うちの中医クリニックは、上海でもまだそう数の多くない中医学専門のクリニック(門診部)です。そのため、クリニックの運営にも中医学ならではの工夫が必要で、スタッフの看護師にも中医学の技術と知識が求められます。中医系の大学や病院では、そうした技術を講義したりします。仮に、消毒一つにしても、中医学ならではの事情があり、そうしたやり方を院内でトレーニングしていますが、そもそも根本的な問題として、上海市の看護師の数がたりないという背景があります。
上海には現在5.59万人の看護師が登録されています。これだけみると、ものすごい数のように見えますが、衛生局に登録されている医師の数は5.13万人です。その結果、医師と看護師の比率は1:109とほぼ同数という皮肉な結果になっています。本来は、1:2ぐらいが理想だといわれています。
看護師にかんして見ると、うちの中医クリニックでも、上海籍の看護師はほとんどいません。上海では一般的に、看護師の仕事はきつく、相応の報酬がもらえないというのが理由だと考えられていて、地方からの人たちで、上海の病院の看護の仕事を賄っているのが現実です。私がこちらの大学病院に所属していたころの若い看護師たち(大部分が上海人)の多くは、残念ながら今は一線を離れています。
もう一つ、いま中国で社会的な問題となっているやはり医療と患者との難しい関係だと思います。社会が複雑になればなるほど、医療と患者の関係も複雑になり、それが敬遠される理由にもなってきています。患者側の理解も欠かせないのですが、残念ながら相互の関係が険悪化する傾向にあります。そのため、仕事にやりがいを見つけられず、卒業後、看護師にならずに違う仕事に転向してしまう人が増え、結果的に看護師になる人が減少するようになりました。
医療は医師だけでできるものではありません。回りにサポートしてくれる人員がいなければ、現場は順調にまわっていかないのです。
上海籍の看護師というのは、上海語ができるというメリットもあります。高齢者からすると、上海語で看護をしてもらえると、どれだけ精神的にも助かるか、想像に難くありません。その特色を十分に活かしてもらいたいです。
(ちなみに、上海市衛生局に登録されている医師・看護師についての情報は、上海衛生監督から検索出来ます。私の名前も藤田康介で出てくると思います。)
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