2012年02月17日

漢方VS中医学の構図はよろしくない

今日から東京医科歯科大学で始まった日本統合医療学会の国際シンポジウム「統合医療におけるがんの予防と治療」ですが、午前中は通訳なしでの英語でのシンポジウム、午後は日本語で行われました。午前中は上海復旦大学附属腫瘤医院の劉魯明教授など、海外からの先生からの報告の他に、米国NIHのJeffryD.White先生による米国の統合治療(CAM)に対する取り組みも紹介されました。米国では、生薬を使った治療へ、科学的エビデンスをつけるための研究が進められていますが、近年、中国の台頭で、中国との共同研究プロジェクトも進んでいるようです。

 上海の劉教授の、中医学を使った膵臓癌の治療は、西洋医学ではほぼ0に近い5年生存率を7%程度にまで引き延ばしているという興味深い報告もありました。事実、早くから中医学(漢方)を導入し、抗癌剤と併用すると、抗癌剤だけよりも生存率が変わってくることを強調されていました。

 日本統合医療学会のシンポジウムは、毎回、日本からも世界的な権威の先生が参加され、非常に勉強になります。そういえば、以前は養老孟司先生も講演されました。今でも印象に残っています。


肺癌の免疫療法や、システム分子医学の癌治療への応用など、興味深い最新のテーマのほか、マルチオミックス解析によるシステム病態学的個人化医療も、今後統合医療を語る上で大事な役割を果たすことでしょう。特に、東京医科歯科大学の田中博教授が話された、システム分子医学の方法論は、今後の癌治療において新しい方向性を示されました。

 統合医療では、様々な分野の先生方と交流を深めることができます。今回のお昼は、本物のオリーブ油にこだわっておられ、健康に活用されているオリーブおばさんこと橋詰満子先生と昼食を一緒にさせていただきました。オリーブのお話、楽しかったです!

 午後の私にとっての目玉はなんと言っても、「東アジアの補完医療」のセクション。日本漢方サイドからは、以前慶応大学でお会いした慶応大学医学部漢方医学センターセンター長の渡邊先生、前回のシンポジウムでもお話しされたがん研有明病院消化器内科部長の星野先生がご登壇されました。星野先生とは、前回の東大でのシンポジウムで日本漢方の素晴らしさを私に熱く語られたことを強く印象に残っておりました。

 一方で、中医サイドでは、中医学をつかった癌治療で有名な小高修司先生が講演されました。もうかなり前から中医学を日本に広められた功労者の一人です。

 十全大補湯などを使う渡邊先生や星野先生の漢方とちがって、小高先生は案の定、まさに我々が中国でよく見かけるお馴染みの処方。思考法の違いは歴然です。

 どちらがいいというわけではなく、本来はどちらも特色があるといった感じですが、小高先生の経験に基づいた弁証論治と滞りの改善を目指す生活習慣の改善など私自身が共感することはいろいろありました。さらに、中医学では時間に追い立てられるような診察はやってはならないなど、医師として当然の心得をお話しされ、我々若い医師にとっては襟を正して伺いました。小高先生には、銀座で開業されている頃、ご挨拶に伺いました。あった瞬間に、「尿蛋白に効果のある生薬は?」と試験されたことは今でも覚えています。


御茶ノ水駅前で食べたお昼。おいしかった!


 漢方サイドの先生は、中医学のことを「山のように生薬を出して」と皮肉っておられましたが、中医サイドからすると漢方の癌治療の道筋は全体的に「補剤系」が多く、「毒」に対応出来ていないという指摘。腹診を重視する漢方に対して、脈診や舌診を多用する中医学。このように違いが沢山あるのです。こうした討論は、私は東洋医学学会や日本中医学会でももっと行われるべきだと思います。お互いを理解しないと、先に進めないからです。

 ただ、このシンポジウムでは大会長の東京大学名誉教授渥美先生が締めくくられましたが、中医学も漢方医学もお互い源流が同じだけに、それぞれが特色を発揮し合って、日本漢方と中医学が融合した新しい医学が日本で作られるべきだというご意見には、大賛成です。漢方VS中医学の構図ではなく、本来は患者さんに一番利益が多い方法に決着すべきなのです。治療は患者さんが納得できて効果がなければいけませんから。そのためには、専門家だけでなく、現場の医師こそがお互いがお互いの勉強をしなくてはいけません。

 懇親会では、日本大学医学部の酒谷薫先生とお話できました。今度、上海でお会いすることにもなり、こちらもどういう展開になるか楽しみです。そして、最後には大会長の渥美先生ご夫妻ともお話できました。渥美先生もご高齢にかかわらず、まだまだ精力的に活動されており、いつもオーラを感じさせていただいています。

 上海で17年も途切れることなく中医学を続けることができたその成果を、そして合法的に中国で中医学の診察ができる数少ない日本人の一人として、これらの知識を使って、世の中に少しでも役立てたいと決意して、雪降る東京を宿に戻ったのでした。

 すばらしく充実した1日でしたが、明日の大会も興味深いテーマが目白押しです。今晩は興奮して寝られないかも。(笑)


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【連絡】1.1月18日より中医クリニックは拡張移転しました。新しい住所は上海市中山西路1602号(×柳州路・徐虹北路)宏匯国際広場B座101室です。また土曜午後診察もはじまりました。週末診察は土曜日が午後・夜、日曜日が午前・午後になります。地図はこちらです。
2.日本での学会参加・講演会発表のため、2月16日午後〜19日まで休診します。
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類

2012年02月16日

東京神保町にて投宿

 今回は、気分をかえてJALで成田空港から東京に入りました。MacBookAirをお供に初めての日本行きです。

 午前中は中医クリニックで診察。午前11時ごろに初診の予約が急に入ったのですが、出発ギリギリになると、肝腎な問診が十分にできないので丁寧にお断りさせていただきました。申し訳ございません。初診は、その後の治療方針を決める上で極めて重要なので、ご理解いただければと思います。中医学や漢方といった伝統医学は、どうしても西洋医学よりも患者さんとの交流に時間を必要とするので、1日で沢山の患者さんを診察するのは難しいのです。

 その後、浦東国際空港までクルマを飛ばす。幸い、お昼前だったので渋滞もほとんどなく、予定通りの時間に到着しました。東方航空と比較して、JALのカウンターは人もまばら。助かります!

 やはり、中国人の団体旅行のグループは、MUなんでしょうね。

 安全検査のお兄さんの流ちょうな日本語を聞きながら、浦東空港のサービスレベルもあがったとつくづく感じます。

 JALで移動すると、飛行機に乗るとそこは日本の感覚。ビジネスマンでかなり混んでいて、さすがにこの時期ファミリーは殆どおらず、機内にはなにかしら重苦しい雰囲気が。上海ー東京はまるで新幹線ですよね。

 フライトはおおむね順調。

 東方航空のように、離陸したらずっとシートベルトサインがつけっぱなしではなく、ご丁寧にもメルトサインがついたり消えたり。さらに、「何分後に何分間揺れます」といった放送があったりすると、すこし身構えてしまいます。。。ところが、実際は揺れなかったり。とにかく芸が細かい。

 私のとなりのおじさんは常連さんらしくて、名前で呼ばれていました。これも常連客獲得のためのJALの戦略ってどこかで読んだことがあります。

 私は、映画「はやぶさ」を楽しむも、結局2時間程度のフライトでは最後まで見ることができませんでした。帰りに見られたらと思っています。でも、機内食に出てきたモンシュシュのプリンは美味しかった!

手を振ってお見送り


 成田空港では、いつもの通り入国の長い行列。外国人も日本人も。。。。

 幸い、指紋で入国できる自動化ゲートは空いていたので、そっちへ直行しました。一度登録したらいいだけなので、お勧めだと思います。

 空港からはスカイライナーに乗って、上野駅へ。成田空港周辺は、うっすらと雪景色でしたが、上野駅も雪が舞っていました。非常に肌寒い東京です。
 
 タクシーの中で、実家へ電話。日本は他人に迷惑にならないか気になるので、携帯電話が使いにくい。その点、タクシーだったら大丈夫ですよね。

 成田空港に着いたときから気がついていたのですが、どうもイライラしているおじさんたちが多く、舌打ちの音をよく耳にします。飛行機で私の横に座ったおじさんも。なにか不愉快なことがあったのだろうか。いつも見えない重圧感を感じます。根本は、若者が少ないことに原因があるのだろうか?
 
 さてさて、今回は、会議が東京医科歯科大学であるので、このブログにもたびたび登場している神保町のいつも宿に宿泊です。ここは部屋が大きくて、風呂とトイレが別々なのが気に入っていて、しかもお手頃な値段。文教エリアに位置する落ち着いた雰囲気なので、部屋で仕事するのにももってこいです。今回の滞在では、ここを拠点に東京を動きます。

 明日、明後日が学会です。どんな展開になるのか、楽しみです。

 いつもネットなどで論文は拝読していても、リアルで会うのでは印象も違います。上海では、国際会議も増えてきたけど、まだまだその質には問題有り。その点、日本は楽しいです。
 自分自身の医学の知識を充実させるためにも、さまざまな専門家と交流できたらと思っています。それが、上海に戻った後、自分自身の中医学の臨床に活かせることができれば。

最近は成田エクスプレスより、スカイライナーを使うようになりました


 1時間の時差があるので、今日は上海モードで、もう少し仕事をしてから寝ることにします。

 本来は、もう少しいろいろなところを初日にうちに行きたかったのだけど、神保町界隈では本屋も夜8時には閉店してしまうので、ちょっと残念。上海は、夜10時までが標準的ですからね。


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【連絡】1.1月18日より中医クリニックは拡張移転しました。新しい住所は上海市中山西路1602号(×柳州路・徐虹北路)宏匯国際広場B座101室です。また土曜午後診察もはじまりました。週末診察は土曜日が午後・夜、日曜日が午前・午後になります。地図はこちらです。
2.日本での学会参加・講演会発表のため、2月16日午後〜19日まで休診します。



今時珍しい、エレベーターの乗り方の説明とホテルロビーにあった雛飾り
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類

2012年02月15日

16日〜21日まで東京です

 おはようございます。

 昨夜は、日本から「ダニ捕りロボ」でお馴染みの日革の渡辺社長と会食。ダニはアレルギーとも深い関係があり、画期的な製品を開発されておられます。アレルギー症状の改善になにか活用できないか、社長の探求は続きます。春にOPENする上海南京西路の東急ハンズにも製品が登場するようです。

 そして、明日16日から東京です。午前中は診察を行い、午後の飛行機で飛びます。
 
 16日〜18日は東京医科歯科大学で開催される日本統合医療学会の国際シンポジウムに参加してきます。テーマは、「統合医療におけるがんの予防と治療」で、漢方分野での先生方の発表があり、馴染みの先生方も多く、非常に楽しみにしています。
 近年、がん治療の分野で中医学や漢方を使われる方が増えてきており、統合医療の立場から、現在の動きを勉強してこようと思っています。

 19日は、千葉県へいってミニ講演会です。詳しくはこちらをご覧ください。無料で参加できますが、会場が狭いので予約が必要です。

 20日は出版社などとの打ち合わせがあり、夜は十何年ぶりかにある恩人に会います。私が一人で中国留学を決めたときに、大きなアドバイスを最初に頂きました。上海で活躍をし続けてはや17年。こうした人たちに囲まれながら、私の今があります。

 感謝、感謝です。

 
 

 私は、日本で中医学を普及させるなんて大それたことは考えていません。しかし、こんな方法もあるんだということを知って頂ければ、生活の質がもっと高まるのではないか?と思っています。時間が許される限り小さな活動もコツコツやっていきたいと思っています。
 
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