最近、上海交通大学付属瑞金医院で、自然療法を行う部門ができたということが報道されていました。紹介を見てみると、「国際的に流行している自然療法」みたないキャッチコピーがつけられています。
この中で、癌患者の41%が、自分の病気に対して恐怖感を持っていて、これを克服するために、国際的に様々な「自然療法」が行われていると言っています。
で、どういうプログラムがあるかというと、例えば音楽を聴く音楽療法や、アロマ、ヨガをやってみるというようなことがあります。患者のために、セラピストが専門のヨガプログラムを作ってあげたりしているそうで、さらに栄養士を招いて、癌患者にふさわしい栄養指導も行うようです。
しかしです。
皆さんもご存じのように、中国には素晴らしい自然療法があるのです。
そう、中国伝統医学である「中医学」です。
このプログラムには、「中医学」の「中」の字も紹介されていませんでした。
これは、はっきりいって非常に惜しい現象だと思います。
癌治療の生薬利用は、中国人の間では比較的積極的に実践されているのに、どうも中国人の頭の中では、中医学と日常生活というのがきっぱりと分けられているように思うのです。
たとえば、ヨガにしてもそうでしょう。中国人にとって、気功や太極拳といった非常に素晴らしい伝統があるのに、若者はなぜかヨガへいってしまう。
気功といえば、あの「法○功」のようなものをイメージして、今ひとつ乗り気がしない。大学の講義で行われている太極拳も、いまやラジオ体操化している。でも、実際に気功の動作には理にかなっている物が非常に多いのです。
食事指導にしても、中医学の薬膳があったはず。だけど、中医師の話より、栄養士の話を聞く人の方が多い。アロマとかカタカナ文字をつけるとかっこよく見えるけど、なんてことはない。中医学にはそうしたリラックスや癒しを行える施術がたくさんあるのです。
でも、最近、そうしたものがなかなか顧みられず、とくに深刻なのは中医学の病院の現状。
西洋化が著しく、口先では伝統医学の保護を訴えていても、臨床の第一線ではなかなか実現されていない。
中医学の本質を突くような研究が、まだまだ少ないのが最近の中国の医療現場の現状です。大学の教授は、なかなか臨床のチャンスがないし、臨床医は日々の雑用に追いまくられて、なかなかゆっくりと古典の文献を研究する時間がない。
いま、我々外国人が中国国内外から中医学を盛り立てないと、中医学の前途が非常に厳しいのです。 中医師の数も、就職難と賃金の低さ、西洋医との格差が足を引っ張って、年々減少しているのです。患者の中でも、生薬を煎じることができない中国人が増えてきました。
これは、かなりショックなことです。
2007年09月24日
自然療法と中医学の葛藤
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類