中国人と結婚して、中国人の親族をもつ以上、毎年の清明節といえばゆっくりと休むどころではなく、墓参りや親族の接待に忙しくなるのが風習で、上海やその周辺エリアでは、青団子を作ったりします。日本と違って、一般的に年に1回のこの清明節のときに墓参りに行くのが多くの人の風習でもあるので、この日が休みになっているというのは、非常に大きな意味があります。
我が家の場合、妻の父方は上海の地元である一方で、母方は江蘇省なので、毎年張家港近郊にある墓地までお参りに出かけてます。中国生活が長くなると、結婚式などおめでたい儀式のほかにも、人の死に出くわすこともあるわけで、日本人とちがう、中国の人たちの生命観・死生観を垣間見ることができます。
張家港までは、上海から片道200キロ。片道2時間半程度のドライブです。この時期は、蘇州方面に集中している墓地にいく墓参り渋滞が予想されるので、私は少々大回りしますが、G2やG5、G50などの主要高速道を利用せず、S32とG15高速道路で江蘇省に抜けたら、予想通り渋滞には巡り会いませんでした。だいたい、中国の長距離高速道路には、渋滞の表示がないので、混むかどうかはまったくの運と経験次第。万が一、渋滞に巻き込まれても、辛うじてラジオで放送される情報が頼りで、さっぱり分かりません。
私達が上海から行くことは、親戚たちの間でも伝わっていて、まずは田舎にお邪魔してみんなで食事。妻の叔父や叔母など、いまだに全員の顔と名前が一致していないのですが、とりあえず地元の料理に舌鼓を。ニワトリやアヒルは庭先で走っているし、お馴染みのクローバーなど野菜も家の周りで収穫。近くの池で養殖されているザリガニも出てきました。今日の料理を担当したのは、近くのおじさん。やっぱり、男性が料理してくれるのですが、田舎ではこうやって誰かが料理作りを買って出てくれるのだそうです。
清明節になると、各地域でいろいろな風習もあり、このエリアでは特に、清明節の当日(今年は4月4日)に、近所の人も集まって、盛大に食事会をするのだそうで、予定では10テーブル分の準備をするのだそうです。そうした料理も、近所の人たちが総出で協力することになります。確かに、みんなでつまむ中華料理は宴会にも向いていますしね。
なぜ、清明節がこれだけ盛り上がるのか?
その根本的な理由の一つに、清明節が唯一の墓参りにいく時期であることも関係があると思います。それ以外のときは、あまり墓参りに行かない。お彼岸やお盆などにせっせと墓参りにいく日本人とは、ちょっと違います。また、日本のように、お墓にいって草抜きをしたりすることもありません。唯一あるとすれば、紙で作ったお金や、家などの模型、さらにiPhoneのような紙で作った模型なんかも燃やしたりします。我々日本人からすると、あの世にいってしまったら、そんな俗世的なモノに関わることなく、平穏に過ごせるのに違いないと思うのですが、中国ではそうは考えないらしく、あの世でも生活に困らないように、この世からもっていってあげる必要があるのだと考えるのだそうです。あの世でも、1人でいきていくのではなく、さらに世俗的な世界が延長しているということなのか、それとも人のつながりを大切にする考えからなのか?
墓地をみてみると、様々なスタイルの埋葬方法があることに気がつきます。
日本式に近いようにも見える、石碑タイプのものや、木の下に花壇のように囲われていて、花壇の縁に名札を取り付けたパターンもありました。さらに、お位牌を日頃自分で保管し、このときに共同の祭壇にお位牌をおいて、お参りする人の姿もありました。それぞれの状況にあった、一番ふさわしいやり方で故人をお祭りしていることがわかります。ただ、紙のお金を燃やすという習慣は、こちらも同じ。中国のお墓では、霊前で燃やすものが多いので、火事にならないように注意する必要があります。
上海の場合、墓地の最大の問題は、用地不足。人口も多いわけで、立派なお墓を建てるのを禁止するのに様々な政策を打ち出しています。近年、21年間で海葬を推し進めていて、今年は1体につき2000元の政府補助を出すことを発表しています。(従来は400元でした。)さらに、廊葬や壁葬、生態葬など様々なやり方が登場していますが、何れも、従来のやり方とは違う、土地の有効利用を目的とした、弔い方と言えると思います。
ただ、清明節をきっかけにして、親族一同があつまるという習慣は、家族間の関係が薄れている現在社会において、大切に守っていきたい絆の一つではないかと思うのでした。
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