道教の道士による一連の儀式が終わったあと、玄関先では大きな紙の家が作られ始めていました。話によると、生前の家とほぼ同じ規模のものが作られるのが一般的。竹竿で骨組みが組まれそこに薄い紙が張られます。単なる家だけではなく、家具や家電、よく見ると「尿瓶」まであります。
家電には三菱のエアコン、車には黒のベンツ、ソファーにバスタブ、ガスコンロやプロパンガスもあります。すべて紙製。ここに昨日から折っていた金銀紙でできた模擬貴金属が敷き詰められました。
建築された紙の家の中にはってマジマジと「家具」をみていると、なんとわたしの名前の入った「長持ち」も運び込まれています。
紙の家は2階建てで、階段のほかに、屋根もつけられました。さらに屋根には太陽熱温水器が取り付けられました。そして、最後に故人が生前使っていた本物の椅子や衣類なども家の中に持ってきました。
こちら中国では、故人の使っていたものを形見分けするような風習はあまりなく、例外もあるようですが、だいたいは燃やしてしまうようです。田舎では葬式などのあとに故人が使っていたものを燃やす儀式はよくみられます。
家の建築が終わると、今度はまた道士たちがやってきてお祈りを捧げます。そして、家の周りに白い粉をぐるりとまくと、白装束を身につけた親族一同が道士のあとに続いて、家の周りを走り始めました。このあたりから、また泣き出す人たちも出てきます。
「ワー、ワー」と号泣がはじまります。
そして、「ドカン」、「ドカン」と爆竹の合図とともに、いよいよ点火されます。もともと、竹と紙でできた家なので、あっという間に火は燃え広がり、故人の遺品とともに、家は焼け落ち、黒い灰となってしまいました。
posted by 藤田 康介 at 00:00|
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