2008年05月30日

鉄道事故再考

 4月28日に山東省で発生した特急列車の事故。死者70人以上を出しましたが、手足口病や四川省の地震などでその後のニュースがばったりと消えてしまいました。

 原因究明は舞台裏でされて、責任の所在を明らかにしてほしいものですが、いろいろ気になるニュースも出てきています。鉄道は、中国の移動では欠かすことのできない交通手段ですし、我々も安全であることを当たり前と思って利用しているだけに、問題点の洗い出しと情報の公開は急務でしょう。

 列車の運転士の給料が中国国内の中でも決して高くないことは前々から中国の国鉄に勤める友人たちから話を聞いていましたが、最近はなり手も減ってきていて、運転士不足となっているのが現状です。となると、どうしても過重労働が避けられなくなります。

 

 もともと中国の列車は、各局の管轄単位で運転されていて、管轄が変わると駅に止まって機関車を取り替える作業をしました。そして、その機関車を担当する運転手と運転助手は決まっていて、機関車の管理も行っていました。ところが、最近では「直達」と呼ばれる長距離ノンストップ列車の増加や、効率化の意味もあり、機関車を目的地まで走らせてしまうケースも多いようです。

 となると、運転手は5時間も6時間も勤務を続けることになり、必然的に長距離運行を強いられます。さらに、これまでは運転時は2人が運転台にたって、一人が運転を担当し、もう一人が助手席に座っている1+1方式が行われていましたが、最近では次の列車の運行に備えて、一人が運転しているときは一人は仮眠をするという体制に変化してきたいるそうです。ますます一人の運転手にかかる負担が重くなってきます。

 新華社などでも報道されていましたが、こうした勤務態勢に問題点を指摘する現場の声も多数あったようで、その中でも今回の事故でした。さらに、事故が発生したのが明け方の4時〜5時の時間帯で、運転士にとっては最も身体的にきつい時間帯だそうです。

 さらに、今回の事故ではミスが重なるもので、速度規制をインプットしておくはずのICカードに情報がインプットされておらず、さらに時速130キロという猛スピードの中、速度制限の標識を運転士が見落とした可能性も指摘されています。

 こうした中、山東省では3月24日、4月13日にも運転士が眠気のあまりに事故を起す寸前にまでになったアクシデントも報告されていました。こうした教訓は活かされていなかったのです。

 国土が広く、鉄道の規模が複雑で、さらに管理体制も社会の発展に追いつけていない。しかも利用者も多いだけに、中国の鉄道が抱える問題は深刻なようです。
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類