2008年05月31日

楽観できない中国の都市化問題

 中国国内を移動して思うことの一つに、小さな街が非常に多いということです。車を走らせると、しばらくすると街に到着する。さらに走らせるとまたよく似た感じの街が出てきます。

 『中国城市発展報告』を見てみると、中国全土に広がっている街の数はなんと656カ所。すごい数です。

 そして、2007年末までにこうした街に住んでいる人の数は5.94億人になりました。報告書では都市化のレベルは、中国全体で45%に達したとしています。

 農村がどんどん開発され、農地が減らされる一方で、中国国内にはどんどん街が増えているのです。
 中国の農民たちも、車が欲しいし、家電も家も欲しいのです。四川省の地震で、ブラウン管テレビを担いで避難している農民の姿が映っていましたが、彼らにとっては家宝同然の物なのです。

 

 しかし、これに伴う弊害が出始めています。報告書には、盲目的な開発、無計画な都市計画、史跡の破壊、そして自然保護地区の乱開発、模倣性の強い観光地の開発など、経済至上主義に走っている地方都市の様子が描写されていました。

 国土が広すぎて、とても政府中央も端々まで目を光らすことができないのでしょう。

 さらに、深刻な水不足が昨今大きな問題となっています。全国656カ所の街のうち、400カ所で水不足が発生し、さらに100カ所では深刻な水不足に陥っています。

 これは、中国全土のうち、人間が住むのにふさわしい環境のエリアが19%しかないというのとも関係があるでしょう。国土が広いといっても、これだけの人口が安心して暮らせるエリアは非常に限られているのです。

 内モンゴルエリアにある中国5大淡水湖の一つ、達賚湖も流れ込む3本の川のうち2本がかれてしまい、湖の面積が年々縮小、内蒙古エリアの草原を潤す役割に、黄色信号が灯っています。干ばつが人々の生活に影響を与えるだけでなく、自然環境自体も大きく変化させてきました。

 今年は黄河でも大洪水が予想されていますが、こうした自然環境破壊と密接な関わりがあるのはいうまでもありません。

posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類

2008年05月30日

鉄道事故再考

 4月28日に山東省で発生した特急列車の事故。死者70人以上を出しましたが、手足口病や四川省の地震などでその後のニュースがばったりと消えてしまいました。

 原因究明は舞台裏でされて、責任の所在を明らかにしてほしいものですが、いろいろ気になるニュースも出てきています。鉄道は、中国の移動では欠かすことのできない交通手段ですし、我々も安全であることを当たり前と思って利用しているだけに、問題点の洗い出しと情報の公開は急務でしょう。

 列車の運転士の給料が中国国内の中でも決して高くないことは前々から中国の国鉄に勤める友人たちから話を聞いていましたが、最近はなり手も減ってきていて、運転士不足となっているのが現状です。となると、どうしても過重労働が避けられなくなります。

 

 もともと中国の列車は、各局の管轄単位で運転されていて、管轄が変わると駅に止まって機関車を取り替える作業をしました。そして、その機関車を担当する運転手と運転助手は決まっていて、機関車の管理も行っていました。ところが、最近では「直達」と呼ばれる長距離ノンストップ列車の増加や、効率化の意味もあり、機関車を目的地まで走らせてしまうケースも多いようです。

 となると、運転手は5時間も6時間も勤務を続けることになり、必然的に長距離運行を強いられます。さらに、これまでは運転時は2人が運転台にたって、一人が運転を担当し、もう一人が助手席に座っている1+1方式が行われていましたが、最近では次の列車の運行に備えて、一人が運転しているときは一人は仮眠をするという体制に変化してきたいるそうです。ますます一人の運転手にかかる負担が重くなってきます。

 新華社などでも報道されていましたが、こうした勤務態勢に問題点を指摘する現場の声も多数あったようで、その中でも今回の事故でした。さらに、事故が発生したのが明け方の4時〜5時の時間帯で、運転士にとっては最も身体的にきつい時間帯だそうです。

 さらに、今回の事故ではミスが重なるもので、速度規制をインプットしておくはずのICカードに情報がインプットされておらず、さらに時速130キロという猛スピードの中、速度制限の標識を運転士が見落とした可能性も指摘されています。

 こうした中、山東省では3月24日、4月13日にも運転士が眠気のあまりに事故を起す寸前にまでになったアクシデントも報告されていました。こうした教訓は活かされていなかったのです。

 国土が広く、鉄道の規模が複雑で、さらに管理体制も社会の発展に追いつけていない。しかも利用者も多いだけに、中国の鉄道が抱える問題は深刻なようです。
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類

2008年05月29日

無事終了

 29日はこれまで実験と研究をしてきた成果を専門家に発表する日。
 いろいろ討論などもあり、家に帰ったらもう夜の8時を過ぎてしまいました。かなりくたくたで、そのまま眠りについてしまいました。

 発表はおおむね成功。30分の時間も守れたし、でも西洋医学の先生からはかなり厳しいご指摘もいただきましたが、これも大切な意見として参考にさせていただきました。

 昨今の中国での中医学研究は、単なる陰陽五行や五臓六腑などの研究にとどまらず、遺伝子や分子生物学、タンパク質などいまの西洋医学での最先端と言われるレベルまで求められ、研究する手段もますます高度化しています。

 一方で、伝統的理論の軽視が心配されていますが、この日私と一緒に発表した他の3人もやはり現代医学の路線からのアプローチでした。

 中医学の実験室的証明はかなり難しいもので、私は臨床からいかに成果を導き出すほうが中医らしいのではないかと思っています。
 なぜならラットと人間とでは、対象がまったく違うからです。しかし現在の中国の中医学では全体的に実験のほうに傾斜しています。これは仕方がないことでしょう。

発表風景


 とりあえず合格の決議書が専門家5人の全会一致で採択されましたが、これから様々な部門からの審査が続きます。

 その書類がまた膨大で、書き上げるまでもう少し時間がかかりそうです。さあ、ラストスパート!

posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類