今日は、日本のある自治体向けのレポートを執筆していたのですが、いろいろ資料を整理して、改め上海の高齢化の問題の深刻さを実感しました。
確かに、上海の街を歩いていても、高齢者に出くわす機会が非常に多いのですが、流入人口の増加でその実態はなかなか目にとまりません。
しかし、上海人だけに限ってみれば深刻で、今後、年金や医療保険などの財源不足を補う必要があるようですが、ただそれなりに対策を考えているようです。これがこのレポートのテーマでした。
65歳人口が7%以上を占めるようになったら高齢化社会と定義されているのですが、上海の場合はすでに1979年にこの割合を超えていました。そして2008年に65歳人口が15.4%を越え、200万人に達しました。このうち、80歳以上がすでに53万人に達していると言うことです。
この調子でいくと、2020年には65歳以上の人口が30%を越える見込みです。マスコミでは、上海人の三分の一が65歳以上と出ていましたが、そうなると尋常ではありません。
上海市は、高齢化のスピードが世界一といわれている中国の中でも、さらに高齢化のスピードが速い地区であるということになり、ある意味いろいろ参考になる事もあるように思います。
医学の分野でも、高齢者の予防医学の分野で伝統医学(中医学)を取り入れ、高齢者が健康に暮らせるように様々な試みを導入しています。妻はローカル中医医院の中医科の医師ですが、ここでも高齢者に対しての訪問診療や、中医学的なアドバイスを行っています。
中医師ははっきりいって儲かるような職業ではありませんが、しかし患者の経済的負担を低減でき、病気を未然に防ぐという発想が医療費の削減に貢献できるという発想はすばらしいと思っています。これは中医学ならではの特色なのです。
さらに、2009年7月より上海戸籍を持っていない地方の都市戸籍取得者も、上海人同様の社会保障制度に加入できるようになりました。雇用主からすると大幅な人件費アップとはなりますが、今まで満足な社会保障制度もなしに労働者を雇用していた状態こそ問題があったわけで、少しでも国際的な基準に合致してきたというのは、むしろ喜ばしいことです。これで、我々外国人も加入できればもっといいのですが、さすがにそこまでは多少時間がかかりそうです。
こうした制度の背景には、やはり上海の高齢化問題と深く関係があるわけで、上海の社会保障制度を支える新たな担い手が必要とされているとも思います。今までのように、上海戸籍を持っている上海人だけの特権が、少しずつ地方出身者にも開放されてきているように思います。
ただ、日本のようにたとえば国民健康保険の保険証が全国で使えるというところまではまだまだです。とりあえず、上海の公的医療保険も上海とその周辺の都市で使えるようにならないか、制度の改革が急ピッチで進められています。
でも、タクシーやバスの運転手を見ても、中年以上が殆どですよね。上海戸籍しかつけないこうした仕事をみると、上海の高齢化の深刻さを実感できます。
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高齢化に悩んでいるのは日本だけではありません
posted by 藤田 康介 at 00:00|
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