2015年12月19日

経済的に本当に困窮したとき、中国人の草の根支援

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(湖南省にて)

 上海の我が家では、湖南省の山奥の農民から野菜を買っています。

 彼らは中国でも有数の貧困エリアで生活していますが、街まで100キロ以上かかるような奥地の奥地にはまだまだ手つかずの大自然が残っていて、その素晴らしい環境を利用した無農薬・有機栽培の農園の話は、こちらに紹介しました。お金はないけど、豊かな農作物があるわけで、毎週送られてくる美味しい野菜に本当に重宝しています。

 実は、私もお世話になった農民の一人で、この農園で中心的に仕事をしている楊さんの持病が悪化し、街の病院にまで搬送されて緊急入院にすることになりました。その過程はいまや中国生活では欠かすことができないSNSツール、”Wechat”を通じて、刻々と我々にも伝わってきます。日頃から、丹精込めて農作物を作ってきた楊さん、彼の人柄からもあってフアンが少なくないのです。

 さて、救急センターに運ばれ、もろもろの検査を済ませ、1ヶ月後に手術が決まったのですが、この手術をするのに5万元の費用がかかると言うこと。保険制度が整ってきたとはいえ、農民達の保険では十分にカバーすることができない。そこで、楊さんの奥さんとその友達達が考えたのがSNSの利用でした。

 中国生活をしている方ならご存じですが、中国ではSNS経由で送金したりするシステムがいろいろあります。もちろん、ネットバンキングの方法もありますが、銀行口座の番号とか知らなければダメだし、操作もなにかと難しい。

 そこで、少額だったら便利なのがSNSを使った送金。例えば、Wechatにはウオレットという機能があって、自分の銀行口座と連動させて出入金が簡単にできてしまう仕組みがあります。そのほか、電話番号と連動させた支付宝(アリペイ)などもあります。電話番号さえ分かれば、簡単に入金できます。

 いまや、スーパーでの買い物でもこうした機能が重宝で、スマホに表示されたバーコードを読ませると支払い完了になります。銀聯カードすら持ち歩かなくてもよい時代になってきました。もちろん、安全面で不安があるという人もいるでしょう。そんなときは、こうしたSNS専用の銀行口座を作り、少額だけ入れておけばいいと思います。公共料金の支払いもこのシステムで可能です。

 さらにそうした募金や資金集めができるSNSのサービスもできてきています。たとえば、軽松筹などがそうです。ここに実名登録すると、誰がいくらお金を寄付したかが分かります。仮に1元でも募金すれば外部に表示されるようになっていて、目標金額と時間を決めておいて、リアルタイムに誰がいくら寄付して、集まったお金が分かる仕組みになっていました。

 農民達の間では、農作物の栽培にこの仕組みが結構使われているようです。たしかに政府などの公的補助金が不十分だし、そもそも貧困エリアなのでお金がない。だったら、栽培するための資金を消費者に頼るしかなく、消費者は収穫された農作物も分けてもらえるというメリットがあります。上海にいる私達が湖南省で有機栽培を頑張っている農民達を支援しているのと同じような仕組みですね。

 楊さんたちはこの仕組みを利用して、友達から手術費の募金を行っていました。彼の友達やら知り合いからはぞくぞくと募金のお金が集まってきています。金額も様々で、5〜10元から2000元まで5万元の目標にむけてもうすぐです。お金を出すほうも、その後の状況がSNSを通じて伝わってきますから、実感が出て来ます。

 日本でも例えばアメリカで手術を受けるために街頭で募金活動をされているのを見かけますが、中国のSNSを利用したこの仕組みはなるほどと思いました。いろいろなことがお上に頼ることができなからこそ、自分たちでなんとかするという工夫が出てくるのでしょうね。

 まずは楊さんの手術成功を祈りたいと思っています。彼にはこれからも元気に野菜を作ってもらいたいです。

 日本でも単に行政が困窮する人を見つけてきて援助の手を差し伸べるのではなく、逆に社会に求めることが出来るようなシステムがあれば、もっと多くの人たちを助けることができるのではないかと思います。仮に10円や20円でも人数が集まれば相当な額になっていきます。中国のような格差・階層社会で人々が生きていく知恵の一つだと思います。

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posted by 藤田 康介 at 06:11| Comment(0) | ここは上海なり

2015年12月15日

「厳重汚染日」だった上12日の上海、寒くなると大気汚染は一気に進む傾向

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 12月15日は久しぶりに酷い大気汚染の上海でした。天気予報では水曜日以降
 早朝は、チェンマイから戻ってきた妻を迎えに、午前4時頃に浦東空港にいったのですが、その地点で空気の悪さをはっきりと実感できました。運転するクルマのヘッドライトがなんとなくもやってるんです。ああ、PM2.5値とPM10値がすごいことになっているというのがすぐに分かります。

 実際にPM2.5はかるく200㎍/㎥超えますし、夜が明けてきても相変わらず真っ白かんじと焦げたような匂いはなくならない。浦東新区はとりあえず重度汚染で乗り切ったようですが、朝7時には空気汚染黄色警報が発令され、空気汚染V級響応も発表、小中学校では屋外での体育は中止になっていますし、学校を休んでも欠席扱いにならないことになりました。我が家では独自の判断で、娘は学校に行かせず、自宅学習にしました。

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なんせ、自分の計測器で屋外で計測したPM2.5値があっという間に300㎍/㎥を超えてしまったので、これはおかしいと思ったからです。

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 私自身も常備してある毒マスクとゴーグルで外出。といっても、今日は殆ど外には出ませんでした。代わりに、昨日の間に自宅にある3台の空気清浄機のフィルターを交換し、さらにダイキンの新しい空気清浄機を追加購入し、計測器でマメに数値をチェックしました。

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 そうすると、屋内のPM2.5値はだいたい10〜20㎍/㎥ぐらいをキープしていました。我が家は昨年に大気汚染対策として家の二重サッシ化を済ませましたが、この効果もてきめんだと思います。部屋の換気と同時に気密性を高めることは非常に有効だと思います。

 毎年のことですが、冬に入って北方からの寒気団が南下してくると、上海全土の汚染はすぐに悪化します。代わりに北京など北方エリアは空気がよくなるわけで、シーソーゲームをしているようです。
 不景気とはいえ、北方エリアでは石炭での暖房は始まっていますし、大気汚染が良くなる兆しも見えない。北方では暖房が強すぎてTシャツでも十分だそうで、なんか矛盾しているなとか思いつつ、早く台風シーズンになって吹き飛ばしてもらうほか仕方がないかと私も諦めモードです。

 こうした大気汚染はあと何年続くのか?

 中国の報道では最低15年はかかるのだそうです。そりゃ、中国の石炭消費量は全世界の50%を占め、さらに世界最大の石炭産出国でもあります。ムリもないですね。

 近年、こちらのマスコミでも取りあげられていますが、非喫煙者の肺がんが増加傾向にあるということ。これとPM2.5値との関係は避けて通れないと考えられています。台湾の科学者によると、PM2.5の値が、10㎍/㎥上昇すると、肺がんの死亡率は8%増加し、心臓と肺疾患は6%増加、その結果総死亡率が4%上昇するとし、逆に10㎍/㎥さがると、寿命が0.61歳伸びるらしい。(『東方早報』)

 まあ、いずれにしろここしばらくはアプリと測定器をにらめっこしながらの生活が続きそうです。

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posted by 藤田 康介 at 22:59| Comment(0) | 上海の大気汚染状況