
(湖南省にて)
上海の我が家では、湖南省の山奥の農民から野菜を買っています。
彼らは中国でも有数の貧困エリアで生活していますが、街まで100キロ以上かかるような奥地の奥地にはまだまだ手つかずの大自然が残っていて、その素晴らしい環境を利用した無農薬・有機栽培の農園の話は、こちらに紹介しました。お金はないけど、豊かな農作物があるわけで、毎週送られてくる美味しい野菜に本当に重宝しています。
実は、私もお世話になった農民の一人で、この農園で中心的に仕事をしている楊さんの持病が悪化し、街の病院にまで搬送されて緊急入院にすることになりました。その過程はいまや中国生活では欠かすことができないSNSツール、”Wechat”を通じて、刻々と我々にも伝わってきます。日頃から、丹精込めて農作物を作ってきた楊さん、彼の人柄からもあってフアンが少なくないのです。
さて、救急センターに運ばれ、もろもろの検査を済ませ、1ヶ月後に手術が決まったのですが、この手術をするのに5万元の費用がかかると言うこと。保険制度が整ってきたとはいえ、農民達の保険では十分にカバーすることができない。そこで、楊さんの奥さんとその友達達が考えたのがSNSの利用でした。
中国生活をしている方ならご存じですが、中国ではSNS経由で送金したりするシステムがいろいろあります。もちろん、ネットバンキングの方法もありますが、銀行口座の番号とか知らなければダメだし、操作もなにかと難しい。
そこで、少額だったら便利なのがSNSを使った送金。例えば、Wechatにはウオレットという機能があって、自分の銀行口座と連動させて出入金が簡単にできてしまう仕組みがあります。そのほか、電話番号と連動させた支付宝(アリペイ)などもあります。電話番号さえ分かれば、簡単に入金できます。
いまや、スーパーでの買い物でもこうした機能が重宝で、スマホに表示されたバーコードを読ませると支払い完了になります。銀聯カードすら持ち歩かなくてもよい時代になってきました。もちろん、安全面で不安があるという人もいるでしょう。そんなときは、こうしたSNS専用の銀行口座を作り、少額だけ入れておけばいいと思います。公共料金の支払いもこのシステムで可能です。
さらにそうした募金や資金集めができるSNSのサービスもできてきています。たとえば、軽松筹などがそうです。ここに実名登録すると、誰がいくらお金を寄付したかが分かります。仮に1元でも募金すれば外部に表示されるようになっていて、目標金額と時間を決めておいて、リアルタイムに誰がいくら寄付して、集まったお金が分かる仕組みになっていました。
農民達の間では、農作物の栽培にこの仕組みが結構使われているようです。たしかに政府などの公的補助金が不十分だし、そもそも貧困エリアなのでお金がない。だったら、栽培するための資金を消費者に頼るしかなく、消費者は収穫された農作物も分けてもらえるというメリットがあります。上海にいる私達が湖南省で有機栽培を頑張っている農民達を支援しているのと同じような仕組みですね。
楊さんたちはこの仕組みを利用して、友達から手術費の募金を行っていました。彼の友達やら知り合いからはぞくぞくと募金のお金が集まってきています。金額も様々で、5〜10元から2000元まで5万元の目標にむけてもうすぐです。お金を出すほうも、その後の状況がSNSを通じて伝わってきますから、実感が出て来ます。
日本でも例えばアメリカで手術を受けるために街頭で募金活動をされているのを見かけますが、中国のSNSを利用したこの仕組みはなるほどと思いました。いろいろなことがお上に頼ることができなからこそ、自分たちでなんとかするという工夫が出てくるのでしょうね。
まずは楊さんの手術成功を祈りたいと思っています。彼にはこれからも元気に野菜を作ってもらいたいです。
日本でも単に行政が困窮する人を見つけてきて援助の手を差し伸べるのではなく、逆に社会に求めることが出来るようなシステムがあれば、もっと多くの人たちを助けることができるのではないかと思います。仮に10円や20円でも人数が集まれば相当な額になっていきます。中国のような格差・階層社会で人々が生きていく知恵の一つだと思います。
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