中国長江デルタエリアでも有名な長寿の街に、江蘇省の如皋という地区があります。
決して山の中にあるような田舎でもなく、長江の中流に位置する街です。だけど100歳以上の人口が非常に多いこのエリアでは、中国国内での長寿問題に関してよく研究されています。そこから、さまざまな生活習慣の特徴が分析されていました。
その分析結果は、我々日常生活でも活用できると思うので、ご紹介します。
まず、高齢者の多くは、ベジタリアンではなく、むしろ肉も魚もバランスよく食べるという人が多いようです。完全なベジタリアンはほとんどおらず、動物性タンパク質は魚と卵が中心ということです。
さらに、蜂蜜・牛乳・鶏卵・棗を摂取している人が多いことも分かりました。棗、いいですねえ。私も大好きです。生薬茶にもよく使います。
そして、主食は雑穀がメインなのですが、面白いのが朝晩はお粥で、お昼にご飯を食べることが多いようです。どうやら、このあたりの食文化がそのようで、トウモロコシなどを混ぜたお粥を毎日のように食べると言うことです。夜にお粥というのは、私はすこし真似できないかもしれませんが、でも私の周りの中国人高齢者にもお粥が好きな人が多いし、上海人の私の妻も麺よりもお粥の方を好みます。
さらに、大切なのが「新鮮」な野菜を摂取するという点。
仕事が忙しくて、時には買いだめををしてしまうことが多い私ですが、そうした食べ方は、栄養価を落とすだけでなく、野菜そのものが持っている、いわゆる「薬効」もダウンさせてしまうというのです。冷蔵庫に2日間保存しておくだけでも、こうした野菜本来が持っている「抗ガン作用」や「殺菌作用」の力を落としてしまうわけで、如何に新鮮な野菜を食べることが大切かが分かります。確かに、取れたて新鮮な野菜を食べることは非常に大切です。
もう一つ、このあたりの人が大切にしている生活習慣に、「足浴」が挙げられています。特に、冬場はお風呂に入るよりも、「足浴」を重視するそうです。これは興味深い。
ご存じの通り、中医学では冬場の「陽気」を大切にします。年齢が増してくると、体の中の気・血が不足しがちになり、お風呂に入りすぎてしまうとこうした「気・血」を消耗しやすくなるため、むしろ足浴の方がマイルドに体に効くと考え方です。
足の裏にはたくさんのツボがありますし、お湯でこれらのツボを刺激すると、足だけでなく体全体の血液の巡りがよくなり、新陳代謝が高まるというのです。そのため、このあたりの公衆浴場には熱めの足浴場が多いと言われるのも納得できます。
生薬を足浴のお湯に混ぜるのもよく行われますが、そうしたときは、自分の症状(慢性疾患)にあわせた処方を組み合わせるともっと効果的です。もし、日本だったらさしずめ天然温泉を使って足浴できますが、継続することは非常にいいことですよね。
そうしてもう一つなるほどと思ったのは日光浴。中国では大人も子供の日光浴をしている姿を公園などでよく見かけます。太陽にあたることで、五臓六腑の肺の働きを高め、病気にならない抵抗力をつけようという目的もあります。
また、如皋の老人たちは、背中を向けて日光浴をすることを好むそうです。これも中医学的にも理にかなっています。陰と陽を考えたときに、背中側は陽になりますし、最も陽を感じやすいところということになります。
だから、逆に、冬は背中への按摩をあまりしないということです。冬は陽気が発散しやすいので、背中への按摩をしてしまうと、せっかく背中に蓄えた陽気が逃げてしまうからです。
そして、最後に。
如皋でも、やっぱり高齢者も含めた家族みんなでのつきあいや、家庭内の親睦を大切にするそうで、高齢者の1人住まいなどは社会的ストレスも多く、できるだけ避けるべきだという考え方もあるそうです。
長寿の理由の一つに、遺伝子などの原因も考えられますが、それは全体の四分の1程度の影響に過ぎず、大切なのは生活習慣、飲食、水質、心理状態、空気など人間を取り巻く様々な環境が大きな影響を及ぼすということも忘れてはいけないと思います。
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その地域が残す伝統は、大事に守っていきたいですね。
