最近、不景気の関係か、中国人の友人から人生相談を受けることが多いのです。
昨日は、私が大学院時代に所属していた研究所の後輩から電話がありました。
彼女は、私と同じ科に属していて、大学院で中医学(中国伝統医学)で治療する腎臓病の研究をしていました。今は、北京の病院の研究所でも実験をしているそうですが、来年に博士論文発表を控え、また大学院修了後の就職活動に走り回っていました。
実は、いま上海市内の中医学の病院では、医師が過剰の状態が続いてて、博士号を取得しても、なかなか就職が見つからないのが現実です。逆に、博士号を持っていると、学歴が高すぎるという理由で、断られることも多いのです。
そんな中、彼女も、3級甲と呼ばれる大きな総合病院での就職を目指しましたが、どこも殆ど募集がなく、仕方がなく2級クラスの病院で探してたら、なんとかポストはあったものの、自分がやってきた研究が続けられるわけではなく、断るか否か、迷いに迷っていました。そこで、私に電話してきたのです。
現在、中国の中医大学の大学院では、研究内容が大きく西洋医学化し、なかなか伝統的な中医学に触れるチャンスが少ないというのも現状で、社会が求める中医学のニーズとかけ離れてきているというのも事実です。
そのため、中医学に対する患者の要望に、我々医療サイドが十分に答えられていないという現実に直面しています。
そういう私も、研究所で実験をしていましたが、なんとか臨床現場に居続けることに力をいれ、伝統的な中医学を守っていくべきだと努力してきたつもりです。それでも、総合病院という専門職のつよい職場にいると、その勉強成果をなかなか発揮できないのも事実なのです。
そこで、私は彼女にはこうアドバイスしました。
「もし、本当に中医学を続けて行きたいのなら、今の付属病院から抜け出て、2級病院に働くのがいい」と。
幸い、彼女がアプローチしている2級病院には私のお世話になった主任がいるので、後輩をよろしく、と話をすることぐらいは出来ます。
中医学は、臨床の第一線で使っていれば、それはそれなりに価値があるのですが、ずっと実験などに携わってしまうと、なかなかそういうチャンスもないのです。
とくに、大きな大学付属病院ではその傾向が顕著で、私の同期でも、めでたく3級病院に就職できても、臨床に行くことはほとんどなく、パソコンの統計処理ばかりやらされ、すっかりめげてしまっている人もいました。
結局、なにが一番であるか、というのは個人の価値感によって大きく変わるわけで、広く活躍する舞台が、どのように登場してくるかはわかりません。だけど、自分の方向性がぶれないように前進することは大切です。少しぐらい寄り道するのはいいと思いますが、目的地をころころ変化させることはやはり望ましくありません。
そこで、電話越しにいろいろ話を聞くと、彼女の場合ではやはり実験室でやるよりもむしろ診察室で中医学を使いたい、というのが本望なのだけど、なかなか実験生活にケリをつけることが出来ないという事情もあるのだそうです。
あるときは、思い切って環境をかえてやってみるのもいいのかもしれません。
不景気であればあるほど、また仕事が見つからないときほど、目の前の誘惑に惑わされず、自分の最終目的を目指して判断するようにがんばらなければならないと思います。
もちろん、繰り返しますが、寄り道はありですよ。私もいつも寄り道していますが、寄り道をすればするほど、本道への道が太くなってくるように思います。
posted by 藤田 康介 at 00:00|
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