今、中国の医療現場でよく言われる言葉に、「医師の待遇がよくない」、「患者との関係が難しい」、「仕事がハードすぎる」といったことをよく耳にします。さらに、社会的な影響を見てみると、医学部に進学したくないという学生が中国で増えているのもまた事実です。
偏差値が軒並み高い日本の医学部と違って、中国の医学部は他学部よりも低めというのも特徴です。上海交通大学の場合、医学部は他学部とは別枠の学生募集をしていますが、2011年を例にとってみると、上海交通大学の理系のボーダーラインは535点だったのに、医学部は507点と低くなっていました。上海交通大学の医学部というと、もともとは上海第二医科大学で、付属病院は全国的に有名な瑞金病院になりますが、それほどの歴史と規模を誇る医学部でもこういう状態なのだそうです。
また、上海交通大学では、毎年、進学後の学部変更を受け付けているのですが、今年も、医学部から他学部へ移りたいと申請した人が、60人近くいたのに、医学部に移りたいと考えた人は2人しかおらず、相変わらず専門を変えたいと考える学生が多いようです。復旦大学でも同様に、1割の学生が医学部から他学部への転部申請を出したということです。親が医師でも、自分の子供に対しては医師になってほしくないと考えている人が多いのも事実です。
そもそも、中国で一人前の医師として活動するのには、長く時間がかかります。例えば、募集数が多い5年制の医学部を卒業しても、すぐに医師資格はとれず、また学士の学位では就職活動は難しい。通常は、最低でも修士(3年)、もしチャンスがあれば博士(3年)へ進学し、これだけても11年かかります。さらに、上海市では卒後3年の臨床研修を経て医師になれたとしても、大病院に残れるとは限りません。
一般に、卒業後の医師の給与は3000元前後で、同様に他学部を卒業した学生が5000〜7000元をもらっているのと比較すると、雲泥の差であるというのことはよく言われます。その結果、多くの学生が医学部を敬遠し、収入が安定している他学部への進学を望む構図が出来てしまいました。
日本では、医師の「独立開業」というルートもありますが、中国ではほぼ不可能に近く、十分な資金と当局とのコネでも無い限り、まず無理でしょう。それほどハードルが高いのです。当局からすると、開業医は総合病院であふれた医師が、食い扶持のために細々とやっている程度の認識しかないみたいですし、もし経営が上手くいったのなら、その見返りに対しての期待も大きいという話も小耳に挟みました。利権がものすごく絡んでいるのです。
でも、中医学に限って言えば、もともと簡便な治療を重視しますし、治療コストも安い。維持コストの高い総合病院よりも、クリニックのほうがその将来性があると私はみているのですが、一旦開放してしまうと、無資格医や無資格医院が氾濫してしまうことにも当局はかなり懸念しているようです。いまでも問題になっていますからね。
私が大学を卒業して今年で10年になります。そろそろ同級生から、10年目の同窓会をしようではないかという声が上がっています。中国各地に散っていますが、このときばかりは集まることになるでしょう。そのときの仲間のうち、どれほどがまだ医療現場に第一線に残っているのか、興味深いところです。
私は中国で中医学を継承してきた数少ない日本生まれの日本人の一人として、中国の人たちに揉まれながら第一線で、資格が続く限り、がんばって行きたいと思っています。
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