昔の人は、そうした季節感から、その生薬の効能を連想し、実践してその効能を実証してきました。今のように生薬を分析する設備がないわけですから、せめてもの裏付けとなるのでしょうが、これがなまじっか外れていないのがすごいです。
この時期、私も患者さんによく使うのがタンポポです。生薬用語では蒲公英と書きます。
蒲公英は、根っこや葉などを乾燥させて使います。生薬の蒲公英は写真のようなものです。
蒲公英はもともとは消化器疾患に使うことが多い生薬の一つです。胃潰瘍や慢性胃炎などの治療では欠かせない生薬です。特に、蒲公英は体を冷やす性質がありますので、体質的な症状のほかにも胃カメラなどで胃の粘膜が充血して腫れている場合などが効果が高いことが多いです。さらに止痛作用もあり、胃の痛みの治療などにも他の生薬と併用しながら用います。
腫れを取り除くという作用を利用して、蒲公英は乳腺炎の治療でも蒲公英は使われます。さらに、おっぱいを出す作用もあるため、乳腺炎の治療では一石二鳥というわけです。
中医学の外科の分野では蒲公英は欠かせません。野菊や金銀花、紫花地丁などと組み合わせて、内服のほかにも患部の外に貼ることもあります。まさに、中薬(漢方薬)での消炎剤です。
春といえば、陽気が非常に盛んになる時期です。こうした陽気を体一杯あぶる蒲公英は、一種の発散するような働きを持っているともいわれています。そのため、ストレスなどで凝り固まった「肝」をほぐしてあげたり、湿や痰を飛ばす作用もあるのです。中国では肝炎や胆嚢炎の治療にも蒲公英は使われます。
ただし、もともと体を冷やす性質があるので大量に服用すると下痢を起すこともあるので注意が必要です。
でも、我々の身近でありながら、臨床では非常に役立つ生薬なので、蒲公英はすごいと私は思っています。