2012年11月05日

PM2.5と昨今の上海の大気汚染

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秋〜冬になると、毎年、上海の大気汚染の状況が深刻化します。その状況は、上海で生活している人なら、十分に体感できる程度かと思いますが、喉がイガイガしたり、咳が出やすかったり、症状は様々です。持病に、気管支炎や喘息、鼻炎を持っている場合なら、なおさらだと思います。そこで、近年注目されている汚染物質の程度をはかるものとして、PM2.5 があります。PM2.5 については、2012年1月のブログに詳しく解説しています。そこにもあるように、PM2.5とよばれる浮遊粒子状物質は、肺胞にまで到着してしまい、疾患の発病率・死亡率とも密接に関係あり、喘息・肺機能の低下・炎症さらには、循環器系・免疫系・神経系にも影響をあたえ、癌の発生を誘発するとされています。

 最近でも、10月28日に、とんでもないPM2.5 の数値を記録していますが、その原因についていろいろ討論されています。一般的には上海の巷に溢れている自動車が問題だ、と考えられそうですが、実はそうも単純ではありません。最近の研究では、上海のPM2.5 汚染の20〜25%は他地域からの汚染物質の移動と考えられています。しかし、PM2.5 の主要な発生源はやはり自動車の排気ガス。とくに、中国の国内で使われているガソリンの品質に問題があり、とくに揮発性有機化合物が大きな問題となっています。しかし、中国ではいま自動車が普及はじめたばかり。IEA(国際エネルギー機関)の予想では、2030年に各世帯1台の自動車を保有すると、その数は中国だけで4億台になるとしています。そんななかで、ハイブリット車など新しいタイプのクルマが普及することもなく、クルマの台数ばかり増えていくと、排気ガスの規制は非常に難しくなります。

 一方で、中国では冬になると、北方地方では暖房で大量の石炭が燃やされます。さらに、鉄鋼業やセメント業などの急速な発展も、PM2.5の悪化と関係があるといわれています。そのため、PM2.5の根本的対策には、産業構造の改革が欠かせませんが、こうした汚染物質は、風に乗ってやがては日本にもやってきます。光化学スモッグや黄砂の問題もまた然りです。そうした環境問題に対して、日本の技術が中国で活用されることを切に願います。

 
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posted by 藤田 康介 at 14:15| Comment(0) | ここは上海なり