ここの女将は、温泉学会の懇親会でスピーチもされており、「秘湯を守る会」の宿ということで楽しみにしていました。非常にコンパクトな温泉街の一番奥にあるのですが、残念ながら近年の不況が手伝ってか、廃業している温泉宿もあり、寂しい雰囲気は拭いきれません。しかし、立派な旅館の建物には、昭和時代のレトロな感じがいっぱいで、部屋や露天風呂から眺める庭園の大木からも、歴史の深さを感じられます。


女将といろいろ話をしていると、ここの温泉はもともと川の畔に源泉があり、江戸時代には外傷を治しに、多くの湯治客がきていたそうです。源泉の温度は45℃。石膏を含む芒硝泉。中医学的にも、外科の分野で使えそうな成分です。
海潮荘は露天風呂に特徴があり、内風呂と露天風呂はつながっていて、浴槽の上で仕切られたガラス戸から通り抜けできます。「宝樹の湯」とネーミングされているように、露天風呂の庭には、樹齢800年の椎の木がどんとたっていて、源泉掛け流しの良質のお湯とともに、じっくりとお風呂に癒されることができました。

海潮荘の名物は、なんといっても牡丹鍋。それも、大根おろしでたべるというかなり特徴のある食べ方です。イノシシの肉は、奈良でも山間部で食べますが、臭みをとるために味噌でたべることが多いのに、ここでは出汁の味はかなり薄め。それでも、肉が全然臭くないのです。
話によると、メスの若いイノシシは臭みがほとんどないということで、肉そのものの選別の仕方がポイントだそうです。
ほんとうに美味しく牡丹鍋をいただきました。
さて、奥出雲の山奥にきていて、ちょっとクセのある日本語を喋る仲居さんがいるな、と思って話しかけてみると、案の定、上海人の方でした。
おお!ここまで働きにこられているとは、敬服いたしました。日本人の男性と結婚し、島根県に滞在してかれこれ10年。布団敷きから手伝われ、今では仲居さんとして客に接する仕事までこなされています。
昨日の会合でも、町の方から、奥出雲地方と中国のつながりの一つとして、中国人女性が地元の日本人男性と結婚しているケースが少なくなく、以前、耳にしたことはありましたが、実際にいろいろお話を伺えるとは思いもしませんでした。全くのゼロからの日本語で、語学学校にも行かず、独学で勉強をされてきたとのこと。
日中の草の根のつながりは、どんどん広がってきていますね。
今度、上海に来られたときにでも再会できるかもしれません。

しかし、残念なのは日本の温泉地の衰退。
全盛期は昭和50〜60年だったそうで、それ以降は、温泉宿がどんどん減ってきています。大型ホテルに食べられてしまっているのかもしれませんが、あと30年もすると、ひょっとして日本の温泉地から個人経営の温泉旅館がなくなってしまうかもしれません。それぐらい、今、日本では温泉地の疲弊が進んでいます。
私も、日本に戻ったときは、いろいろ各地の温泉地を訪れてみて、なにかアイデアを提供できたらと思っています。
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