2009年04月21日

大気汚染再考

 私のブログでも、情報があれば中国の環境問題について紹介しています。皆さんと情報を共有したいという意図からです。
 2008年6月に書いた肺が真っ黒けに関して、よりつっこんだ話がありました。中国のメディアが発表しているよくないニュースですので、信憑性はそれなりにあるとも思います。

 折しも、上海モーターショーで、上海人の自動車購入熱は高まっていますが、自動車メーカーに儲けさせるほど地球の資源や環境には余裕はないし、人間の健康へのダメージが大きい。でも経済を発展させるのには、そんなことも言ってられないのが現実ですよね。

 上海でも3月〜4月にかけてキリやスモッグ(煙霧・Haze・中国語では灰霾)の日が非常に多く、特に朝のもやったような状態の日が少なくありません。中国の南の広州ではその日が増えており、2009年4月11日以来、スモッグの日がほぼ1週間続いるという状態です。

車・車・車・・・・・・・


 そこで、中国でもPM2.5と呼ばれるサイズの微粒子濃度の測定を行うべきだという声が高まってきています。PMとはparticular matterのことを指し、例えばPM10以下なら呼吸器や鼻から吸い込まれる粒子、PM5以下なら気管支にも行ってしまう粒子、PM1以下なら肺胞にまで行ってしまう粒子の大きさとなります。

 このうち、PM2.5クラスなら病原菌も運ぶことができますし、それが原因で体内で炎症も発生し、これより小さければ体の血液にまでも入り込むことも可能です。これが体に様々な悪さをすることになります。最近の研究で、これらが広州エリアでの皮膚ガンや肺ガンの発生率増加と関係があるといわれるようになってきました。

 中国の呼吸器内科の権威、鐘南山教授も、広州・珠海・香港・マカオで比較すると、広州での肺ガン発生率が最も高く、90年代の27.5/10万の発生率が、今ではその倍にまで高まっているということも分かりました。もともと肝炎による肝臓ガンがガンのなかで最も多かった中国で、今や肺ガンがトップに躍り出るようになりました。

 中国の場合、喫煙によるリスクも高いのですが、これに関しては昨今の禁煙ブームにより、むしろ喫煙者は減少傾向にあるのに、中国の肺ガンは一向に改善されないのです。

 最近の広州の研究で、肺ガンの発生率とスモッグの発生に一定の関係があることも分かってきました。さらに、このスモッグの天気が積み重なり、7〜8年後時間がたつと肺ガンも増える傾向にあることも分かりました。今すぐ、というわけではないですが、この10年での上海での車の増えようをみると、上海での大気汚染問題もむしろこれからなのかもしれません。

 いずれにしろ都会で発生するキリもスモッグも人体に有害であると言うことには変わりません。我々ができることは、そういった汚染源からなるべく遠ざかり、空気の悪いときには外に出ないようにする程度でしょうか。

 「灰霾」という言葉は、スモッグの意味をもつ新語でもあります。
 事務所の引っ越し先は、高架道路・メインストリートのそばを外さないと。

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posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類

もじゃもじゃ

 この写真を見ただけなら、なにか分からないかもしれません。でも、結構身近に眼にするものです。このモジャモジャは何でしょう?

 ずばり、「トウモロコシのヒゲ」です。中医学・漢方では「玉米須」といいます。

 この生薬は、以前は私も殆ど使いませんでしたが、私の師匠の陳以平教授がよく使われ、私も勉強しました。

 主に利尿作用とか熱を排出し、肝をしずめる平肝などの作用もあります。浮腫にも使えますので、ネフローゼにも処方することがあります。腎臓内科ではよく使われます。

 利尿作用+平肝とくれば、高血圧にも使われます。トウモロコシのヒゲの場合、性質が比較的穏やかなので、一般的に体の冷やす作用の多い血圧を下げる作用のある生薬のなかではすこし特異とも言えます。

 トウモロコシのヒゲは、もちろんお茶としても使えます。血糖値を下げるともいわれていますので、そういった意味でも重宝します。

 そのほかに、止血作用があるところから、尿路結石や血尿の治療にも使えます。

 では尿酸値も下げられないか?実はラットを使って以前研究したこともありますが、見た目は数値は下がりましたが、残念ながら統計学的には有意義ではありませんでした。今後の研究が待たれますが、なんらかの作用はあるように思えました。

 しかし、欠点もあります。なんせ、軽い生薬ですので、量をコントロールできないと、煮つめるときにとんでもないことになります。それこそ、煎じ鍋に入りません。よって、お茶にして併用するのも悪くない選択肢だと思います。

 生薬はとにかく使える部位があれば、何とかして使わなければなりません。一瞬無用に見えるトウモロコシも、こうやって我々の貢献してくれるのでした。

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posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類

白い肉を食べよう

 経済の発展に伴って、中国で急激に増えている成人病。おなかが出ている人が上海の街でも普通にみられるようになってきましたから、現状が容易に推測できます。

 中国疾病予防コントロールセンターのデータでも、中国人のカロリーの摂取量は、ここ二十年で倍に増加している一方で、野菜の摂取は1992年の一人平均400グラムから、現在では270グラムにまで減少し、穀物の摂取量も20年前と比較すると21%の減少となっています。それでも、日本人と比べると、中国人の食べる穀物の量はまだまだ多いと思うのですが、それ以上に肉類の摂取が多いと言うことになります。

 一方で、中国では分かっているだけも1.6億人の高血圧患者と4000万人の糖尿病患者を抱えています。実際に、血圧や血糖値をはかったことがない人がまだまだいるので、この数は氷山の一角にすぎないと思います。

 でも、我々在中日本人はこういった食文化のなかで、いままさに生活していますので、日本以上に食生活に対して注意を払う必要があるということは言うまでもありません。

 食文化から、動物性タンパク質がどうしても多くなる中国。さらに経済の発展とともに、赤みの肉を食べることが多くなったように思います。肉と言えば豚肉というこれまでの上海人の食生活から、牛肉もどんどん食べられるようになってきました。上海の町中に焼き肉店が急増しているのも理解できます。

 アメリカの研究で、54.5万人の50歳〜71歳の中高年を調査したところ、10年間で7万人が死亡しました。これはアメリカ人に対してのデータです。

 このうち、毎週牛肉を0.14キロ未満しか食べなかった人と、毎週牛肉を0.79キロ食べた人を比較すると、男性ではガンによる死亡率は22%高まり、心臓病による死亡率も27%高まったといいます。女性の場合は、ガンによる死亡率は20%高まりますが、心臓病による死亡率は50%も高まります。

 そこで、アメリカ国立癌研究所では、ニワトリや魚などの白い肉を摂取するように呼びかけていますが、なんせ牛肉大国のアメリカのこと。この意見に対して、批判的な人も多いのです。

 では、野菜・果物ばっかり食べたらいいのか?というとそうでもなく、結局はバランスということですね。日本の厚生労働省が行った2万人の40〜69歳を対象にした調査では、12年の追跡調査で、野菜の摂取量が多い人は肝臓ガンのリスクは下がったものの、果物の摂取が多い人は逆に肝臓ガンのリスクが高まったといいます。

 この理由として、果物に含まれる大量のビタミンCが、鉄の吸収を促進し、肝臓の負担を増加させるというもの。肝炎などをもっている方は、野菜はしっかりと食べたらいいものの、果物の摂取は摂取しすぎに気をつける必要があるようです。

 ところで、魚をたくさん食べると知能にいいという研究はスイスで行われていました。4000人の青少年を対象とした調査で、知能テストの高得点の子供は、魚の摂取と量と統計学的に有意義な差があったようです。これによると、15歳のときに平均毎週1回魚を食べると、3年後には知能テストの成績が6%UPし、これが1回以上であれば、11%もUPするというのです。魚に含まれているオメガー3、オメガー6と呼ばれる必須脂肪酸が子供の知能発達に関係があるのでは?という推測がされています。

 でも、個人的に、魚を食べる方が、肉を食べるよりも頭を使いますよね。身をきれいにはがさないといけないし、骨にも注意しないといけません。さらに、魚には牛肉などと違って、様々な品種を楽しむという喜びもあります。

 でも、上海ではなかなかいい魚が手に入りません。もちろん、昔よりはずっとよくなっているのですが、それでも種類や鮮度からいえばまだまだ市民の身近な存在ではないのです。

 結局は、何事も「中庸」が一番。中医学ではとくにこの「中庸」を大切にします。
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類