
上海のような中国大陸の東の果てにいると、ちょっと山まで紅葉を楽しみに行くというのはとても大変なわけで、クルマで数時間移動しないといけません。しかし、一旦山間部に入ってしまうと、長江デルタエリアであっても、かなり深い自然を堪能できるのも大陸ならではの楽しみでもあります。以前は日本的な自然に懐かしさを感じていましたが、最近は中国江南エリアがもつのどかさに魅力を感じています。

杭州からクルマで2時間半ほど走らせた、観光地としても有名な臨安からちょっと南にはいった山の中に万市という小さな街があります。そこからさらに山の中へ15キロほど走らせると、銀杏で有名な楊家村に到着しました。もう景色はすっかりと冬で、外の気温も5℃前後と寒かったのですが、のどかな江南エリア独特の田舎景色が続きます。

このあたりは、農村といえども人々の条件は恵まれていて、どの建物も立派。デザイン的にも申し分なく、おそらく都会などで出稼ぎにいった人たちが、そのノウハウを持ち込んで自分たちの家を建てたのではないかと思われます。

楊家村が銀杏で有名なのは、そもそも村内に樹齢100年以上の銀杏の木が1200本もあり、樹齢600年という巨木も。漢方や中医学でも使うギンナンの生産量も年間80〜90トンだそうで、近年は村全体を整備して、イチョウを散策できるようになっていました。見ごろは毎年11月初〜12月初で、今回我々が訪れたときは少々遅かったのですが、地元の人の話を聞くと、昨日の雨風で一気に散ってしまったらしい。これはなんとも残念。来年に期待したいところです。


村を散策していると、自転車道やトイレ、案内板を整備するなどいろいろな工夫がありました。地元の人たちもとっても親切で好印象です。
私個人的には、四季の変化があり、その中でも秋のなんともいえない凛とした空気感と鮮やかな色合いが大好きで、江南エリアの自然の変化は私にとってはぴったりの感覚です。上海在住20年目ですが、まだまだ見つけていない魅力がいっぱいあるものです。
楊家村からは、こんどはさらにクルマを南下させて桐廬まで2時間ほど移動。途中、山道で舗装道路が急になくなったりとちょっとびっくりしましたが、山々の景色は最高で、岩石嶺ダムという風景が美しいダムも発見。山々に落ちていく太陽を横に、制限時速90キロという珍しい数字の省道を南下しました。

桐廬に到着したのはすっかり夜になりました。ここからいつもの民宿までは25キロほどあるので桐廬市内で食事。桐廬はこの街のちょうどいい大きさが好きです。旧市街は富春江の中州に位置し、街のメインストリートである迎春南路から見える大奇山はとっても美しいです。桐廬の学田路には、ちょっとした食堂街があり、さらに浙江省三都から運ばれてきた新鮮なミカンの露天があったりと、ここで我が家はいつもミカンを調達します。

もちろん、地元料理をいただく。今回は豆腐料理とヒラウオ(英語名:Parabramis pekinensis)。鳊鱼と中国語でいいますが、日常的によく食べる淡水魚で、フナよりは骨は少ないです。お腹の部分の肉が美味しいですね。
上海にいると日本料理とかイタリアンとか星の数ほどあっても、ちょっと地方にいくとまず見当たりません。中華料理は地方によってカラーが全然違うし種類が多いので、他の料理が勝負しようと思ったらよっぽど本格的なものを持ち込まないと地元の人からは飽きられてしましますね。まあ、外国人は高いお金を払ってでも食べに行くかも知れませんが。
食後は夜の山道を宿まで急ぐ。なにか獣が出て来そうなぐらい真っ暗な道でしたが、集落の明かりをみるとさすがにホッとします。いつもの人たちが迎えてくれました。
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