2008年05月15日

中国風イベント

 以前、上海万博について書いた私のブログで、「中国に長くいると、こういうイベントが一般にどういう風になるのか想像がついてしまうことろがちょっと怖い」ということを書きました。ちょうど読者の方からのコメントもありましたので、少し補足します。

 私は、学部時代・大学院と上海で過ごしており、中国人学生が主催する学内のイベントにもたびたび参加してきました。もちろん、上海市や中国各地で行われる行事を体験したのも無数回あります。

 そこで、いつも感じるのですが、私としては心の底から面白かったと思えるイベントがほとんどなかったのです。もちろん、誤解がないように書きますが、これは一日本人の個人の意見でして、きっと中国の方なら面白かったのかもしれません。

 これは私個人の性格の問題かもしれませんが、どうも気まずいイベント(盛り上がらないイベント)だったら、自分も盛り上がれるようになんかしなくてはと思ってしまい、余計に疲れてしまうのです。逆に、そんなお節介を思わなくても楽しいイベントは、参加しても非常に楽しい。

 中国では、そのお節介を感じてしまうイベントが多く、参加していても疲れてしまうのです。

 それはなぜか?

 根本的に中国人の皆さんは個人性がつよく、団体で場を盛り上げようという発想がすくないように感じるのです。これがいいか、悪いかという問題は別ですが、だからイベントをしても、そのイベントに対して心底盛り上げようという意気込みが感じられない。これは、観客だけでなく、スタッフに関してもいえると思います。

 たとえば、なにかのイベントで、スタッフがちゃんと仕事をせず、ぺちゃくちゃ話をして、そして終盤となるともう仕事を半ば放棄して帰ろうとする。展示物もちゃんとメンテナンスされず、荒れ放題。ちょうど、文化祭の最終日的な倦怠感が漂うような雰囲気が、イベントの早い段階で出てくることが多いと思うのです。

 中国にいて、一般的にそのイベントがはじまるまでの盛り上がりはたしかにすごい。今回のオリンピックも、事前の盛り上がりはすごいものです。(今は地震でそれどころではありませんが)だから、本番も盛り上がるかと言えば、私は決してそうではないかと思います。

 一番心配しているのは、前述したような中国的イベントの雰囲気で終わってしまうのではないかという点です。私が日本で体験したような、スタッフが気持ちよく働き、観客にも秩序が保たれた、クリーンではつらつとしたイベントの雰囲気というのは、なかなか中国ではないのです。

 その背景として、もっとも影響が大きいのは、やはり格差の問題ではないでしょうか。

 出稼ぎ労働者たち民工さんの好むイベントと、都市部に住む市民のイベントではその性格もまったくことなります。もちろん、入場料を高く設定して入場者を選別するという方法もありでしょう。しかし、これだけ価値観が違う人が、一つの会場で盛り上がったり、一致団結したりすると言うことは、私は不可能に近いと思うのです。

 中国でイベントをする場合は、まずこの「格差」という問題にきっちりと対応しなくてはなりません。また、人口が多く、大勢が集る中、下手したら無秩序状態になってしまう可能性も十分にあるのです。
 そこには、単純にイベントを楽しむ、という次元では済まされないもっと高度な様々な問題があると私は思います。

 確かに、まだ上海万博が始まっていない現在では、我々の頭の中で様々な万博のイメージが膨らむことでしょう。とくに日本人は過去の万博経験を照らし合わせるかもしれません。さらに、万博事務局が流すプロモーションビデオなどで、現実以上の期待感があるかもしれません。

 しかし、最後には「ここは中国なんだ」という束縛が、私の空想を現実に引き戻させてしまうのです。
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類