2014年09月30日

発酵食品天国紹興料理の魅力、黴莧菜梗そして臭豆腐

 2014年国慶節直前に行った紹興旅行の続きです。

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 発酵食品が大好きな私にとって、紹興でなにが食べられるかというのはとても楽しみでした。なんせ、紹興料理といえば、「臭い物」が食べられるというのが特色ですから。そして、紹興料理には「黴」とつく料理がとっても多いのです。

 敏感な旅行者ならきっと気づくと思いますが、紹興の街をあるくとどことなく梅干菜(烏干菜/黴干菜)の香りがしてきます。実は、上海エリアでも食べることが多く、我が家の食卓でも豚の角煮と梅干菜が一緒に使われます。文豪魯迅が紹興の梅干菜をこよなく愛したといいます。

 原材料は様々な野菜で、これを発酵させてさらに乾燥させます。一旦干燥させているため、独特の食感があり歯ごたえ十分。そしてこのうま味が十分に美味しいと思います。紹興の老舗レストラン・咸享酒店では、魚と梅干菜を組み合わせていましたが、淡水漁の臭みをとるにも十分でしょう。

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 さて、私が紹興料理に興味をもったきっかけの料理の一つが、浙江省の田舎でいただいたことのある発酵食品、黴莧菜梗です。これも臭みとうま味のコンビネーションが素晴らしい!

 まず、莧菜(かんさい)ですが、これは日本語ではヒユと呼ぶそうですね。

 上海料理ではお馴染みで、上海語で「ミシ」という紫色の葉っぱの炒め物を食べた方もおおいと思います。中医学の生薬としても使える効能をもっておりますが、紹興ではこれをさらに栽培し、どんどんと大きくさせて、サトウキビぐらいにまでしてしまいます。そして、どうみても食べることができないであろうカチコチの茎を、発酵させることでとてもジューシーな食材にしてしまいました。これはすごい!紹興エリアの伝統食の一つです。

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 一説によると、貧しかった時代に、身の回りに生えている莧菜の硬い茎を、なにか活用できないかと考えたらしく、暫くして発酵させると独特の香りが(臭み?)が出て来て、それを料理として使います。食べ方は豆腐などと一緒に、多少の塩を加えて蒸すことが多いのですが、食感がとてもいいのです。繊維質の茎を噛みしめると、じわーと旨みエキスが染みだして、ご飯があると何杯も行けそうな感じです。

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 さらに、その発酵させたときの汁は、紹興の名物料理の一つである臭豆腐の製作にも使われます。あの臭みの正体は、本来はこの発酵させた莧菜だったのです。そのほか、枝豆など野菜なども一昼夜漬けて食べることもあるそうです。

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 なるほど!我が家でも中華漬け物のである泡菜(四川風味)を作っていますが、植物性乳酸菌たっぷりの漬け物汁は、新たに野菜を加えてバリエーションを増やしていますし、それと同じような感じですね。

もう一つ見つけた発酵食品。これも咸享酒店で注文したのですが、黴千張肉餅というもの。紹興近くの上虞(じょうぐ)エリアの名物料理。ポイントはやはり黴千張とよぶ豆腐系の発酵食品です。これはにがりを加えるところまでは豆腐と似ているのですが、そのあと稲わらを使って発酵させるので、これも独特の香り(臭み?)があり美味しい!

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 紹興酒にしてもそうだけど、この紹興の街には何百年とこうした菌が根付いているのでしょうね。保存の利くこうした発酵食品は美味しいだけでなく栄養価も高い。将来、食糧問題の救世主になるかもです。

東和クリニック・中医科での担当スケジュール
posted by 藤田 康介 at 00:00| Comment(0) | 中国で食べる

2014年09月29日

浙江省紹興を訪れて

 上海からクルマで200キロ。高速道路を2時間ちょっと走らせると到着するのが浙江省紹興。国慶節休み前の9月29日〜10月1日まで出かけてきました。

 文豪魯迅が生まれた街、そして紹興酒の街として有名ですが、2013年に嘉紹大橋が開通するまでは、杭州湾をぐっと杭州方面へ迂回する必要があり、とても行きにくかったのです。ところが、橋の開通で所要時間は半分になり、距離にして200キロほどになりました。上海浦東からだと2時間半ほどの道のりです。

 国慶節連休の初日となる10月1日からは、どこの観光地も人でいっぱいになるのですが、たった1日違いだけでガラガラになるわけです。

 魯迅に興味があれば紹興は十分に楽しめますが、コンパクトな街歩きはもっとお薦めです。

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 街中にクリークがあり、江南の水郷の趣が十分なのですが、ポイントは下手に観光地化されていないところです。生活感があり、ゆっくりと時の流れを感じることができます。さらに、クリークには古い石橋があるほか、そうした景色を川から眺めることができる舟も運航されています。ぜひ乗ってみたいところです。

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 数々ある古い橋のなかでも、とくに印象深かったのが八字橋と呼ばれる大きな橋で、国の重要文化財になっていました。1256年に再建されたそうで、その後も幾度か修繕されて現在に至っています。

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 八字橋の近くには、天主堂もあります。この日は、偶然にも職員の方が一人おられて、オルガンで音楽を披露してくださいました。

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 巨大な天主堂は、欧米人によって建てられたそうで、100年の歴史があるそうです。さまざまな迫害にも負けず、今日まで残ってきたことはすごいことだと思います。

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 2日目に歩いた西河路周辺も良い感じでした。

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 クリークを中心に、古い街並みが残されていて、人々の日常生活を直に感じることができました。クリークのお向かいさんと話をしながら、洗濯している人たちが印象的でした。

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 今回、宿泊で選んだのは1泊目は咸享酒店、2泊目は紹興飯店。いずれも街のど真ん中に位置している5★ホテルですが、値段もリーズナブルでした。紹興飯店は、紹興料理のレストランとして有名ですが、建物は少し古め。

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 一方で咸享酒店は、紹興酒のブランドとしても有名で、施設も刷新されていてなかなか良い感じでした。個人的には咸享酒店が気に入りました。魯迅ゆかりの建物も歩いて行ける距離にあり、ホテルもそういった雰囲気を十分に感じることができました。

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 また、咸享酒店には、老舗店につけられる「中華老字号」の称号をうけたレストランもあり、こちらはファーストフードスタイルとレストランスタイルに分かれていて、どちらもなかなかの紹興料理を出してくれましたが、個人的には2階にあるレストランをお薦めします。完全に個室になっていて、我々一家も4人部屋を使わせてもらえました。

 いつもギスギスした上海に暮らしていると、紹興の生活スピードはゆっくりめで、クルマもちょっとだけ遅い感じがします。なによりも、人々がとても親切で、サービスも好印象でした。

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posted by 藤田 康介 at 00:00| Comment(0) | 中国旅行記

2014年09月26日

今年は上海蟹が売れない!

 上海生活が長くなると、上海蟹を食べること自体は別に珍しくもないのですが、でも秋の味覚として脳にすり込まれてしまうと、食べないと秋が来た気がしないのもまた事実です。というわけで、妻が近所で蟹を2匹買って来ました。

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 上海蟹は大量に食べるものではありません。ほんの少しを美味しくいただくのが最高だと私は思っています。

 ところで、2014年産の上海蟹は、こちらでは豊作で、全体的にはカタもよく陽澄湖だけで2300トンもの収穫量が期待されています。しかし、今年は思ったほど収穫が伸びず、12年ぶりに価格が下落傾向にあると報道されています。大きい蟹であれば、以前だと飛ぶように売れたのに、今年は全然動かないそうのだです。

 いろいろな分析がされていますが、毎年、お役人たちが接待で受けていた宴会が激減したのと、政府中央がすすめている腐敗撲滅キャンペーンの影響が大きいといわれています。地元の人たちによると、政府や国営企業が毎年大量に購入していた上海蟹が、今年はゼロに近いらしい。一部の私企業が福利のために多少買うことがあっても、こうした太っ腹なまとめ買いは売り上げ全体の1割にも満たなくなったと。

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 今まで、陽澄湖とか太湖とか産地のブランドを競って売っていた上海蟹の広告も、今年は殆ど見かけません。この時期になると上海市内で臨時直売所も見かけるのですが、これも殆どない。

 上海蟹バブルの崩壊。

 でも、私は決して悪いことではないと思います。今まで、値段がつりあがり、産地を偽装してでも売っていた上海蟹が、厳しい一般消費者の目にさらされるわけですから、市場の健全化のためには必要だと思います。

 上海蟹は上海人の秋の風物詩。

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 美しい陽澄湖の日暮れを眺めながら、ゆっくりといただくのが流儀だと私は思います。

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posted by 藤田 康介 at 00:00| Comment(0) | 中国で食べる