2012年05月13日

上海で発生した狂犬病死者について

 中国は、世界でもインドに続いて狂犬病が多いエリアで、毎年数千人が死亡しています。上海でも例外ではありません。

 日本ではほとんど耳にしない狂犬病による死者ですが、上海では毎年犬に噛まれて死者が出ていますので、野良犬に対しては十分に注意が必要ですし、子供にはできる限り狂犬病の予防接種を行う必要があるかと思います。致死率がほぼ100%という怖い病気ですが、発病率が低いので犬に噛まれたら、必ずしも発病するというわけではありません。また、すべての犬が狂犬病をもっているわけでもありません。しかし、犬(猫)などの動物に噛まれないように、とくに子供には注意してください。


 さて、上海でも5月に入って狂犬病による死者が1例出ました。

 事件があったのは、上海市崇明島で、4月20日の明け方ごろ、庭に犬の声がしたため、泥棒がきたかと思った住民が外に出ようと棒をもってドアをあけると、体重20キロほどの犬がおり噛まれてしまいました。この住民の家では、羊が犬に噛まれており、数日後に狂犬病と思われる症状で死んでいます。

 さらに、犬は島の東側に移動し、この日の午前中に、家事をしていた男性が噛まれる事件が。ここでも人が犬に襲われました。4月21日午前には、66歳の男性が犬に噛まれました。農作業をしていた男性の妻が発見し、追い払おうとした男性が顔の2箇所を深く噛まれました。4月20日〜21日かけて、このように相次いで11人の住民が犬に噛まれており、警戒してた警官が犬を射殺し処分しました。

 噛まれた住民は、狂犬病の予防接種と、狂犬病免疫グロブリンの接種をうけました。大部分はとくに問題が無かったのですが、最後に噛まれた男性は、労働節の連休あたりから発熱・頭痛などの症状のほか、音や光に敏感になり、咽が渇くが水が飲めないなど、狂犬病の症状として典型的な不安感・恐風症・恐水症・呼吸困難・痙攣などの症状が出て来ました。そして、5月5日には、舌が痺れはじめ、喋ることができなくなり、上海の長海病院に収容されました。ただ、本人の希望で再び崇明島に戻り、5月8日の未明に、突然、口から泡をふき、手足の痙攣がはじまり、飛び跳ねるなど精神錯乱の神経状態が出現し、数時間後に死亡しました。


 この死亡例の場合、致命傷となったのはやはり頭を噛まれたということです。しかも、唇の上(中医学でいうと人中穴あたり)と左側頬を噛まれたため、脳などの中枢神経に近かったのが問題となったと考えられます。また死亡した段階で、狂犬病免疫グロブリンの接種と、3回目のワクチン接種までは済ませていました。

 今回噛まれた11人は、何れも狂犬病対策は行われていました。一般に、犬に噛まれたあとは、ワクチン接種を5回受ける必要があります。接種日は、犬に噛まれた当日と3日、7日目、14日目、28日目です。また、狂犬病免疫グロブリンの接種も必要です。中国の場合、免疫グロブリンは20IU/kgのヒト抗狂犬病グロブリンもしくは40IU/kgの狂犬病血清が使われます。また、犬に噛まれたときの専門外来も設置されています。

 なお、詳しい情報は上海疾病予防コントロールセンター(CDC)が発表しています。こうした感染症疾患はHPから、情報を手に入れることができます。



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【連絡】6月7日〜10日までは日本温泉気候物理医学会のため東京・秋田へ、6月28日〜7月1日まで日本東洋医学学会のため休診します。
posted by 藤田 康介 at 00:00| 未分類