2012年05月12日

厄介な中国の水道水の7月1日問題

 私は中国国内を旅行するのが好きで、これまでにもいろいろな都市にいってきましたが、旅行したときに気になるのがやはり飲み水の問題。基本的に、旅行中はいつも上海で飲んでいるブランドのミネラルウオーターを買うか、クルマに初めから水を積んで出かけますが、歯磨きなどをすると地方によってかなり水の味が違うことに気がつきます。いったい、この水道水は本当に生活用水とつかってもいいのか?そんな疑問が出てくるのはある意味当然かと思います。

 きっかけは、2009年に行われた中国住建部の全国の水道水水質検査の結果です。4000箇所の県クラス以上の町に対し行われたのですが、なぜかこの結果が発表されていないのを中国のマスコミが報道したことからです。これに加えて、内部事情に詳しい人が、実は合格率は50%程度なのでは?ということを言い出し、話がどんどん大きくなってしまっています。その後、当局がこのときの調査の合格率が58.2%という数字を出してきました。その後、2011年の再調査で、合格率は83%に上昇し、改善されたとも。う〜ん、どうもよく分からない。


中国の水道水が抱える問題は、これまでも何度となく紹介されていますが、まずは水源の汚染が進んでいるという点。『東方早報』の報道では、水源の汚染率は50%にもなるそうです。また、地下水源も同様で、重金属による汚染リスクが高まっている。また、上海など大都市では浄水場の浄化装置は刷新されてきているが、地方ではまだまだで、有機化合物や重金属の心配がつきまとう。そして、住民のマンションの水槽や水道管の老化が進み、更新作業が追いついておらず、さらに汚染リスクが高まり、結果的に蛇口から直接水が飲める都市は中国ではいまだに1箇所もありません。必ず煮沸して微生物を殺菌する必要がありますし、浄化が不十分だったら、重金属や有機化合物が体内に取り込まれる可能性は十分にあります。

 中国では2012年7月1日から水道水の検査項目が、これまでの35項目から106項目に大幅に増加します。これにより、EUと同じぐらい厳しい基準になるのだそうですが、これも絵に描いた餅になる可能性があるというのが、広州の『羊城晩報』の指摘。大都市ではともかく、地方都市ではコストや検査能力の限界から、とても年何回もそうした検査を行うことができず、現行の規程では1年に1回〜2回検査したらいいことになっています。その結果、汚染が悪化する月には検査せず、合格率が高まるように工夫し、不合格なら公表しないというような作戦も十分に考えられるとしています。なにより、重点都市35箇所のうちでさえ、106項目の検査が出来るのは、たった40%というのですから、いろいろと実現が難しいのではと考えられます。


 同じく、広州の『羊城晩報』の報道では、2009年の調査で、中国の水道水が不合格になった主要な理由に、有機化合物の問題があったようです。その多くは、環境ホルモンと関連があり、人の免疫力を低下させたり、発育に影響を与えたりします。
 その中で、清華大学の専門家は、水道事業に関わる専門家ですら、飲用水の汚染に関する認識が低いと訴えていて、こうした影響は10〜20年と長期に蓄積されて発病するということに気がついていないというのです。水による有害物質の三分の一は口から入ってきて、三分の二は皮膚や呼吸からも吸収されます。よって、飲み水をミネラルウオーターに切り替えるだけではダメで、洗濯や入浴とも関係があります。近年、上海の小児科でも早熟の症例が相次いで発表されていたり、CKD(慢性腎臓病)が増えているのも、必ずどこかで関係があるはずです。毎日のことですから、生活用水・飲用水に関しては十分に配慮する必要があるのです。


 北京の場合、水源は地下水だそうですが、上海では近年、黄浦江から長江に切り替えるプロジェクトが進められています。その結果、新基準が施行される7月1日から、上海市中心エリアでは、すべてが長江の水が水源となります。また、金山区や奉賢区など一部の郊外のエリアを除いて、大部分の水道水は、高度浄水が行われていると言うことです。また、高度浄水が行われていない、一部の黄浦江を水源とした水道水も、7月1日からは活性炭を加える量を増やすなどして、水質改善に力をいれるということです。(上海の長江の水源は3箇所で、青草沙・陳行・東風西沙で、東風西沙は2014年完成予定。)『新聞晨報』の報道によると、現在の上海市内旧市街の古いアパートの水槽や水道管の改修工事は、全体の三分の一まで進んだと言うことです。

 いずれにしろ、2012年7月1日から中国の水道水の制度が変わるようです。これがいいように変化してくれればいいと願っています。

 ※中医学によるダイエットの問題を更新しました。


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【連絡】6月7日〜10日までは日本温泉気候物理医学会のため東京・秋田へ、6月28日〜7月1日まで日本東洋医学学会のため休診します。
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類