2007年09月03日

信州安曇野中房温泉(2007年9月記)

 日本の温泉フアンの間では、外すことのできない温泉地の一つである中房温泉に行ってまりました。私の念願の温泉地でもありました。

 なんせ、携帯電話の信号すら立たない山奥で、日本で初めて衛星公衆電話が使用されたとのことです。といっても、JR大糸線の穂高駅から車で40分程度の距離で、決してめちゃくちゃ遠いというわけではありません。

 中房温泉は、江戸時代文政年間からあり、今でも豊富な湯量と高い温度は健在です。多数ある源泉では、90℃以上のところもあり、日本人の温泉文化の原点を今も残しています。
 もちろん「日本秘湯を守る会」、「源泉湯宿を守る会」の会員で、経営者の百瀬さんとは日本温泉学会でも顔なじみです。
 百瀬さんは9代目。先代もまだ90歳というご高齢でありながら、いまでもしっかりと温泉宿を守っておられます。さらに、大女将も80代で現役バリバリで、温泉の長寿にもたらす効能を証明しています。温泉を愛し、継承していくということに対して、あつあつの源泉に負けない情熱で取り組んでおられることをつよく実感しました。

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ここの温泉は、江戸時代にそもそも明礬の採取で開かれました。明礬といえば、今でも漢方薬や日本料理で使いますが、この地方では昔製糸業で使われ、広く流通したとのことです。そして、温泉地として発展し、テニスコートやプールももつ当時としてはかなりモダンな温泉宿だったようです。

 昔は皮膚病や性病の治療にも使われたようですが、不妊症や婦人病に効果があり、車のなかった当時は、麓から3時間も歩いてこの湯治場にやってきたそうです。ゆっくりと1週間は逗留し、子供を授かったというエピソードが数々あると先代から伺いました。

 中医学的にも、温泉でぬくめるという行為は、不妊症に非常に有効で、伝統医学の観点からも非常に理にかなっています。そのほか、病後の健康回復や、リウマチなど西洋医学では介入しにくい疾患に対して、一昔前の日本では積極的に湯治が活用されていました。

 お湯の成分は大きく分けて2種類あり、硫黄の香りがする単純硫黄温泉、それとアルカリ性単純温泉です。浴槽の数は私がいっただけでも16種類あり、一部は男女混浴。
 さすがに、若い女性には出会いませんでしたが、日本の古き良き伝統を今も残しています。

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むし風呂。本当にむしぶろ状態だった。


 忘れてはならないのは、中房温泉は、いわば究極のSPAであり、その原点がありのままの姿で存在しています。
 たとえば、温泉の蒸気をそのままスチームとしてつかったむし風呂は江戸時代から続くもの。今はあまり人は見ませんでしたが、その当時はかなり人気だったようです。実際私も入ってみて、その気持ちよさを実感しました。 5分ほど辛抱して、沢の水で汗を流す。

 まさに、自然の恵みを100%体感できるわけです。

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大地の鼓動を感じるようでした


  さらに、温泉地の裏には、焼山があり、ここでは水蒸気のあがる地面にゴザを敷いて、岩盤浴を楽しむことができます。今のSPAでは当たり前かもしれませんが、それがすべて天然の地球の恵みから体験できるのです。

 ちなみに、焼山では穴をほって卵をいれると、見事ゆで卵ができてしまいました。これがまた美味!夕食では信州牛を地熱で4時間かけて蒸したローストビーフをいただきましたが、これまた焼け具合が最高で、おいしかったです。
posted by 藤田 康介 at 00:23| Comment(0) | 日本の温泉

信州高山温泉郷七味温泉

今日も移動途中に須坂の古城荘によって、インターネット接続。古城荘さん、ありがとうございます。

 昨夜宿泊した旅館わらび野の姉妹館として、七味温泉に渓山亭という旅館があります。
 途中、山田牧場で高原に放牧されている牛たちを観察。のびのびとした環境に、白黒の色彩が緑の中に映えます。道路の上には牛のウンチが点在していて、ここにたくさんの牛たちがいることがわかります。
スキー場などもあったりして、ちょっとしたおしゃれなペンションなども並んでいます。見るからに、若者たちをターゲットとした雰囲気のよい高原です。日本的というより、むしろヨーロッパ的でしょうか。ここにも日本秘湯を守る会の山田温泉があり、アルプスの山並みを見渡せる展望風呂があるそうですが、今回はパスして、一路七味温泉に向かいました。

七味温泉は蕨温泉をさらに山の中に進み、山田牧場への入り口を経由して到着します。まさに秘境の温泉たっぷりの雰囲気があり、せせらぎの音が心地よい。付近には、たった3軒の温泉宿しかなく、温泉街特有の雑踏はありません。だけど、付近には硫黄の香りが漂い、それがかえって素朴で、静かで心休まる空間をもりたてます。
中国だったら、こんな山奥にくると、さあ、トイレはどうしよう、風呂はどうしよう、と悩むわけですが、そこはさすが日本。こんな山奥でもウオッシュレットつきのトイレは当たり前です。


 渓山亭は、社長が25年以上かけて一代で築きあげ旅館で、温泉に対するこだわりを感じます。もちろん、日本秘湯を守る会の会員で、源泉掛け流し。ただ、ここも温度が低いようで、加熱しているということでした。
 しかし、温泉情緒はたっぷりです。白濁した湯ノ花がいっぱいの源泉は、湯気に独特の硫黄の香りを含んでいます。泉質は単純硫黄温泉。効能として興味深いのは、婦人病や成人病が挙げられている点です。月経障害や卵巣機能不全症、更年期障害などが紹介されていました。また、糖尿病・高血圧症・動脈硬化などメタボリック関係のもの、そして胃腸病にもいいようです。医療に携わるものとしては、その効果のほどを体感してみたものですが、それは今後の研究を待ちましょう。

ただ、本当にそうやって効果が期待できるのだったら、医療費削減のためにも、患者の苦痛を緩和するためにも、もっと積極的に活用しない手はありません。
とうとうと流れ出る温泉にたまる真っ白な湯ノ花をみると、そこになにか無限の可能性と地球の恵みを感じないわけにはいきません。


 私はせせらぎの音が大好きです。渓山亭の近くに昔万座方面に抜けられた旧街道の林道があり、歩いてみるのもよいかもしれません。私も早朝歩いてきました。

 渓山亭の料理もなかなかお勧め。今までいろいろな温泉旅館を巡りましたが、囲炉裏を囲んでの食事というのは初めての体験でした。晩夏とはいえ、山間の秘境は非常に涼しく、囲炉裏のぬくもりが、食欲をそそります。囲炉裏というのは、中国にはあまりない文化で、私も中国各地の田舎を旅行していますが、体験したことはありません。それこそ日本の誇れる文化の一つだと思います。そういった雰囲気に心休まるのも、先人たちの思いが、我々のDNAの中にも残されているのでしょう。


 SPAのようなにも施設がなくても、ただそこに温泉があるだけで安らぎの空間を与えてくれるのが日本の温泉文化。我々も大切に守って行かなくてはなりません。
今日は、いよいよ中房温泉に移動します。

posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類