今日の外来で、私が2年がかりで診ている子供の患者さんが来られました。
実家は安徽省で、おばあちゃんとお父さん、お母さんで上海で出稼ぎに来ているようです。この子は、いつも出稼ぎで忙しい親御さんにかわっておばあちゃんが診察にきます。
2年前に小児ネフローゼになり、一時は地元の病院で治療しましたが好転せず、その後、上海のある西洋医学の病院に行きました。一応、ステロイドを使うと、尿タンパクは無くなるのですが、減量し始めると再発してしまいます。
3回目に再発したときに、西洋医師から新しい免疫抑制剤の使用を薦められましたが、子供の親御さんが怖くなり、うちの師匠を頼ってやってこられました。その後、私の師匠と私との連携プレーで、2年間にわたって観察を続けましたが、生薬とステロイドを併用しだしてから、再発はぴったりと無くなり、2007年は結局1回もネフローゼが再発しませんでした。そして、ついにステロイドからの完全離脱に成功しました。
症状が安定してからは、1ヶ月に1回程度外来に顔を出してくれますが、今日は安徽省に帰ってからも薬を飲み続けるので、よろしくお願いしますという挨拶でした。
生薬で子供を治療するというのは、まさに親と子供の苦心の努力の結晶です。2年間煎じ薬をよくがんばったものです。
できることなら、しばらく上海にいて、生薬の配合を続けてほしいのですが、そろそろ小学校に上がるこの子は、上海では学校に行けず、仕方が無く親御さんを上海に残して、安徽省に帰ることになりました。
出稼ぎで上海に来ている民工たちの子供は本当に大変です。上海の公立学校には行けないし、医療保険もありません。さらに、親たちの雇用も安定しないため、家計にのしかかる負担も大きいようです。だから、生薬を使って割安に治療したいというのも分かりますし、上海でいい医療を受けたいという願望は痛いほど分かります。
結局、彼らが安徽省へ帰るのを決心したのも、上海の生活コストが上がりすぎて、出稼ぎで稼いでも割が合わないからだようです。
こうした民工たちの働きが上海を支えていますが、最近の物価上昇から、上海で出稼ぎすることが必ずしも豊かさにつながらないのも事実です。
患者さんから、時々私の携帯には電話がかかってきます。元気な様子を聞くとほっとしますが、少しでも私が役に立てたらと思っています。
2007年11月28日
上海で暮らしていくのは大変
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類