中国伝統医学といえば、薬膳を思い浮かべる人も多いかと思います。実際、医食同源とも言われる中医学では、薬膳というのは非常に意義深いものになっています。
中国ではスーパーなどでも生薬が「食材」として普通に販売されていますし、いろいろなお店でも生薬を扱っています。枸杞とか決明子など「お茶」として売ることも可能でしょう。
我々日本人以上に、中国人にとって生薬とは極めて身近なものであり、違和感がないのも事実です。
一般に、臨床では多かれ少なかれ5000種類ほどの生薬が使われます。しかし、薬膳として食材扱いできる生薬はこのうち79種類しかありません。もちろん、レストランなどが薬膳として使える生薬はこの79種類の中に限られます。
ただ、最近では健康志向も手伝って、猫も杓子も薬膳というような傾向が中国にあります。特に冬場になると「補」という言葉が外食産業を中心にあふれてきます。
冬場は体を暖めるもの、補うもの、を摂取しようという中医学の養生訓からくるものですが、一部レストランでは、安い生薬に不当な値段をつけてわざと高くして販売しているところもあります。これはあまり望ましくない。「補」でよく使われる黄耆など、キロ10元ほどで手にはいるのです。
でも「補」系の生薬は、高価なものが多く、ビジネスとしてはもってこいなのかもしれません。人参や冬虫夏草なんかは典型的です。
ただ、「補」ということも、全員ができるというわけではありません。体が弱っている「虚」の人は「補」すればいいかもしれませんが、「実」の人で補うことは逆効果です。例えば、高血圧を患っていて、体がいつもほてっているような「実」系の体の人は、「補」をすることはナンセンスです。
「実」の人に対しては、中医学では「瀉」を行う必要があります。中国の養生訓でも、夏は汗をかいたり、「瀉」することを重視します。冬とは対極的です。
最低でも、そうした取捨選択ができてこそ、はじめて薬膳の本当の効果が出てくるのだと思います。でも、なかなかそこまで行かないのが現実です。
ただ、正直言って、1回〜2回食べたとしても、継続しないと意味はないです。
そう考えると、玄米食やベジタリアンでがんばっている皆さんのほうが、こうした薬膳よりはずっと効果的かもしれませんね。でも、我々中医学に携わるものからすると、中医学の知識普及という意味では、薬膳の果たす役割は大きいと信じています。
中国の外食産業も、もっと薬膳に本格的に取り組んでほしいものです。
2008年12月23日
薬膳ってなんなんだろう
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類