
発酵食品が大好きな私にとって、紹興でなにが食べられるかというのはとても楽しみでした。なんせ、紹興料理といえば、「臭い物」が食べられるというのが特色ですから。そして、紹興料理には「黴」とつく料理がとっても多いのです。
敏感な旅行者ならきっと気づくと思いますが、紹興の街をあるくとどことなく梅干菜(烏干菜/黴干菜)の香りがしてきます。実は、上海エリアでも食べることが多く、我が家の食卓でも豚の角煮と梅干菜が一緒に使われます。文豪魯迅が紹興の梅干菜をこよなく愛したといいます。
原材料は様々な野菜で、これを発酵させてさらに乾燥させます。一旦干燥させているため、独特の食感があり歯ごたえ十分。そしてこのうま味が十分に美味しいと思います。紹興の老舗レストラン・咸享酒店では、魚と梅干菜を組み合わせていましたが、淡水漁の臭みをとるにも十分でしょう。

さて、私が紹興料理に興味をもったきっかけの料理の一つが、浙江省の田舎でいただいたことのある発酵食品、黴莧菜梗です。これも臭みとうま味のコンビネーションが素晴らしい!
まず、莧菜(かんさい)ですが、これは日本語ではヒユと呼ぶそうですね。
上海料理ではお馴染みで、上海語で「ミシ」という紫色の葉っぱの炒め物を食べた方もおおいと思います。中医学の生薬としても使える効能をもっておりますが、紹興ではこれをさらに栽培し、どんどんと大きくさせて、サトウキビぐらいにまでしてしまいます。そして、どうみても食べることができないであろうカチコチの茎を、発酵させることでとてもジューシーな食材にしてしまいました。これはすごい!紹興エリアの伝統食の一つです。

一説によると、貧しかった時代に、身の回りに生えている莧菜の硬い茎を、なにか活用できないかと考えたらしく、暫くして発酵させると独特の香りが(臭み?)が出て来て、それを料理として使います。食べ方は豆腐などと一緒に、多少の塩を加えて蒸すことが多いのですが、食感がとてもいいのです。繊維質の茎を噛みしめると、じわーと旨みエキスが染みだして、ご飯があると何杯も行けそうな感じです。

さらに、その発酵させたときの汁は、紹興の名物料理の一つである臭豆腐の製作にも使われます。あの臭みの正体は、本来はこの発酵させた莧菜だったのです。そのほか、枝豆など野菜なども一昼夜漬けて食べることもあるそうです。

なるほど!我が家でも中華漬け物のである泡菜(四川風味)を作っていますが、植物性乳酸菌たっぷりの漬け物汁は、新たに野菜を加えてバリエーションを増やしていますし、それと同じような感じですね。
もう一つ見つけた発酵食品。これも咸享酒店で注文したのですが、黴千張肉餅というもの。紹興近くの上虞(じょうぐ)エリアの名物料理。ポイントはやはり黴千張とよぶ豆腐系の発酵食品です。これはにがりを加えるところまでは豆腐と似ているのですが、そのあと稲わらを使って発酵させるので、これも独特の香り(臭み?)があり美味しい!

紹興酒にしてもそうだけど、この紹興の街には何百年とこうした菌が根付いているのでしょうね。保存の利くこうした発酵食品は美味しいだけでなく栄養価も高い。将来、食糧問題の救世主になるかもです。
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