アトピー性皮膚炎を治療するとき、生薬で作った外用薬も併用することが多いのですが、そのときに欠かせない生薬に青黛があります。中医学の世界では、非常にポピュラーで、こっちの中医薬局にも大抵あるのですが、この粉末をクリニックで実際に作るのはすこし厄介なので、普通は薬局から仕入れます。
中身は一般にアイの仲間など3種類の薬草の色素を生薬として使うので、色は写真のようにすこし変わった色をします。中国では昔から使われている典型的な生薬で、それこそ藍の染め物にも使えるのです。むしろ、今では染め物の染料としてのほうが有名かもしれません。
主な効能は、熱を冷まし、毒を取るいわゆる清熱解毒という作用。しかも、血に熱が入り込んだり、腫れを取ったりする体を冷やす系の生薬でもあります。
私は青黛を天然のシッカロールとも呼んでいます。あせもの予防などに、うちの娘にも時々使うことがあります。それこそ、口内炎などにも使えます。もともと服用しても毒がない生薬ですから、口の中に入れても安心です。
この青黛を使って、さらに石膏など他の生薬を混ぜ、その上細かく粉にした青黛散も私は臨床でよく使います。
これは、処方を書いて、さらにうちの薬局のスタッフにお願いして加工してもらう手間がかかるのですが、旨く使えば急性の湿疹などにも効果を発揮します。外用では、乾癬の治療にも使います。皮膚科には欠かせない生薬です。
最近の研究では、癌治療時の抗癌剤による副作用時に使ったり、鎮痛剤として使うこともあります。ますますその応用範囲が期待される生薬でもありますね。
一般的にアトピー性皮膚炎で、皮膚が真っ赤になっている状態では、熱が血に入り込んだ状態であることが多く、体を冷やす生薬で攻めことが多いのですが、実はこれで攻めすぎるのもよくありません。逆に適度に体を温める生薬を入れることで、症状が改善した症例をつい先日経験しました。
この患者さんの場合、顔に出てくるタイプでしたが、しばらく生薬を服用され、その結果、生理がほぼ正常に戻り、基礎体温のグラフも理想な形に近づいてこられました。それまでは基礎体温がかなり低かったのです。
そこで、皮膚や血の熱を取る方向に生薬を配合し、一方で腎・脾・肝を温める肉桂などをほんのすこし入れると、冷えが改善し、アトピー性皮膚炎特有の皮膚の赤みも改善しました。今後このまま安定されることを願います。
女性の場合、生理が改善されると、中医学の場合、余計な熱も血とともに出せるため、症状改善に非常に都合がよくなります。皮膚科と婦人科の問題となり、なかなか総合的に診察しにくいのですが、中医学ではむしろ一緒に考えた方が解決しやすくなります。そして、患者さんご自身の努力も非常に大切です。
せっかくの週末。
今日も色々中医学の本を読みあさり、患者さんの顔を思い浮かべながら、もっと何かいいアイデアがないか思いめぐらしました。
100人いれば100通りの処方が出てくるのが中医学・漢方ですから。
ただ、生薬外用薬には決定的な欠陥があります。それは、色がつくことです。これだけは天然素材を使うだけに仕方がないといえばそれまでですが、もっと便利な方法がないか研究する必要があります。
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