2014年02月21日

大気汚染基準AQI、中国式か米国式か

 ここのところ比較的落ち着いてた上海市の大気汚染ですが、19日の夜あたりからPM2.5値が100㎍/㎥越えをし出していました。外の景色をみても、スモッグで大きく霞んでいて、20日は日中もずっとマスクが必要なレベルでした。しかし、殆どマスクをしていないのが中国人です。

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 さて、お気づきの人も多いかも知れませんが、アメリカ基準と中国基準とでは大気汚染の評価の仕方が異なっています。これは、おなじみのアプリ「CN Air Quality」で出てくるAQI値の違いからもよく分かります。

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 例えば、この日、私がチェックしたときの上海浦東エリアのPM2.5値は170㎍/㎥。中国式で計算されたAQI値での評価は「軽度の汚染」。一方で、アメリカ式で計算するとPM2.5値が134㎍/㎥ですでに「不健康」となっています。これは両国の基準値の違いによるもの。

 中国でもアメリカでもAQIが100を越えると、汚染された状態になると評価されます。

 しかし中国式の場合、PM2.5値に関してのAQI値100の基準は1日あたりのPM2.5値が75㎍/㎥ですが、アメリカでは40.4㎍/㎥です。WHOの基準に従い、先進国と発展途上国では達成目標が違うのです。

 健康に影響がないとされるAQIの0〜50ランクでは、アメリカのPM2.5値の範囲は0〜15.4㎍/㎥、中国でのPM2.5値の範囲は0〜35㎍/㎥。この地点で基準値が倍以上違うことになります。

 ちなみに、WHOが定めるPM2.5の1日平均は25㎍/㎥以下、年平均は10㎍/㎥以下。さらに日本の場合は環境基準として1日平均35㎍/㎥以下、年平均は15㎍/㎥以下となっています。環境基準とは、「人の健康の適切な保護を図るために維持されることが望ましい水準」だそうです。(参考:http://www.env.go.jp/air/osen/pm/info.html


 空気を吸うことはアメリカも日本も中国も変わらないのに、大気汚染としての評価が変わってくるのは正直納得できません。

 PM2.5が汚染物質の中でも最も良くない状態でのAQIは、24時間あたりのPM2.5平均値で計算します。1時間あたりの平均値ではありません。つまり刻々と状況が変化することが多いので、やはり何らかの方法でいま現在の数字を知っておくことはとても必要なのです。

 そこで私は簡易測定器を買っています。今回も様々な場所で測定しました。

 20日は大気汚染が昼間になると1時間あたりのPM2.5が200㎍/㎥越えしていました。うちの中医クリニック前の状況も250㎍/㎥ぐらいの数字が。。。。

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 この状況で、某ショッピングモールを訪れました。ここは、1階から4階まで吹き抜けです。それぞれの階のPM2.5値を測定すると、どこも140㎍/㎥前後。さらに、ショッピングモール内のレストランに入ってもほぼ同様。どういうことかと分析すると、やはり入り口が殆ど開けっ放しであること。せっかくの2重扉玄関も開けっ放しでぜんぜん機能していないことが大きな原因だと思います。
 個室トイレもそうですが、中国では「閉める」習慣がそもそもないのです。子供の時に教わらないからでしょうか。

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 ちなみに、窓をあけたタクシーの車内もPM2.5値は100㎍/㎥越え。ボロボロの上海タクシーは、時に雨漏りするぐらい気密性がないので期待できませんね。

 この日、空気清浄機を稼働させている私の診察室は40㎍/㎥前後。人の出入りが激しい部屋の割りにはまずまずの成果ではないでしょうか。やはり、空気清浄機には一定の作用があると考えられます。

posted by 藤田 康介 at 07:27| Comment(0) | 上海の大気汚染状況

2014年02月18日

中国の赤ちゃんポストの悲哀

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(こういう子供を増やさないためにも大人の責任は大きい)

 日本でも少し前に話題になっていた赤ちゃんポスト。中国語では『嬰児安全島』と表現されています。中国民政部では2013年7月より中国全国で赤ちゃんポストを設置しはじめていて、2014年現在では河北省、陜西省、貴州省、福建省など各地で試験運用されています。

 遺棄された子供については保護された後、上海でも新聞などに顔写真入りで公告されています。この写真を見る度に心が痛むのですが、よく読むと先天的な疾患をもって生まれてきた子供たちが多いことに気づきます。一人っ子政策の関係もあり、中国では人工中絶に対する抵抗が少ないのか、意外と中絶経験者が多いのには大変驚きます。

 私も中国人の若い女性を診察するとき、人工中絶後のケアに中医学のケアに来られることも多いです。このあたりの倫理観は、日本人とはちょっと違うと私は考えています。少なくとも生命に対する考え方の「重み」が全然違います。


 さて、この嬰児安全島ですが、大都市では、天津市でも設置されていますし、最近では2014年1月28日から広東省広州市社会福利院にも設置されました。ここでは、設置後10日以内に33人の乳幼児を保護したとのこと。この数の多さに、関係者は驚いたと『羊城晩報』では報道しています。

 この保護された33人のうち、最高齢は5歳。この5歳の子供も脳性麻痺の診断が出ていたのですが、もちろん自我も出て来ているわけで、当然父母の記憶もあります。こうやって父母に置いておかれた記憶は、きっと一生心の中に傷として残り続けることでしょう。

 この中国の嬰児安全島には監視カメラが設置されていません。誰が子供を置いていったのかは分からないようになっています。ただ、そこにはノートがあって、一言メモを残すことが出来るようになっていますが、あまりにもあっさりとした記述で、身元を調べることしら出来ず、関係者も驚いたとのこと。

 中国では病院の入り口に置いておかれる乳幼児のことはニュースにもなっており、発見後に警察が福利院に連れて行くというケースでした。広州では、33人全員が先天性の疾患を持っていて、親たちがなんとか病院にまで連れてきて治療を試みたものの、金銭的な負担ができず、こういう選択に至ったということが容易に想像できます。

 さらに広州のような巨大都市では、田舎の地方から少しでもいい医療を受けさせようと子供を連れてきた、親たちの最後の望みがあったのかもしれません。難病や先天的な疾患への対応が十分に出来ていない中国の医療制度の弱点をうかがい知ることができます。

posted by 藤田 康介 at 07:33| Comment(0) | ここは上海なり

2014年02月12日

12日午後より再び上海での活動開始

 すこしご無沙汰しておりました。
 日本にいると、ブログを書くことが減っちゃいますね。あまりにも毎日が刺激的すぎて。

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 さて、仕事のスケジュールの関係から8日夜に再度上海から大阪へ飛び立ち、父親の大阪での古希記念パーティーに参加したあと、12日午前に再び上海に戻ってきて、その午後からクリニックで診察をしております。大阪→上海は2時間程度のフライトなので、やはりとても便利です。日本発の朝便はMUでも遅れにくいのでこれも助かります。関西では、奈良の実家を拠点としていると、この距離感の恩恵は相当なもの。今年は、関西での仕事も増えそうなので、日本と上海をうまく行き来する予定です。

 上海に戻ってくると、目の前にどっさりと仕事が溜まっているし、日々の診察もあるのでいろいろ大変なのですが、ひとつひとつ片付けていくしかありません。(^_^)

 今のところ、上海での大気汚染の状況が比較的落ち着いているのがせめての救いです。PM2.5値で30㎍/㎥前後の推移です。でも大阪エリアではゼロ〜一桁台なのでやはり基準が違いますね。

 2月14日はバレンタインデーと元宵節が重なっています。元宵節が過ぎれば、一連の春節イベントは終了し、うちの家政婦さんも田舎から戻ってきます。とはいえ、現在の上海の経済状況をみると、どの程度の出稼ぎ労働者が戻ってくるか未知数ですね。人手不足になっているのは、この時期の上海の常ですから。

 ブログになかなか書けないことは、Twitterでつぶやいておりますので、そちらもあわせてご覧ください。

posted by 藤田 康介 at 07:17| Comment(0) | ここは上海なり