2009年02月25日

調理する

 中医学の外来で、とくに中国人の患者さんなどを診察すると、「調理(ティヤオリー)してほしい」という人が結構多いです。

 日本語で言うと、「調理する」とは「料理をすること」とイメージしがちですが、それ以外にも「調整する」という意味もあります。

 中医学で言う「調理してほしい」というのは、つまり端的に言うと「体の調整をしてほしい」ということで、西洋医学の病院ではおそらくあまり耳にしない言葉かと思います。

 意味的に曖昧といえば曖昧ですが、中医学的に言うと、陰と陽のバランスが云々、という話にはなるのですが、でも結局のところ体が何となくだるいとか、西洋医のところにいっても特に問題がないと言われたのに、でもなんか心配だ、みたない患者さんに多いのです。

 中医学の基本は、症状を分析して生薬の処方ができますので、西洋医学の診断結果とはまた別の次元であることは容易に想像がつきます。
 

 でも、体を「調理する」という発想は、中医学をはぐくんできた中国人だからこそ思い立つことなのでしょう。彼らの文化の一部分であることは間違いないです。

posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類

通学風景

 最近の上海は連日雨です。雨がふると、私は自宅から駅までの自転車通勤は無理でして、ここ数日路線バスの「東周線」を利用して駅に出ています。

 うちの近所である「聯洋社区」は、浦東でも有名な住宅街なので、一応日本でもよく取り上げられる「中国人富裕層」が多く住んでいます。車も、私の奈良の実家エリアではあまり見かけないような高級車がびゅんびゅん走っているのです。
 
 朝の出勤時間帯は、子供たちの通学時間帯とも重なるため、こうした子供たちの様子を観察するのもまた楽しいです。

 我が家はすぐ前にバス停があるので、歩いて3分ほどなのですが、この時間になると小学生や中学生のタクシー争奪戦が決まって発生しています。

 このエリアでは、タクシーで通学する人が結構います。まあ、上海ではタクシー料金が安いので富裕層の親からすればなんてことないのでしょうが、でも子供までがこうやってタクシーをばんばん一人で乗ってしまうのはいかがなものかと思っていまいます。相乗りだったらまだ分かりますが。。。。

 ちなみに、我が家から歩いて10分ほどのところに進才実験学校という小中学校もあるのですが、私と同じようにバス停からバスに乗った子供も、この10分を歩かずにバスで通っていました。それぐらい歩いたらいいのに・・・と思わず言いたくなります。

 上海など中国沿海部では子供の肥満問題が突出しています。最近のデータでも、沿海部での子供の肥満率は30〜40%に達するそうです。

 そりゃ、帰宅時にコンビニで買い食いしている小中学生をみると、炭酸飲料やハンバーガー、揚げ物などいわゆるジャンクフードを好んで食べる子供たちが多いこと!でも、上海では買い食いはべつに御法度ではないのですね。

 それと、一人っ子政策がもたらす親の子供の食べ物に対する認識の低さも大きな問題です。特に、母乳から離乳食へ変えるとき、子供が好きな食べ物ばかりをあげる傾向が非常に強く、この時から偏食を助長しているというとも言われています。子供が一人しかいないので、いつでも親は「最も良い、最も値段の高い」ものを買おうとする傾向があります。でもそればかりを摂取することが子供の体にとって必ずしも一番いいとは限りません。

 結果的に、最も良い、最も値段の高い」食生活が子供の偏食を助長してしまいます。

 話は脱線しましたが、通学や通勤に歩くということは非常に大事だと私は思います。忙しければ忙しいほど、歩く時間をなるべく確保し、時間の余裕を持てるように心がけたいものです。

 仕事のアイデアも、私の場合は歩いているときに思いつくことが多いです。集中して歩くことが、私にとってのストレスの解消にもなっていることも分かりました。

 リニアやら飛行機やら交通手段はますます発展しスピーディーになってきていますが、結局歩く速度が人間にとってもっともストレスを感じない速度なのでしょね。

posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類

2009年02月24日

患者と戦う糖尿病

 中医学をやっていて糖尿病に関してはどこでもよく聞かれる質問です。私も、いろいろな患者さんを診てきました。すこしでも参考になればと思います。

 ここで書く糖尿病は2型の糖尿病です。自己免疫疾患とも関係ある1型の糖尿病とはすこし違いますのでご了承願います。

 中医学(漢方)でも糖尿病についての認識は一応ありました。ただ、昔(古代)のことですし、当然1型や2型などの分け方などなく、ただ美味しい食べ物(甘いもの、脂っこいもの)ばかり食べていると「消渇」という病気になるという認識はありました。これが糖尿病に近いと考えられています。また、尿に糖が下りている場合、アリが寄ってくるというような記録もあります。昔の人も糖尿病をそれなりに認識していました。
 いずれにしろ、咽が渇く、体が痩せてくる、尿が多い、食欲がありすぎる、など症状的な分析をもとに生薬が組み立てられており、治療が行われてきました。

 その後、科学技術が発展してくると、生薬単体で血糖値を下げることができることも分かってきました。私も大学病院にいた頃、ラットを使って実験もしましたが、確かに微力ながらも血糖値を下げる生薬はあります。ということは、境界型とか言われる初期の患者さんにとっては、これは朗報で、様々な中成薬(生薬処方をベースにしたカプセル・錠剤)なども中国では開発されてきています。

 ただ、中国で販売されているこうした中成薬には、西洋医学の成分が人為的に混入されていることがあり、あの有名な「消渇丸」でさえダオニールが加えられていますので、医師の指導の下で服用しなくては、低血糖などの副作用が出てくる可能性がかねてから指摘されています。というわけで、私はまず臨床で使いません。

 また、血糖値を生薬で下げることができるといっても、サプリメントのようにその生薬ばかりを服用したよいというものではなく、例えば体を温める生薬とか冷やす生薬とかその生薬の性質とそのときの患者さんの体調に合わせて考えないといけないのです。
 そこが微妙な問題に見えますが、そのために我々医師は様々な処方を研究することになるのです。やはり、処方全体の総合的な働きが中医学(漢方)では非常に大切だと思います。

 そして、中医学を使って2型糖尿病の治療を行う場合、患者さんとの協力が不可欠です。時々「私は漢方を飲んでいるから大丈夫だ!」といって相変わらずガツガツ食べている方を見かけますが、それではいくら我々ががんばっても効果はみられません。医師の方も、患者さんと戦うつもりでないといけないのです。でも逆にそれが実行できると、一定の効果は期待できます。

 さらに忘れてはならないのは、我々がいま中国・上海で生活しているという点です。私もこのブログにも現代の中華料理がメタボ食であることを幾度となく紹介してきました。
 これはなにも私の認識ではなく、中国政府の衛生部も最近懸念し始めています。ましてや、日本にいるころ日頃あまり脂っこいものを食べていなかったはずの日本人です。揚げ物といってもせいぜい天ぷらやトンカツ程度でしょう。
 こうした日常の急な食の変化に、コントロールを逸してしまっている方も少なくありません。従って、まず会社のお昼などで出てくる食事から改善しないと、話ははじまらないことになります。上海料理の中でのコントロールです。これはかなり難しいですが、医師の側も中国の中華料理の実態についてある程度熟知しなくてはいけないと思います。

 ちなみに、上海も貧しかった頃はものすごく粗食でした。そういった話は私の義母・義父から聞くとよく分かります。交通が不便でしたので、歩くしか仕方がありませんでした。そうした時代背景が、今の上海の平均余命80歳以上という長寿都市を形成しているのだと私は思います。でも、マイカーやタクシーが普及し、ファーストフードを含むさまざまな外食産業ができてた昨今、西洋のメタボと同じようなことが発生してきます。

 やせ気味の方でも血糖値にはご注意ください。痩せているから糖尿病と関係ないのではなく、日本人の場合、むしろ痩せている糖尿病の方が少なくないというデータがあるぐらいです。

 いずれにしろ、中医学(漢方)の生薬の活用には一定の効果があることは確かです。ウソではありません。でもそれを糖尿病の治療に活用するには、やはり絶対に治すぞ!という医師と患者との決心と努力が必要です。

 中国の中医学での糖尿病治療に関しては、以前日本の雑誌、『中医臨床』で執筆しました。特に合併症の予防に使われることも多いです。

 なお、当然ですが、糖尿病の治療には海外旅行傷害保険は原則適用できませんのでご注意ください。

 以上、ご参考までに。
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類