昔、総合病院に居たときと比べると、アトピー性皮膚炎を治療する機会が非常に増えています。やはり、漢方や中医学からイメージされる方が多いのも原因かと思います。
でも、数のノルマが課される総合病院では、なかなかじっくりと患者さんの声を聞くことができず、逆に今の方が診察に腰を落ち着けられるようになりました。
特に、以前の中医薬局では嫌がれた生薬を粉にしたり、炒めたりする「炮製作業」もここではかなり自由にやらせてもらえるため、よりオリジナルに近い処方が再現できていると自負しています。生薬の薬局での加工は、薬効に直接影響してくるため、非常に大切だと私は考えます。
アトピー性皮膚炎の場合、症状の改善がみられる方もおられる一方、正直に書くと百発百中であることはなかなか難しいこともあります。皮膚疾患は、特に治療結果が明白に出てくるため非常に明快です。そこで日頃さまざまな患者さんから届くメールも分析し、ベストの処方を考察するようにしています。
でも、もちろん患者さんとは時に音信不通になってしまうこともあり、職業柄非常に気になってしまいます。遠くに転勤になってしまった方もおり、もしまだ私のことを覚えておられましたら、ぜひご一報ください。
もちろん、時には私の力不足も関係あるわけですので、一層研究に力が入ります。
私の実家では、今は医学生である弟がアトピー性皮膚炎と喘息をもっていました。そんなこともあり、私自身もわりと小さい頃からステロイドなどの言葉には接していました。また、母の苦悩も見てきており、中医学や漢方でどうにかならないかという問題提起はずっとありました。
結局、弟の場合はそういった中医学や漢方に巡り会うチャンスはあまりなかったのですが、私もこの世界に入り、事の重大性を身に染みて感じるようなったのです。
前置きが長くなってしまいました。
アトピー性皮膚炎の治療で欠かせない生薬の一つに石膏があります。特に、皮膚が赤く熱を持っているとき、胃に熱があるときなどは必ず使います。今日は私の生薬コレクションに石膏が見あたらなく、写真がないのですが、外見はほぼ真っ白の石の固まりです。
ただ、石膏はそれだけ使ってもあまり効果が発揮されません。昔の人は、知母という生薬と一緒に使うことを勧めました。実際、有効成分が沢山でてくるのも知母と石膏の黄金の組み合わせということも現在分かっています。
生薬で使う石膏は、天然物の場合、硫酸カルシウムを主成分としますが、そのほかに様々なミネラルを含みます。生薬として煎じるときはしっかりと粉々にして、じっくりと煎じます。外用でも使いますが、その場合は加熱して無水の状態にします。
熱を冷ます力が強く、それが肺・胃の経絡に関係があるので、高熱時の解熱作用や腫れに対する鎮痛作用があるとも言われています。
この生薬を実際に使ってみて感じるのは、比較的胃に対してもマイルドに働くという点です。さすが、胃の経絡に関係がある生薬です。多いときは60グラムぐらい使いますが、日本の江部 洋一郎先生は、100グラム以上使われます。これには中国の中医師もびっくりでしょう。
いろいろな「医案集」をみて石膏の使い方を研究すると、医師によってかなり違いがあり、興味深いです。ただ、どの処方でもうまく石膏が応用されており、アトピー性皮膚炎の治療では、ポイントの一つだと思います。