以上。また、夫婦間で移植を行う場合は、結婚して3年以上というような条件があります。
腎臓病の場合、中医学も一定の成果を上げています。特に透析時期を遅らせたりすることも実際に臨床では行われています。ただ、すべての患者がそれで効果があるというわけではなく、個人差が大きいのが現実です。中国の場合、経済的理由で透析ができない、ドナーがいなくて移植が行えないなどの事情を抱えている人が多く、そういった意味で生薬の活用が期待されていて、日本とはちょっと事情が異なります。
ただ、最近臨床をみていても、IgA腎症など、腎機能をいためている上海人が増えています。食生活の変化、環境の問題、原因はいろいろ考えられますが、まだ決定的な治療法がない腎臓病だけに、さらなる研究が行われています。
2007年08月14日
臓器が足りない上海の移植事情
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類