2009年04月05日

お通夜

 今日、日本では祖母の納棺の儀式が行われたと実家の母から連絡がありました。映画「おくりびと」の世界が、目の前に再現され、それはそれはものすごく荘厳だったそうです。60年あまり祖母が暮らしてきた家での、いままさに最後の儀式が進んでいます。
 
 そして、祖母が亡くなった日に書いた私のブログも、一緒に棺の中に入れてくれることになりました。今は亡き祖母に、私の思いが少しでも伝われば。。。。

 文章にすると、とても淡々と表現されているあの日のブログですが、でも文章をうちながら、こみ上げてくるものがあり、思わず涙してしまいました。生命あるものが、あるその瞬間に亡くなってしまう。その現実を感じた瞬間。今でも電話すると祖母が「こうちゃん」と呼んでくれるような、そんな錯覚にも陥ります。

 去年、「生まれる」という神秘的な体験をさせてもらいましたが、今年「亡くなる」という人間として避けられない事実に直面しました。
 医療の現場にいて、これまでも数々の「亡くなる」瞬間に接してきましたが、正直私自身もまだ「亡くなる」ということの本当の意味を理解しきれていません。

 でも母とも電話口で話しましたが、結局「生まれる」も「死ぬ」も同じなんだなと。そして、私もひょっとした次の瞬間にはこの世にいないかもしれないという現実を背負っているのも事実です。

 そんなことを考えると、くだらないことで時間をつぶすことがいかにバカらしいか明白です。
 今与えられた時間を、有意義なことに、最大限活かさないといけないと思いました。

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posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類

アレルギー性皮膚炎多発時期

 この時期、湿疹・蕁麻疹などアレルギー性皮膚炎、さらに接触性皮膚炎など皮膚に関するトラブルを抱えてクリニックに来られることが少なくありません。アトピー性皮膚炎も、どうもこの時期に悪化する傾向の人も多いようです。

 上海市内でも、公園などをみると様々な花が咲き誇り、動物たちも動き出しています。と同時に、アレルギーの原因となる動植物も活動を開始しはじめているわけで、これに反応する人が多いのです。
 私のスギ花粉症もまた然りです。(自分の体でスギ花粉症と中医学の関係を実証したいのですが、上海にいると発生しないんです。。。)

 中医学でも、こうした現象はまた違った言葉の表現で説明されます。特に皮膚病の場合、飲食や情緒、疲労なども原因として挙げられますし、そのほかに自然環境の気候の変化も注目されます。

 例えば、四季の中に絶えず存在する風・寒・暑・湿・燥・火なども自然界の気も人体に影響を与えます。もし、これらの気が人体の抵抗力(中医学では正気と呼びます)を超えた場合、様々なトラブルを引き起こすというわけです。

かたつむりも動き出しました


 自然界の6つの気のうち、春と特に関係があるのは、寒と風になります。また、火も影響しますね。

 春、上海エリアでは風が強く吹くのは皆さんご存じの通りです。この風が、人体にさまざまな悪さをするため、「風は六淫(風・寒・暑・湿・燥・火)の長」なんて言いますが、中国人が風を避けるのに必死なのもそういった背景があります。

 例えば、外からふく風に当たりすぎると、皮膚を乾燥させ、かゆみを増幅させます。さらに、風は体中を駆けめぐりますが、風の軽い性質からも上半身でのかゆみが増すことが理解できますね。

 さらに、風は体の中からも発生します。体の中からの風の原因は、五臓六腑の内でも「肝」がその中心となります。中医学の肝は情緒の影響を非常に受けやすいため、ストレスが皮膚のかゆみなどの原因となるのはよくあるパターンということになります。

 

 春先は、寒暖の変化も大きく、特に冬からの寒を引きずってくる場合も少なくありません。この寒も、外の環境からの寒が原因となる場合もありますし、体の中から生まれてくる寒が原因の場合もあります。
 
 寒が体を襲うと、体中の経絡が縮まり、気血の流れが妨げられ、顔色が悪くなったり、手足の冷えを助長したりします。痛みや痺れなどでも、寒が関係していることが少なくありません。一方で、五臓六腑の脾や腎の陽パワーが足りない場合も、寒が体の中から発生しやすくなります。こういったときは、生薬をつかってそのパワーを補ってあげる必要があります。

 アトピー性皮膚炎の場合、体の表面の皮膚の色が赤くなることがよく見られますが、この場合は「火」による影響を受けている場合となります。ただ、この火も一体どの臓腑のバランスが崩れて発生したものなのか、じっくり検証する必要もあります。中国人は日常的に「火旺」という言葉を使いますが、火の発生もいわゆる陰と陽などの体のバランスの崩れと深く関係があり、日頃の食べものや生薬で平衡を戻してあげる必要もあります。

 このように、バランスを取ることを中医学では非常に重視しています。一番理想なのは、生薬なども服用せず、日常の生活からそのバランスを取り戻すことです。
 となると、絶えず健康を意識し、運動や飲食の研究に自ら力を入れることが大切なのですが、それが難しければ、生薬を併用せざる終えないということになります。
 そして、抵抗力となる正気をケアしてあげて、病気にならない体をつくるのです。

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posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類

「発」を考える

 今日も様々な皮膚疾患の患者さんに出会いました。上海市内の大病院をいろいろまわってうちにたどり着いた中国人の患者さんもおられ、とても一朝一夕ではいかないケースもありますが、でもやるだけのことはやらせていただきました。

 こう書いていくと、なにか私は皮膚科の医師のようですが、中医学ではこうした科による分け方はナンセンスで、あらゆるケースに対応しなくてはいけません。皮膚に疾患があっても、皮膚そのものに問題がある場合より、むしろ体の中に問題があって、そのシグナルが皮膚に表現されてるケースのほうが少なくありません。中医学ではこのことを、「表現於外、実発於内」といいます。

 例えば、慢性腎不全の患者さんが、末期になると皮膚のかゆみを訴えられることが多いのですが、これも体の中で発生した毒素に原因があるわけで、そのことには昔の中医師たちも当然気がついていました。

 となると、皮膚疾患の場合、体の中の環境変化を極力抑える必要があります。我々の生活と直接的に関係あるとすれば、やはり「食」となります。

 中国人はよく食べものの性質に関して、「発」という言葉を使います。日本語だと「あくが強い」的な意味合いもあると思いますが、要は皮膚にできものなどができやすい食べもののことを「発物」と言います。アトピー性皮膚炎などを抑えるためにも、この「発物」を理解しておくことは大切だと思います。

 一般的に、中医学的には辛温発散作用のある食物が「発物」に属すのですが、具体的には「発熱」・「発冷」・「発風」・「発湿」・「発血」・「滞気」などに分類されます。具体的には、「発熱」グループには羊肉やネギ、白酒、ニンニクなどが入ります。「発冷」の代表選手は柿でしょうか。エビや蟹類は「発風」グループで、かゆみなどを引き起こします。「発湿」には糯米や米酒などが入ります。蕎麦アレルギーなども言われますが、これらの食品は「滞気」グループです。大豆製品も「滞気」になります。豆類を食べ過ぎると、ガスが溜まりやすくなるのも、このあたりと関係があると思います。ヤマモモや胡椒などは、「発血」グループになります。

 そのほか、皮膚疾患に影響を与えそうなのがキノコ類で、食べ過ぎると体内に「風」を発生させ、頭痛などの原因になることもあります。野菜類だと、ほうれん草やタケノコ、ニラ、ネギなどが注意ということになるます。

 これから夏に向けて、皮膚病に対する生薬の使い方も変わってきます。ただ、夏場だからこそ、体に熱を注ぐような食品は少なめに摂取することも大切です。真夏の暑い時期に、羊肉を沢山食べたり、焼き肉などを食べ過ぎたりすることは、皮膚の保護のためにはナンセンスです。

 その代わり、緑豆など体の火照りを冷まし、体内の湿気を取り除いてくれるような食品を摂取することは良いと中医学ではいいます。

 昔の人の知恵が漢方・中医学には詰っています。私もさらに研究を進めてみたいと思います。

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posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類